第1種放射線取扱主任者試験問題・解答 生物学8

問1

次の標識化合物のうち、陽電子放射断層装置(PET)検査に用いられるものの正しい組み合わせはどれか。

A [13N]アンモニア

B [18F]フルオロデオキシグルコース

C [67Ga]クエン酸ガリウム

D [99mTc]過テクネチウム酸ナトリウム

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 13N は半減期 10 分の陽電子放出核種。虚血性心疾患の診断に用いられる。

B 正 18F は半減期 110 分の陽電子放出核種。がん診断に用いられる。

C 誤 67Ga は半減期 3.26 日で、壊変様式は軌道電子捕獲。ガリウムシンチグラフィは、がんや炎症性病変に用いられる。

D 誤 99mTc は半減期 6 時間で β壊変し、143 keV のγ線を放出する。

問2

次の核種のうち、ミクロオートラジオグラフィーに最も適しているものはどれか。

1 3H

2 32P

3 35S

4 45Ca

5 90Sr

解答 1

オートラジオグラフィについての記述を下記に示す。

オートラジオグラフィ

オートラジオグラフィとは放射性同位元素が発する放射線(β線)により、標識された部位の近傍の感光乳剤が感光する。 これを現像すると、標識された部位に銀が偏析する。 この試料を透過電子顕微鏡で観察すると、銀の局在位置から、標識された組織や細胞の位置を特定することができる。

ミクロオートラジオグラフィ対応核種・・・3H、14C、35S

マクロオートラジオグラフィ対応核種・・・14C、35S、59Fe、32P

問3

放射線照射によって生じる活性種に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 水和電子は DNA に対して強い酸化剤として作用する。

B 水素ラジカルは生体分子からの水素を引き抜き反応を起こす。

C 間接作用による DNA 損傷には、ヒドロキシラジカルの寄与が最も大きい。

D スーパーオキシドラジカルの寿命はヒドロキシラジカルの寿命より短い。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

フリーラジカルについての記述を下記に示す。

フリーラジカルの生成

励起・・・H2O → H*(還元性) + OH*(酸化性)

電離・・・H2O → H2O+ + e- 、H2O+ → H+ + OH* もしくは H2O+ + H2O → H3O+ + OH*

H3O+ + e- → H* + H2O

電子の周りには水分子が集まり水和電子が生成される。e- + nH2O → e(aq)-[還元性]

e(aq)- + H2O → OH- + H* もしくは、e(aq)- + H+ → H*、e(aq)- + O2 → O2*-(スーパーオキシドラジカル)

H* + OH* → H2O となり、H*は生体分子の水素を引き抜いて反応を起こし、10^(-10)秒の寿命をもつ。

還元性を示す分子・・・H*、e(aq)-、H2

酸化性を示す分子・・・OH*、H2O2

A 誤 放射線照射により生成された電子は多数の水分子と反応し、まわりに水分子の正電荷部分が囲むように配列した水和電子が生成される。還元剤として働く。

B 正 水素ラジカルは別の水素ラジカルと反応し水素分子を形成する(OH ラジカルと結合し、水分子となる反応もある。)

C 正 ヒドロキシラジカルは OH(水酸化)ラジカルである。

D 誤 ヒドロキシラジカルの方がスーパーオキシドラジカルよりも反応性が高い。反応性が高いことを寿命も短いということになる。

問4

放射線による DNA 損傷に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A X 線による DNA 損傷は紫外線による DNA 損傷と変わらない。

B γ線による 2 本鎖切断の収率は 1 本鎖切断の収率の約 2 倍である。

C 放射線に特異的な DNA 損傷はない。

D 塩基損傷は発がんの原因となる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 紫外線では鎖切断は起こらないが、X 線(電離放射線)では鎖切断が起こる。

B 誤 2 本鎖切断の方が生じにくい。

C 正

D 正 塩基損傷も誤修復が起これば突然変異となり、発がんの原因となる。

問5

酸素効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 酸素効果は主に直接作用を修復する。

B 酸素効果の機序の一つに酸素による損傷の固定化がある。

C 照射後酸素濃度上昇により大きな酸素効果が得られる。

D グルタチオンは酸素効果に影響を与える。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 水分子から生じたラジカルが酸素(O2)と反応し、さらに有害なラジカルを生成する。ラジカルが増強されるので、間接作用が修飾される。

B 正 損傷部が酸素と反応して修復されにくくなる。

C 誤 ラジカルの反応(化学的作用)は 10^(-6) 秒程度で終了するので、照射時の酸素濃度により酸素効果は決まる。

D 正 グルタチオンはラジカルを除去する働きをもつ。

問6

放射線の直接作用と間接作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 低 LET 放射線による DNA 損傷は主に直接作用による。

B 試料を凍結すると間接作用の比率が小さくなる。

C 直接作用の一つに、DNA の共有結合の解離によるラジカルの発生がある。

D 低 LET 放射線によって生じた二次電子が標的分子に与える影響は間接作用である。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 3

A 誤 低 LET 放射線では、直接作用と間接作用の比は 1:2 とされている。

B 正 凍結するとラジカルの移動が制限されるため間接作用の比率が小さくなる。

C 正 共有結合を作っている 2 個の電子が解離し、それぞれラジカルを生成する。

D 誤 γ線の物質との相互作用は、そもそも光子のエネルギーが電子に置きかわって起こっている。

問7

γ線の細胞致死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 細胞周期の G1 – S 移行期の方が S 期後半よりも感受性が高い。

B 一般に同一の生存率を与える吸収線量は、低線量率の方が高線量率よりも大きい。

C リンパ球は好中球に比べて放射線感受性が高い。

D コロニー形成法では間期死を定量できる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

A 正 S 期後半は細胞周期の中で最も感受性が低い。

B 正 線量率効果が認められる。

C 正 リンパ球は成熟しても感受性は高い。

D 誤 コロニーは細胞分裂した結果として生じる。分裂死の判定方法である。

問8

γ線による生殖細胞の致死と突然変異に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 精原細胞は精子より致死感受性が高い。

B 精原細胞は間質細胞より致死感受性が高い。

C 男性の場合、一時的不妊からの回復には被ばく線量が高いほど時間がかかる。

D 突然変異の中には、受精卵からの発生過程で淘汰されるものがある。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 致死感受性は、精母細胞 > 精原細胞 = 精細胞 > 精子 の順である。

B 正 臓器の機能を果たす細胞が実質細胞であり、それ以外の支持細胞などが間質細胞である。精原細胞は細胞再生系に含まれる幹細胞であり、感受性は高い。

C 正 線量が高くなれば重篤度が増す。

D 正 突然変異の程度により、たとえ受精しても発生が継続できず、胚死亡に至るものがある。

問9

培養細胞における放射線による HPRT 遺伝子突然変異に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 突然変異の検出には、突然変異を誘発した細胞のみが選択培地で増殖できるようになることを利用する。

