診療放射線技師国家試験画像に関する問題・解説

コロナの蔓延により本来病院実習で学ぶべき臨床画像に触れる機会が減っています。そこで国家試験の過去問を通して画像に関する解説をこの場で提示していきたいと思います。

日々更新できる時はしていきたいと思います。

第71回 午前 問89

胃噴門部に異常が疑われた場合の上部消化管X線二重造影で、適切な撮影はどれか。2つ選べ。
1.右側臥位像
2.背臥位正面像
3.背臥位第1斜位像
4.背臥位第2斜位像
5.半立位第2斜位像

上部消化管撮影や読影は学生のうちで学ぶことはなかなか難しいと思います。実際私もそうでした。詳しく知っている人から解説を聞く機会がなく、教科書を読んでもよくわからないのが現状ですが、試験にも結構な頻度で出てきます。ここではなるべくわかりやすく解説をのせていけたらなと思います。

解答 1 , 5

まず体位と標的部位について画像をつけて解説していきます。

1.右側臥位像

主な標的部位は黒丸で示した部位で、噴門部から胃体上部小彎である。

2.背臥位正面像

主な標的部位は胃体上部後壁〜幽門部後壁なので噴門部は撮影できない。こちらはバリウムを飲ませた後、グルグル回転させた後、一番最初に撮影する代表的な写真である。

3.背臥位第1斜位像

背臥位第1斜位は背臥位から右腰を少しあげた状態での撮影になります。標的部位は黒丸で示した胃体部大彎後壁〜前庭部小彎後壁なので噴門部は撮影できない。

4.背臥位第2斜位像

背臥位第2斜は背臥位の状態から少し寝台を少し頭低位にして、左の腰を少し持ち上げた状態での撮影になります。標的部位は胃体部小彎〜幽門部大彎なので噴門部は撮影できない。

5.半立位第2斜位像

半立位第2斜位の主な標的部位は噴門部から胃体上部小彎である。

第70回 午前 問94

ある癌診断の画像検査で、真陽性率が 98%、偽陽性率が5%であった。この癌の一般的な罹患率は1%である。 ある人がこの画像検査を受けて陽性と判断されたとき、実際に癌に罹患している確率に最も近いのはどれか。
1.10%
2.17%
3.25%
4.67%
5.95%

こちらの問題は医学物理士の試験にも出てるので、最近のトレンドなので下の表の計算式を覚えておくと良い。

実際に癌に罹患している確率は表の事後確率の式で表される。代入すると約16.5%となる。

陽性的中率と陰性的中率も出題される可能性もあるので覚えておくと良いかも。

第70回 午後 問89

胃部 X 線造影検査で正しいのはどれか。
1.窒素で胃を膨らませる。
2.二重造影では胃小区を描出する。
3.硫酸バリウムの使用量は 500 mL 程度である。
4.半立位第2斜位撮影では幽門部を描出できる。
5.Brown‡(ブラウン法)による前処置を実施する。

解答 2

1. 窒素で胃を膨らませる。・・・健診で行うバリウム検査は主に炭酸で膨らませる。よって誤りである。

2.二重造影では胃小区を描出する。・・・下の図の赤丸のように胃小区(アレア)を描出する撮影法である。よって正しい。

3.硫酸バリウムの使用量は 500 mL 程度である。・・・以前は 500 ml 使用していたが、近年は 150 ml 前後で撮影を行なっている。よって誤りである。