B 高 LET 放射線の場合、γ線に比べて吸収線量当たりの突然変異誘発率が高い。

C X 線による突然変異頻度と吸収線量の関係は、直線 – 2次曲線モデルに当てはまる。

D 一般に、γ線では高線量率に比べ低線量率の方が突然変異誘発率が高い。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 2

A 正 培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験は、突然変異により遺伝子機能が欠損し、その結果、ある毒物に対して細胞が耐性(増殖できる)となることを利用する。HPRT遺伝子の場合、6 – チオグアニンに対して耐性をもつ。

B 正 一般に高 LET 放射線の方が影響は大きい。

C 誤 線量と突然変異頻度の関係は直線的とされている。

D 誤 低線量率では修復が期待できるため、突然変異誘発率は低くなる。

問10

放射線によって誘発される染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 血液中のリンパ球を培養して検査することができる。

B 構造の異常を分子生物学的手法で検出することができる。

C 小核形成細胞の出現頻度からは被ばく線量の推定はできない。

D 培養細胞では直接被ばくしていない細胞に観察されることがある。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

A 正 培養するのは、染色体が存在する細胞分裂期に持っていくためである。

B 正 分子生物学的手法の例として、マルチカラー FISH 法、蛍光染色などがある。

C 誤 赤血球の小核試験では、脱核の際に末端欠失の断片が細胞内の残ったものを観察する。バイオドジメトリにも応用することができる。

D 正 バイスタンダー効果と言われる現象である。

バイスタンダー効果とは・・・低線量発がんのリスク評価のことをいう。

放射線の影響は、線量が低くなればなるほど他の要因による影響と区別がつけられなくなるため、現状では比較的高い線量域で得られている結果を外挿して、低線量域においても同様に直線性を示すと仮定しています(LNT仮説)。このLNT仮説を否定する仮説がバイスタンダー効果という。放射線誘発バイスタンダー効果とは 放射線を照射した細胞が近傍に存在する細胞に様々な生物学的影響を引き起こす現象をいう。この現象はLNT仮説が低線量の影響を過小評価している可能性を支持する生物の細胞応答です。 バイスタンダー効果は照射された細胞から放出された一酸化窒素や活性酸素種、様々なサイトカインなど多数のシグナル分子によって伝達されると考えられている。また、ゲノム(個々の生物が持つ遺伝子・染色体全体)不安定性を引き起こす効果がある。なお、ギャップジャンクション(ギャップ結合)は細胞の結合形態の1つであり、環状のタンパク質が隣接する(少し隙間があるのでギャップ)細胞をつないでいる。

例えば隣り合っている細胞同士を結ぶ小さなトンネル(ギャップ・ジャンクション)を閉じる薬剤や、培養液に分泌された活性酸素種を捕捉、中和する薬剤を添加するとバイズタンダー効果は抑制される。

問11

X 線による 4 Gy の急性全身被ばく後の末梢血液に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A リンパ球数は、被ばく後 1 日以内に一過性に増加する。

B 血小板数は、被ばく後 20 日以降に最低値を示す。

C 赤血球数は、被ばく後 25 日以降に最低値を示す。

D 好中球数は、被ばく後 1 日以内に最低値を示す。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4 下記に抹消血液の寿命を示す。

A 誤 被ばく直後に一過性の増加が認められるのは白血球である。

B 正

C 正

D 誤 好中球は 2 週間程度で最低値を示す。

問12

γ線による急性全身被ばく後の骨髄死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 被ばく後 3 日以内に起きる。

B 血小板減少は、骨髄死の原因の一つである。

C LD(50/60) の放射線量を被ばくしたときの主な死因である。

D 5 Gy 以下の被ばくではサイトカイン治療は必要ない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

A 誤 ヒトでは 20 ~ 60 日で起こるとされている。

B 正 血小板の減少は、出血傾向の原因となる。

C 正 LD(50/60) は 60 日間で 50 % が死亡する線量を表しており、骨髄死の発生する期間に着目している。

D 誤 サイトカイン治療のひとつに、G – CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)骨髄増殖因子の投与がある。半致死線量程度の 5 Gy 以下の被ばくで治療効果が期待できる。

問13

次の放射線障害のうち、幹細胞の障害が関与するものとして正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 中枢神経死

B 腸死

C 骨髄死

D 男性不妊

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 (成人の)中枢神経はすでに分化しており、細胞分裂は行われていない。

B 正 幹細胞はクリプト細胞。

C 正 幹細胞は骨髄間葉細胞。

D 正 幹細胞は精原細胞。

問14

γ線による急性被ばく後の障害と、障害を受けた臓器・組織におけるしきい線量の関係として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白内障(視力低下) ー 15 ~ 20 Gy(眼)

B 女性の永久不妊 ー 2.5 ~ 6.0 Gy(卵巣)

C 男性の一時的不妊 ー 1.0 ~ 1.5 Gy(精巣)

D 男性の永久不妊 ー 3.5 ~ 6.0 Gy(精巣)

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 白内障のしきい値は近年引き下げられ 0.5 Gy とされた。

B 正

C 誤 男性の一時的不妊のしきい値は 0.1 ~ 0.15 Gy である。

D 正

問15

臓器全体が X 線に急性被ばくした場合に最も低い線量で起こるものは、次のうちどれか。

1 病的骨折(肋骨)

2 放射線肺炎(肺)

3 脳壊死(大脳)

4 失明(網膜)

5 直腸穿孔(直腸)

解答 2 全肺照射の場合、放射線肺炎のしきい線量は 6 ~ 8 Gy である。そのほかの症状は 10 Gy 以上である。

問16

職業被ばく及び医療被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ウラン鉱夫において、肺がんの増加が見られた。

B 胸部X線透視を行った結核患者において、乳がんの増加が見られた。

C トロトラストを用いた血管造影を行った患者において、白血病の増加が見られた。

D ラジウム時計文字盤工において、骨腫瘍の増加が見られた。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

ウラン鉱夫の肺がん、胸部X線透視の乳がん、ラジウム文字盤工の骨腫瘍は、被ばくした部位とがんが発症した臓器が一致している。トロトラストは二酸化トリウムを主たる成分とする造影剤であり、肝臓に蓄積し肝臓がんの増加が見られたほか、白血病の増加も確認されている。

問17

原爆被爆者の疫学調査で、統計的に有意なリスクの上昇が認められている疾患の組み合わせは、次のうちどれか。

A 急性骨髄性白血病

B 急性リンパ性白血病

C 慢性骨髄性白血病

D 成人T細胞白血病

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

原爆被爆生存者の疫学調査で増加が確認されている白血病は急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の 3 種類であり、慢性リンパ性白血病の増加は確認されていない。成人T細胞白血病は、腫瘍ウイルスである HTLV – 1 感染を原因とする白血病である。

問18

原爆被爆者におけるがんの相対リスクと絶対リスクに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 相対リスクと過剰相対リスクの差は常に一定である。

B 過剰絶対リスクと過剰相対リスクの大小は常に一致する。

C 白血病の過剰絶対リスクは胃がんの過剰絶対リスクより大きい。

D 白血病の過剰相対リスクは全固形がんの過剰相対リスクより大きい。

E 全固形がんの相対リスクは 1 Gy において約 0.5 Gy である。

1 AとB 2 AとD 3 BとE 4 CとD 5 CとE

解答 2

リスク予測モデル

発がんによる生涯リスクの推定で将来の発生数を現時点での発生数から予測するための発現分布モデル。

リスク係数

単位線量あたりのがん発生率。リスク係数を算定する場合、全てのガンに直線モデルを適用して高線量・高線量域からずれを補正するために線量・線量率効果係数(DDREF)として 2 を採用している。この線量・線量率効果係数(DDREF)は高線量・高線量率データを低線量・低線量率に外挿するための係数。

絶対リスク予測モデル

線量あたりどれだけ影響が発生するかという評価法。自然発生が少ない白血病が適合。絶対リスクの臓器間の大小は単位線量当たりの発生数として表すことができる。年齢にかかわらず一定で、年齢が関わるのは相対リスク。

相対リスク予測モデル

線量あたり自然発生率の何倍の影響が発生するという評価法。自然発生が多い固形がんが適用。相対リスクの大小は自然発生が多いものは小さくなり、自然発生が少ないものは大きくなる。 日本人では白血病の自然発生は少なく、胃がんは多い。2012年に発表された寿命調査第14報では、全固形がんの過剰相対リスクは 1 Gy あたり 0.42 とされている。したがって相対リスクは 1.42 となる。

補足

相対リスクは自然発生の何倍かを考えており、過剰相対リスクは自然発生分の 1 を引いた値である。したがって相対リスクと過剰相対リスクの差は常に 1 である。また相対リスクは白血病が最も高くなる。 相対リスクの大小関係は自然発生が多いものは小さく、少ないものは大きい。

 

原爆被爆者の疫学調査

① 発がんの増加が認められる臓器・・・胃、肺、白血病、肝、乳房。認められていない臓器・・・膵、直腸、胆、子宮。前立腺、腎、喉頭。

② ヒトでは遺伝的影響の増加は有意ではない。

③ 組織荷重係数の大きさはガンの感受性を表している。

④ 組織荷重係数は低線量被ばくによる確率的影響を評価する。

⑤ 器官形成期の被ばくの影響で小頭症が胎児奇形で唯一確認されている。その他に精神発達遅滞、低身長もあげられる。

白血病と固形ガンの特徴

白血病

① 造血細胞由来の腫瘍

② 原爆被ばく後最小潜伏期間 2年、ピーク 6 ~ 7年

③ 白血病では潜伏期間は被ばく線量が大きい程短い

④ 被ばく時の年齢が若い程、潜伏期間が短い

⑤ LQ(直線-2次曲線)モデルがよく適合する・・・低LET放射線の場合、被ばく線量と不安定型染色体異常の頻度の関係はLQモデルに当てはまる。

⑥ 絶対リスク予測モデルが適合

固形ガン

① 最少潜伏期間は 10 年

② 潜伏期間は年齢によって複雑

③ 若年被ばくの方が潜伏期間が短い

④ 直線モデル(Lモデル)が適合・・・X線による線量の突然変異頻度と吸収線量との関係は直線的とされている。

⑤ 相対リスク予測モデルが適合

問19

確率的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 早期反応に確率的影響はない。

B 晩発影響はすべて確率的影響である。

C 体内被ばくでは確率的影響は生じない。

D 確率的影響の重篤度は線量に依存しない。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 BCのみ 5 BCDのみ

解答 3

A 正 がん、遺伝的影響はどちらも晩発影響に分類される。

B 誤 晩発影響で確定的影響の例として、白内障がある。

C 誤 体内被ばく(着床前期、期間形成期、胎児期)に確率的影響のリスクがある。

D 正 確率的影響で線量の増加に伴い増加するのは、影響の発生頻度である。

問20

ICRP 2007 年勧告における確率的影響の名目リスク係数に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A がんの名目リスク係数は、遺伝的影響の名目リスク係数より大きい。

B 遺伝的影響の名目リスク係数は、1990 年勧告より大きい。

C 全年齢集団の名目リスク係数は、就労年齢集団(18 ~ 64 歳)の名目リスク係数より大きい。

D 線量・線量率効果係数(DDRFE)として 1/2 を採用している。

1 ABDのみ 2 ACのみ 3 BCのみ 4 BDのみ 5 ACDのみ

解答 2

ICRP2007年勧告における確率的影響の名目リスク係数

① 全年齢集団の名目リスク係数はがんで 5.5 × 10^(-2)/SV、遺伝的影響で 0.2 × 10^(-2)/SV

② 遺伝的影響名目リスク係数1990年勧告では、1.3 × 10^(-2)/SV、2007年勧告では、0.2 × 10^(-2)/SV

③ 就労年齢集団リスク係数(18 ~ 64歳)、がん 4.1 × 10^(-2)/SV、遺伝的 0.1 × 10^(-2)/SV

リスク係数

単位線量あたりのがん発生率。リスク係数を算定する場合、全てのガンに直線モデルを適用して高線量・高線量域からずれを補正するために線量・線量率効果係数(DDREF)として 2 を採用している。この線量・線量率効果係数(DDREF)は高線量・高線量率データを低線量・低線量率に外挿するための係数。

問21

日本における自然放射線による被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 経口摂取による内部被ばくに対する寄与はカリウム 40 が最も大きい。

B ラドン、トロン及びその子孫核種による被ばく線量は日本平均より世界平均が高い。

C 吸入摂取による内部被ばくに対する寄与はトロン及びその子孫核種が最も大きい。

D 年間被ばく線量は約 2.1 mSv である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

A 誤 魚に含まれる鉛 214、ポロニウム 214 からの寄与が大きい。

B 正 世界平均 1.26 mSv/年、日本平均 0.48 mSv/年という評価値がある。

C 誤 ラドン 222 とその子孫核種の方が大きい。

D 正 おおよそ 2.4 mSV/年である。

問22

日本における人工放射線による一般公衆の被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 原子力発電所による寄与が最も大きい。