4.半立位第2斜位撮影では幽門部を描出できる。・・・下の図に示すように主な標的部位は噴門部から胃体上部小彎である。

5.Brown‡(ブラウン法)による前処置を実施する。・・・大腸のバリウム検査を行う時の前処置であり、胃部撮影では行わない。よって誤りである。

第72回 午前 問85

順行性と逆行性の両方の造影検査があるのはどれか。
1.食 道
2.膵 管
3.卵 管
4.耳下腺
5.総胆管

解答 5

1.食 道・・・主に口からバリウムなどの造影剤を用いて造影を行うので、順行性のみとなる。

2.膵 管・・・内視鏡を用いて逆行性に造影を行うことしかできない。

3.卵 管・・・こちらも逆行性にしか造影を行わない。

4.耳下腺・・・侵襲的に逆行性で造影を行う。しかし臨床上では現在あまりやられていない。

5.総胆管・・・内視鏡を用いたERCP(逆行性)での造影と侵襲的に順行性で造影を行うPTCDという造影、治療方法がある。

第64回 午後 問85

上部消化管 X 線造影写真を上記に示す。考えられるのはどれか。
1.潰 瘍
2.進行癌
3.ポリープ
4.慢性胃炎
5.粘膜下腫瘍

解答 2

1.潰 瘍・・・X線画像は下記のような画像所見となる。この画像は典型的な画像である。

2.進行癌・・・進行癌にはBorrmann分類の1型〜5型がある。今回問題になっているのはおそらく4型進行胃がんであると思われる。一番の特徴は大彎部の進展不良。しかしこの画像は空気量の不足、バリウムの付着不良など診断できる画像ではないのでこの画像でいいのだと勘違いをしてはいけない。

4型進行癌の一例

2型進行癌の一例

1型進行癌の一例

 

第72回 午後 問20

右上腹部の超音波像上図に示す。正しいのはどれか。
1.脂肪肝である。
2.腎臓に腫瘤を認める。
3.腹水は認められない。
4.肝臓の腫瘤は無エコーである。
5.肝臓の腫瘤には音響陰影が認められる。

解答 3

1.脂肪肝である。・・・脂肪肝の場合エコーではfatty change という画像所見が出現してくる。

2.腎臓に腫瘤を認める。・・・腎臓には腫瘤陰影は認めない。

3.腹水は認められない。・・・腹水が溜まれば下の画像のように黒く写ってくる。

4.肝臓の腫瘤は無エコーである。・・・問題の画像は無エコーではない。無エコーは下の画像に示す。

5.肝臓の腫瘤には音響陰影が認められる。・・・音響陰影(acoustic shadow)とは結石やある種の腫瘤などの後方に出現する無エコー域のことをいう。具体的な画像を下記に示す。

第72回 午後 問22

脳卒中の急性期に撮影された頭部 MRI の拡散強調像を上図に示す。矢印の高信号が反映している病態として正しいのはどれか。
1.血液の貯留
2.血管原性浮腫
3.細胞障害性(細胞毒性)浮腫
4.脳室の拡大
5.脳の萎縮

解答 3

血管の閉塞もしくは流れが停滞していることにより細胞障害性(細胞毒性)浮腫が起こってdiffusion画像で高信号として現れる。下図に閉塞血管とそれに対応する領域を示しておく。

第67回 午前 問86

子宮卵管造影検査で正しいのはどれか。
1.経時的に撮影する。
2.40 kV 程度の管電圧で撮影する。
3.骨盤計測を目的とした検査である。
4.造影剤投与前に KUB 撮影を実施する。
5.油性ヨード造影剤の使用は禁忌である。

解答 1

子宮卵管造影検査は透視室でおこないます。仰向けになっていただき膣内の洗浄をおこないます。
1 .子宮口から細い管(バルーンカテーテル)を入れて固定します。
2 .造影剤を注入し、子宮内腔から卵管、腹腔内へ造影剤がながれていく状態を透視下(画像をリアルタイムで見ながら)に観察しレントゲン撮影します。
透視下で行う事により患者様の疼痛の程度を画像所見とあわせて判断し注入量や速度も調整していきます。

(1)子宮内腔が造影されていきます。

(2)次に卵管がうつってきます。この患者様では左側の卵管が先に造影されてきています。(レントゲン写真は左右逆にうつっています。)
左右どちらの卵管が先に造影されるかは卵管の通りやすさだけに影響されるわけではなく、その際のカテーテルの向きや造影剤の注入速度などにも影響します。

(3)両方の卵管がうつってきます。両方の卵管が腫れていない事、また卵管の先(卵管采)から腹腔内に造影剤がでていることを確認します。患者様の痛み具合ではここまで行く前に中断することもあります。
3 .バルーンカテーテルを抜いて腟内を洗浄します。
4 .最後に拡散の状態を確認してレントゲン撮影し終わりになります。

このように時間を追って卵管から子宮への流れの撮影を行なっていきます。

第64回 午後 問87

頭部 CT 像を上図に示す。考えられるのはどれか。
1.脳 炎
2.髄膜炎
3.硬膜下血腫
4.硬膜外血腫
5.くも膜下出血

解答 5

臨床上で多く見られる症例である。主な原因は脳動脈瘤の破裂で、単純CTでも脳動脈瘤の位置もある程度把握することができることもある。

 

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