B 核実験における集団実効線量預託への寄与では炭素 14 が最も大きい。

C CT 検査 1 回当たりの平均実効線量は約 2 ~ 13 mSv である。

D 医療被ばく線量は約 0.4 mSv/年 である。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

A 誤 医療被ばく(診断)の寄与が最も大きい。

B 正 現在も残存する核種は、14C、137Cs、90Sr、 3H の 4 種類であり、半減期の長い 14C の寄与が最大である。

C 正 部位によっても異なるが、胸部 CT スキャンで 6.9 mSv という評価がある。

D 誤 医療被ばく(診断)は 3.87 mSv/年という評価がある。

問23

原爆被爆者の疫学調査で有意な増加が観察された胎内被ばく影響として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 精神遅滞

B 低身長

C 小頭症

D 四肢の奇形

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

A 正 8 ~ 25 週での被ばくの影響。

B 正 胎児期の被ばくの影響。

C 正 器官形成期の被ばくの影響。小頭症は胎児奇形で唯一確認された影響である。

D 誤 胎児奇形で唯一確認された影響は小頭症である。

問24

遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 自然発生突然変異率を 2 倍にするのに要する線量を倍加線量と呼ぶ。

B 遺伝的リスクの推定に用いられる倍加線量法は直接法とも呼ばれる。

C 2001 年 UNSCEAR 報告では倍加線量を 1 Gy としている。

D 原爆被爆者では被ばくによる遺伝的影響が有意に増加した。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

遺伝的影響の発生確率の推定(直接法)

突然変異率から遺伝的影響の発生率を直接推定する方法で、突然変異率を動物実験により求め、線量率効果、動物種差、1形質から全優性遺伝への換算、表現型の重篤度などの要因により補正・外挿し、遺伝的影響の発生率を算定する。

遺伝的影響の発生確率の推定(間接法)

自然発生の突然変異率を 2 倍にするのに必要な線量を倍加線量というが、ヒトの遺伝的疾患の自然発生率と動物実験による倍加線量を比較して推定する方法をいう。倍加線量として 1 Gy の値が示されている。(ヒトの場合0.2 ~ 2.5 Gy と幅がある。)

倍加線量

① 倍加線量は自然発生と同じだけの影響を起こすのに必要な線量であり、倍加線量が大きいということは、一定の影響を起こすために大きな線量が必要であるということを示すので、感受性が低いことを意味する。したがって、倍加線量が大きいほど遺伝的影響は起こりにくいということを意味する。
② 倍加線量の逆数は単位線量あたりの相対突然変異リスクを表す。
③ 誘発突然変異率 = 自然突然変異率 × (被ばく線量/倍加線量)。線量率を下げれば突然変異率は減少する。また点突然変異は1箇所の変化に基づくため線量に比例する。

A 正 倍加線量の定義である。

B 誤 倍加線量は間接法である。

C 正

D 誤 原爆被爆者では遺伝的影響の増加は認められていない。

問25

低 LET 放射線と比較した高 LET 放射線の細胞致死作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ラジカルスカベンジャーによる防護効果が小さい。

B 間接作用の寄与が大きい。

C 線量率効果が小さい。

D 同じ程度の致死作用を得るのに必要な吸収線量が小さい。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

低LET放射線では間接作用の寄与が大きいが、高LET放射線では間接作用の寄与が小さくなる。

間接作用の修飾要因

① 希釈効果

希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶質の濃度が低い方が高い時よりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなることをいう。主に酵素濃度が減少する。 ① 溶質として存在する酵素などの生体高分子数の不活化を指揮とした場合吸収線量が一定であれば不活性化した分子数は濃度によらず一定 → 同じ条件での不活性化率は濃度の増加に伴い低下する。

② 酸素効果

組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることを酸素効果という。酸素存在下での放射線効果は、無酸素下での放射線効果に比べて大きい。これは酸素分子が電子親和性が大きく、 電子を取り込んでスーパーオキシドという反応性に富むラジカルを産生するためである。また、照射後に酸素濃度を高めたとしても酸素効果は見られない。同じ生物学的効果を 得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比を酸素増感比(OER)という。

OER = (無酸素下である効果を得るのに必要な線量)/(酸素存在下で同じ効果を得るのに必要な線量)

OERは酸素分圧の上昇につれて大きくなるが、酸素分圧が 20 mmHg を越えるとほぼ一定となる。低LET(線エネルギー付与)放射線ではOERは 2.5 ~ 3 程度であるが、 高LET放射線では酸素効果は小さい。

③ 保護効果

ラジカルと反応しやすい物質が照射野に存在すれば、生じたラジカルは除去されるので放射線の効果は減少する。これを保護効果といい、このような働きを持つ物質を放射線防護剤あるいは単に防護剤という。 SH化合物などのラジカルスカベンジャーはその一例である。SH基にはシステイン、システアミン、グルタチオン、シスタミンがある。またOH基も還元作用があることから、 アルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなども同様に保護効果を持つ。

④ 温度効果

温度が低下した状態では放射線効果は減少する。これを温度効果という。ラジカルの拡散が低温により妨げられるためだと考えられている。

問26

放射線荷重係数に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射線の種類によっては、そのエネルギーにより値が異なる場合がある。

B 確定的影響を評価するための係数である。

C 線量率が高くなるとその値は大きくなる。

D 外部被ばく及び内部被ばくいずれの評価にも考慮されている。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 3

A 正 中性子はエネルギーによって値が異なる。

B 誤 確率的影響を評価するための係数である。

C 誤 確定的影響を考慮しなくてよい線量範囲であれば、線量率だけでなく被ばく条件にかかわらず適用することができる。

D 正

問27

ICRP 2007 年勧告における放射線荷重係数に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A すべてのエネルギーの光子に対して 1 が与えられている。

B すべてのエネルギーの電子に対して 2 が与えられている。

C すべてのエネルギーの陽子に対して 2 が与えられている。

D すべてのエネルギーの中性子に対して 10 が与えられている。

E すべてのエネルギーのα粒子に対して 20 が与えられている。

1 ABCのみ 2 ACEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 BDEのみ

解答  ICRP 2007 年勧告における放射線荷重係数についての表を下記に示す。

問28

細胞致死作用を指標とした RBE に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射時の酸素分圧の違いによらず一定である。

B 中性子線ではエネルギーの違いによらず一定である。

C LET の違いによって異なる。

D 線量率の違いによって異なる。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 4

A 誤 酸素存在下で放射線影響は増強されるので、酸素分圧により RBE は変化する。

B 誤 中性子はエネルギーによって影響の度合いが変化する。

C 正 一般に、RBE は LET の関数として表される。

D 正 線量率効果がある。

問29

悪性腫瘍の放射線治療において、治療成績に影響を与える要因として正しいものの組み合わせはどれか。

A 腫瘍細胞の放射線感受性

B 腫瘍周囲の正常細胞の放射線感受性

C 腫瘍細胞の増殖速度

D 腫瘍細胞の酸素分圧

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 腫瘍細胞の放射線感受性が高ければ治療効果を上げやすい。

B 正 腫瘍細胞の正常細胞の放射線感受性が高ければ、照射すべき線量を腫瘍細胞に照射することの妨げとなる場合がある。

C 正 増殖速度は、照射の分割回数や照射する期間に影響を与える。

D 正 低酸素細胞の放射線感受性は低くなる。

問30

組織荷重係数に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 確率的影響を評価するための係数である。

B 臓器・組織の等価線量にこの係数を乗じ、全身にわたって積算することによって実効線量が与えられる。

C 線量率の高低によらず、臓器・組織ごとに一定の値が与えられている。

D 年齢によらず、臓器・組織ごとに一定の値が与えられている。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 確率的影響の臓器ごとの感受性を考慮した係数である。

B 正 この問いは実効線量の定義である。

C 正 確定的影響を考慮しなくてよい線量範囲であれば、線量率だけでなく被ばく条件にかかわらず適用することができる。

D 正 男女両方についても区別なく適用できる。

DNAの構成

放射線の生物作用を理解する上で重要なDNAはデオキシリボースとリン酸と塩基から構成される。デオキシリボースとリン酸は交互に並んで結合し、主鎖を形成する。この鎖が2本、互いに逆向きに並んで二重らせん構造を形成する。塩基にはアデニン(A)、 シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)の4種類があり、向かい合った鎖の A と T、G と C が互いに水素結合で結合している。 A と T の間の水素結合の数は2個であり、G と C との間の水素結合 の数は3個である。正常ヒト2倍体細胞1個のDNAでは、A と T の対、G と C の対が合計で約6 × 10^9 個並んでいる。

ヒトのゲノムは30億塩基対とされており、ここでは2倍体について聞かれているので 6 × 10^9 個となる。通常正常ヒト2倍体細胞は1個当たり46本の染色体があり、6 × 10^9 個の塩基対がある。

電離放射線によって引き起こされるDNA損傷には、塩基損傷、塩基遊離、架橋形成、1本鎖切断、2本鎖切断などがある。正常ヒト2倍体細胞に 1Gy の X線を照射すると、細胞1個当たりDNA鎖切断は約1000個、DNA2本鎖切断は約40個生成する。

補足

2009年米国放射線防護学会では、1 mGy で 1 細胞当たり 1 本鎖切断は 1 個、2 本鎖切断は 0.04 個という報告がある。

DNA2本鎖切断が起こると、その近傍において、ヒストンを構成する H2A の一種である H2AX がリン酸化を受けγ-H2AXが生成する。そのため、放射線照射した細胞をγ-H2AXに対する蛍光標識抗体を 用いて染色し、蛍光顕微鏡で観察すると、ドット状に見える。これをγ-H2AXのフォーカスという。このフォーカスを数えることによりDNA2本鎖切断の生成や修復を調べることができる。例えば、DNA2本鎖切断修復酵素の一つであるDNAリガーゼⅣを欠損する細胞に 2 Gy のX線を照射し、2時間後に残っている γ-H2AXのフォーカスを数えると。正常細胞に同様の処置を施した時よりも多い。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験問題・解説 化学8

問1

次の核種について、半減期の短い順に正しく並んでいるものは次のうちどれか。

1 131I < 33P < 35S < 45Ca < 3H

2 131I < 35S < 45Ca < 33P < 3H

3 33P < 131I < 35S < 45Ca < 3H

4 3H < 131I 33P < 35S < 45Ca

5 33P < 35S < 45Ca < 3H < 131I

解答 1

少なくとも覚えておいた方が良い放射性同位体特性表を下記に示す。

放射性同位体特性表

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問2

次の質量数順に並べられた核種のうち、放射性核種、安定核種、放射性核種の順に並んでいるものの組み合わせはどれか。

A 22Na 23Na 24Na

B 26Al 27Al 28Al

C 35Cl 36Cl 37Cl

D 50Cr 51Cr 52Cr

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 2 安定核種を下に示す。

A 正 安定核種 23Na のみ

B 正 安定核種 27Al のみ

C 誤 安定核種 35Cl、37Cl の 2 核種

D 誤 安定核種 53Cr、54Cr の 2 核種

問3

β- 壊変に続いてγ線を放出する核種として、正しいものの組み合わせは次のうちどれか。

A 33P

B 60Co

C 90Y

D 131I

E 192Ir

1 ABDのみ 2 ABDのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ

 

解答 4

問 1 の解説に載せている放射性同位体特性表を覚えておくと良い。

問4

ある核種の放射能が、4 時間後に 30000 dpm、6 時間後に 7500 dpm であった。初めにあった放射能[Bq]として、最も近い値は次のうちどれか。

1 8.0 × 10^3

2 1.6 × 10^4

3 4.8 × 10^4

4 8.0 × 10^4

5 4.8 × 10^5

 

解答 1

4 時間後と 6 時間後の dpm を比較すると、7500/30000 = 1/4 = (1/2)^2 となり、この核種は 2 時間が 2 半減期に相当することがわかる。すなわち半減期は 1 時間ということがわかる。初めの時点から 4 半減期経過した 4 時間後に 30000 dpm であることから、始めにあった放射能は、30000[dpm]/(1/2)^4 = 480000[dpm] = 480000[dpm]/60[sec/min] = 8000[Bq]

問5

32P、177Lu をそれぞれ 1 kBq を含む 10 ml の水溶液がある。2 週間後の 32P/177Lu の原子数比として、最も適切なものは次のうちどれか。ただし、32P、177Lu の半減期をそれぞれ 14 日、7 日とする。

1 1/4

2 1/2

3 1

4 2

5 4

解答 5

半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は A = 0.693N/T と表されるため、N = AT/0.693 となり、原子数 N は放射能と半減期の積 AT に比例することがわかる。2 週間後には、32P は 1 半減期経過しているため放射能は 1/2 になっている。177Lu は 2 半減期経過しており、比放射能は (1/2)^2 = 1/4 になっている。よって、(32P の AT)/(177Lu の AT) を求めると、(1/2 × 14)/(1/4 × 7) = 4 となる。

問6

放射能の等しい 55Fe(半減期 1000 日)と 106Ru(半減期 374 日)がある時、それらの質量の比 (55Fe/106Ru) に最も近いものは、次のうちどれか。

1 0.37

2 0.72

3 1.4

4 2.7

5 5.2

 

解答 3

半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は A = 0.693N/T と表されるため、N = AT/0.693 となり、原子数 N は放射能が等しい場合には半減期 T に比例することがわかる。一方質量数 x の原子を 1 mol(6.0 × 10^23 個)集めると x g の質量になることから、原子数が等しければ質量は質量数に比例する。よって質量の比は、(55Fe/106Ru) = (55Fe の T × 55)/(106Ru の T × 106) = (1000×55)/(374×106) = 1.39 となる。

問7

140Ba は半減期 12.8 日で β- 壊変して 140La(半減期 1.68 日)は β- 壊変して 140Ce(安定)になる。この逐次壊変で、140La を分離除去した 140Ba から生成する 140La の放射能が最大となる時を t(max) とすると、次の記述のうち正しいものの組み合わせはどれか。

A t(max) では、140La の生成速度と壊変速度は等しい。

B t(max) では、140La の放射能は 140Ba の放射能に等しい。

C t(max) の後は、140La の放射能は 140Ba の放射能を常に上回る。

D t(max) の後は、140La の放射能は次第に半減期 12.8 日で減衰するようになる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

過度平衡についての記述を下記に示す。

過度平衡

半減期 T1 (壊変定数 λ1)の核種1 が放射性壊変して生成する核種2 が放射性でさらに半減期 T2 (壊変定数 λ2)で壊変して核種3 となる時。

核種1 から核種2 を分離してからの時間 t により、核種1 の原子数 N1 と 核種2 の原子数 N2 は次のようになる。

dN1/dt = -(N1λ1)

dN2/dt = λ1N1 – λ2N2・・・N2 の時間変化は親核種の壊変速度と娘核種の壊変速度の差である。t(max) となるのは dN^2/dt = 0 の時で娘核種生成速度 = 娘核種壊変速度

分離時の t = 0 において N1 = N1^0、N2 = 0 とするとその後の原子数は
N1 = N1^0 exp(-λ1 t)
N2 = λ1/(λ2-λ1) × N1^0(exp(-λ1t) – exp(-λ2t)) となり、それぞれの放射能 A1とA2 は、λ1N1^0 = A1^0として

A1 = A1^0 exp(-λ1t)

A2 = λ2/(λ2-λ1) × A1^0(exp(-λ1t) – exp(-λ2t)) と示される。

また、t(max) の後以下の関係が成り立つ。
N2/N1 = λ1/(λ2-λ1)
A2/A1 = (N2λ2)/(N1λ1) = 1 + (N2λ1)/(N1λ1) = 1 + N2/N1 となり、A2/A1 > 1 となり、t(max) 後は A2 > A1 となる。

ここで 140Ba(12.8日) → 140La(1.68日) → 140Ce(安定)の場合を考える。
① 分離精製した 140Ba を放置すると 140La の放射能が最大となるまでに、140La と 140Ba の放射能の和に極大が現れる。
② 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能が最大となるとき、140La と 140Ba の放射能は等しくなる。
③ 分離精製した 140Ba を放置すると、140La の放射能は最大になった後、次第に半減期 12.8 日で減衰する。
④ 140Ba,140La,140Ce の原子数の総和は一定である。

過度平衡で成り立つ式・・・N2/N1 = λ1/(λ2-λ1) = T2/(T2-T1)。また A2/A1 = λ2/(λ2-λ1) = T2/(T1-T2)

永続平衡で成り立つ式・・・N2/N1 = λ1/λ2。

親核種である 140Ba の原子数を N(1)、壊変定数を λ(1)、娘核種である 140La の原子数を N(2) 、壊変定数を λ(2) とする。また、140Ba の放射能を A(1)、140La の放射能を A(2) とする。

A 正 N(2) の時間変化は、親核種の壊変速度と娘核種の壊変速度の差であるので、次のように表される。dN(2)/dt = λ(1)N(1) – λ(2)N(2)。また、親核種の壊変は娘核種の生成を意味する。t(max) となるのは、dN(2)/dt = 0 の時であるので、娘核種の生成速度 = 娘核種の壊変速度となる。

B 正 親核種の壊変により娘核種が生成する。t(max) の前は親核種の放射能 A(1) の方が大きいが、t(max) を境に逆転する。

C 正 t(max) の後は次の関係が成り立つ。N2/N1 = λ1/(λ2-λ1)。A2/A1 = (N2λ2)/(N1λ1) = 1 + (N2λ1)/(N1λ1) = 1 + N2/N1 となり、A2/A1 > 1 となり、t(max) 後は A2 > A1 となる。

D 正 t(max) の後十分な時間がたつと、娘核種 2 の放射能は親核種の半減期 T(1) で減衰するようになる。

問8

ある放射性核種 A の半減期は 60 分で、36 % は α壊変して核種 B になり、64 % は β- 壊変して核種 C になる。α壊変の部分半減期 T(α)[分]、β- 壊変の部分半減期 T(β-)[分]の正しい組み合わせ(T(α) , T(β-))はどれか。

1 (85 , 188)

2 (94 , 167)

3 (134 , 106)

4 (167 , 94)

5 (200 , 85)

解答 4

部分半減期 T(n) は、全半減期をその分岐比で割ったものである。よって、α壊変の半減期は 60/0.36 = 167 分、β- 壊変の半減期は、60/0.64 = 94 分 となる。

問9

次の核反応のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 11B(n,p)11C

B 20Ne(d,α)18F

C 32S(p,n)32P

D 54Fe(n,p)54Mn

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

壊変の計算なので計算ミスをしなければ解ける問題である。

問10

次の核反応のうち、17 族元素(ハロゲン)の同位体を生成するものの組み合わせはどれか。

A 18O(p, n)

B 35Cl(n,γ)

C 76Se(d,n)

D 124Xe(n,p)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

壊変の計算を行いつつ、周期表を覚えておかないといけない問題である。

問11

原子炉で Cu を 12.7 時間熱中性子照射した。照射終了直後の 64Cu と 66Cu の放射能の比 A(64Cu)/A(66Cu) として最も近い値はどれか。ただし、(n,γ)反応のみが起こるとする。

標的核 存在率(%) (n,γ)反応断面積(barn) 生成核 半減期
63Cu 70 4.5 64Cu 12.7 時間
65Cu 30 2.2 66Cu 5.1 分

1 0.1

2 0.4

3 1.2

4 2.4

5 4.3

解答 4

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 A は、ターゲット核の数 n、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積 σ、生成核の半減期 T、照射時間 t とすると、次のような関係がある。A = nfσ[1 – (1/2)^(t/T)]。12.7 時間の中性子照射で、半減期 12.7 時間の 64Cu の放射能は、A(64Cu) = 4.5 × 0.7 × f[1 – (1/2)^(12.7/12.7)] となり、半減期 5.1 分の 66Cu の放射能は、A(66Cu) = 2.2 × 0.3 × f[1 – (1/2)^(12.7×60/5.1)] となる。半減期に比べて 照射時間が十分長いため、飽和係数の [1 – (1/2)(12.7×60/5.1)] は、A(64Cu)/A(66Cu) = (4.5 × 0.7 × 0.5)/(2.2 × 0.3) = 2.4 となる。

問12

核医学診断で用いられる 67Ga に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ガリウム(Ga)の原子炉中性子照射による(n.γ)反応で製造される。

B β- 壊変する。

C EC 壊変して、Zn の特性 X 線を放出する。

D シンチグラフィに用いられる。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 67Ga を製造する方法は、68Zn(p,2n) 反応、66Zn(d,n) 反応、65Cu(α,2n) 反応、63Cu(α,γ) 反応で行う。

B 誤 67Ga は EC 壊変であるため、β- 壊変はしない。

C 正

D 正

問13

放射性元素に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A テクネチウム(Tc)は、モリブデン(Mo)と同族元素である。

B プロメチウム(Pm)は、ランタノイドに属する。

C ラジウム(Ra)は、アクチノイドに属する。

D アスタチン(At)は、17 族元素(ハロゲン)である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

これは周期表を覚えておかないと解けない問題である。

問14

次のトリチウム水を含む各水溶液に白金電極を入れて電気分解したとき、陰極(電池の負極を接続した極)でトリチウムを含む水素ガスが発生するものの組み合わせはどれか。

A 希硫酸

B 水酸化ナトリウム水溶液

C 硫酸銅(Ⅱ)水溶液

D 塩化ナトリウム水溶液

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

純粋は電気を通さないため、水の電気分解は少量の化合物を溶解させて行う。主な金属のイオン化傾向は次の通りである。K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > H > Cu > Hg > Ag > Pt >Au イオン化傾向の小さい元素は、イオンではなく金属の方が安定である。

A 正 H = H 陰極から水素ガスが発生する。

B 正 Na > H 陰極から水素ガスが発生する。

C 誤 Cu < H 陰極には銅が析出する。

D 正 Na > H 陰極から水素ガスが発生する。

問15

次の核種のうち、Si(Li) 検出器により同定されるものはどれか。

1 3H

2 33P

3 55Fe

4 90Sr

5 210Po

解答 3

Si(Li)検出器は、低エネルギーX線を高分解能で測定する検出器である。55Fe は EC 壊変核種であり、放出される 58.6 keV と 64.5 keV の Mn の特性 X 線を測定する。β- 壊変する 3H、33P、90Sr-90Y や α壊変する 210Po は検出できない。

問16

トリウム系列、ウラン系列、アクチニウム系列に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 半減期の最も長い Ra の同位体は、ウラン系列に属する。

B 半減期の最も長い Rn の同位体は、トリウム系列に属する。

C 235U は、アクチニウム系列に属する。

D 3 系列とも最終壊変生成物は、Pb の安定同位体である。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 3

放射性連鎖崩壊(一次放射性崩壊)を下に示す。

放射性連鎖崩壊(一次放射性崩壊)

トリウム系列(4n)・・・232Th – 1.4×10^10 y – 208Pb
ネプチニウム系列(4n+1)・・・237Np – 2.1×10^6 y – 209Bi
ウラン系列(4n+2)・・・238U – 4.5×10^9 y – 206Pb
アクチニウム(4n+3)・・・235U – 7.1×10^8 y – 207Pb

A 正 半減期の最も長い Ra の同位体は 226Ra(半減期 1600 年)であり、ウラン系列に属する。

B 誤 半減期の最も長い Rn の同位体は 222Rn(半減期 3.8 日)であり、ウラン系列に属する。トリウム系列の Rn の同位体は 220Rn で、半減期は 56 秒である。

C 正 235U は、一次天然放射性核種であり、アクチニウム系列を作る。

D 正 いずれの系列も、最終壊変生成物は Pb である。

問17

40K に関する記述として誤っているものは、次のうちどれか。

1 天然のカリウムでは 40K の同位体存在度は約 0.01 % である。

2 半減期は 10 億年より長い。

3 β- 壊変して 40Ar が生成する。

4 岩石中の 40K と 40Ar の存在量からその岩石の生成年代が推定できる。

5 体重 60 kg の成人男性では、 40K はおおよそ 4 kBq 含まれている。

解答 3

1 正 天然のカリウム中の 40K の同位体存在度は 0.0117 % であることが知られている。

2 正 40K の半減期は 約 12.8 億年である。

3 誤 40K が β- 壊変して生成する核種は 40Ca である。40Ar は 40K の EC 壊変により生成する。

4 正 放射能を利用した年代測定法としてカリウムーアルゴン(40K – 40Ar)法が用いられている。

5 正 人体は平均 0.2 重量 % のカリウムを含み、その中の 40K が人体へ 0.2 mSv/年の被ばくをもたらしている。

問18

次の物質に希硫酸を加えたときに、放射性の気体が発生するものの組み合わせはどれか。

A Na(36Cl)

B Na2(35S)

C Na2(14CO3)

D Na2(35SO4)

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

A 誤 希硫酸では、塩化ナトリウムとの反応は起こらない。

B 正 次のような反応が起きる。Na2(35S) + H2SO4 → Na2(SO4) + H2(35S)↑ 35S を含む H2(35S) 気体が発生する。

C 正 次のような反応が起きる。Na2(14CO2) + H2(SO4) → Na2(35SO4) + 14CO2↑ + H2O 14C を含む 14CO2 気体が発生する。

D 誤 硫酸ナトリウムと希硫酸は化学反応しない。

問19

担体を含む 45CaCl2 水溶液に次の水溶液を加えたとき、放射性の沈殿を生じるものの組み合わせはどれか。

A 希硫酸

B 水酸化ナトリウム水溶液

C アンモニア水

D 炭酸ナトリウム水溶液

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

A 正 次のような反応が起きる。45CaCl2 + H2(SO4) → 45CaSO4↓ + 2(HCl) 45Ca を含む硫酸カルシウムが沈殿する。

B 正 次のような反応が起きる。45CaCl2 + 2(NaOH) → 45Ca(OH)2↓ + 2(NaCl) 45Ca を含む水酸化カルシウムが沈殿する。

C 誤 次のような反応が起き、塩化カルシウム八アンモニア付加物ができる。付加物は不安定な構造で、塩化カルシウム四アンモニア付加物とアンモニアとの平衡状態となっており、沈殿を形成しない。45CaCl2 + 8(NH3) → 45CaCl2・8(NH3) ⇄ 45CaCl2・4(NH3) + 4(NH3)

D 正 次のような反応が起きる。45CaCl2 + Na2(CO3) → 2(NaCl) + 45CaCO3↓ 45Ca を含む炭酸カルシウムが沈殿する。

問20

[64Cu]CuSO4 と [65Zn]ZnSO4 を含む水溶液に、表面を研磨した鉄板、銅板、亜鉛板をそれぞれ入れた場合に生じる反応として、正しいものの組み合わせは次のうちどれか。

A 鉄板に 65Zn が析出する。

B 鉄板に 64Cu が析出する。

C 銅板に 65Zn が析出する。

D 亜鉛板に 64Cu が析出する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5 金属が陽イオンになろうとする性質のことをイオン化傾向と呼ぶ。イオン化傾向の小さい元素は、イオンではなく金属の方が安定である。よって、水溶液中の金属元素よりも金属板の元素のイオン化傾向が高いときに、金属板に水溶液中の金属元素が析出する。主な金属のイオン化傾向は次の通りである。K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > H > Cu > Hg > Ag > Pt >Au

A 誤

B 正 鉄板に 64Cu が析出する。

C 誤

D 正 亜鉛板に 64Cu が析出する。

問21

50 kBq/mg の[14C]CaCO3 10 mg を酸と反応させて [14C]CO2 を発生させた。この [14C]CO2 の 0 ℃、1 気圧での放射能濃度[Bq/mL]に最も近い値は、次のうちどれか。ただし CaCO3 の式量は 100、CO2 の分子量は 44、0 ℃、1 気圧での気体の体積を 22.4 L/mol とする。

1 5.0 × 10^4

2 2.2 × 10^5

3 5.0 × 10^5

4 2.2 × 10^6

5 5.0 × 10^6

解答 2

50 kBq/mg の 14CaCO3 10 mg は、50 × 10 = 500 kBq である。反応前後の分子数の変化を考える。例えば、14CaCO3 と塩酸が反応して 14CO2 を発生する反応式は次のようになる。Ca(14CO3) + 2(HCl) → CaCl2 + 14CO2↑ + H2O 14C は全て CO2 になり、Ca(14CO3) と 14CO2 の分子数は反応前後で等しいことかがわかる。14Ca(CO3) の 10 mg は、10 × 10^(-3)[g]/100[g/mol] = 1 × 10^(-4)[mol] であるので、反応後の 14CO2 も 1 × 10^(-4) mol となる。よって、14CO2 の体積は、22.4[L/mol] × 1 × 10^(-4)[mol] = 2.24 × 10^(-3)[L] となる。以上から、求める放射能濃度は、(500×10^3[Bq])/(2.24×10^(-3)×10^3)[mL] = 2.2 × 10^5[Bq/mL] となる。

問22

64Cu(2+)、89Sr(2+)、110mAg(+) の各金属イオンの担体を含む硝酸酸性溶液に、希塩酸を加えて生成した沈殿 A をろ別する。残った溶液に硫化水素ガスを通し、生成した沈殿 B をろ別し、ろ液を C とする。A、B、C それぞれに主として含まれる核種の組み合わせとして、正しいものは次のうちどれか。

沈殿 A 沈殿 B ろ液 C

1 64Cu 110mAg 89Sr

2 64Cu 89Sr 110mAg

3 89Sr 64Cu 110mAg

4 110mAg 89Sr 64Cu

5 110mAg 64Cu 89Sr

解答 5 下記の表を覚えておくと良い。

問23

有機相と水相との分配比が 50 の放射性の化学種があり、その化学種を含む水溶液の放射能は 100 MBq である。水相と等容積の有機相で溶媒抽出した場合に、水相に残る放射能[MBq]として最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.1

2 0.2

3 0.5

4 1.0

5 2.0

解答 5

有機相への抽出率 E、分配比を D、有機相の体積を V(0)、水相の体積を V(W) とすると、次のような式で表される。E = D/[D + (V(W)/V(0))]。代入すると E = 50/[50 + (1/1)] = 50/51 となるため、有機相への全体の 50/51 が抽出されることになり、水相には 100 MBq × [1 – (50/51)] = 2.0 MBq が残る。

問24

標識化合物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 均一標識化合物はすべての位置の原子が均一に標識されているものをいう。

B 特定標識化合物は特定の化合物のみが標識されているものをいう。

C 放射化学的純度とは標識化合物の全放射能に対して特定の化学種に標識されているものの割合をいう。

D 放射性核種純度とは着目する放射性核種がある特定の化学種の放射能に占める割合をいう。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

 

解答 2

標識化合物

化合物の一部または全部の元素が放射性同位体と置き換えられたものをいう。標識の位置によって特定標識化合物、名目標識化合物、全般標識化合物、均一標識化合物がある。

○ 特定標識化合物・・・特定の位置の原子だけが標識される。[1-14C]チミン、[6-3H]ウラシルのように標識位置を明記している。

○ 名目標識化合物・・・特定の位置の大部分が標識されているが、その他の位置の原子も標識され分布比が明確ではない。[9-10-3H(N)]オレイン酸のようにN-を付ける。

○ 均一標識化合物・・・全ての位置の原子が均一に標識されている。[U-14C]のようにU-を付ける。

○ 全般標識化合物・・・全ての位置の原子が全般的に標識されているが分布が均一ではなく分布比も明確ではない。[G-14C]メチオニンのようにG-を付ける。

標識化合物の保管方法は、① 比放射能を低くする。② 放射能の濃度を低くする。③ 少量ずつ分けて保管する。④ 強いエネルギーのβ放出体やγ放出体などとは一緒に置かない。⑤ 有機溶液はラジカルスカベンジャー を加えて加水分解を防ぐ。ラジカルスカベンジャーはエタノールやベンジルアルコールを加えて約 2℃ で保管する。

放射化学的純度

特定の化学形の放射能が、全放射能に対して占める割合。比放射能測定から放射性化合物の質量を定量する方法を同位体希釈分析法ともよび次式で求める。

放射化学的純度 = (特定の化学形の放射能/全放射能) × 100

放射性核種純度

放射性核種純度とは、化学形とは関係なく着目する放射性核種がその物質の全放射能に占める割合をいう。

問25

14CH3(COOH) とサリチル酸を、硫酸を触媒として反応させたときの記述として正しいものはどれか。

1 主として 14C 標識アセチルサリチル酸が生成する。

2 12C 標識アセチルサリチル酸と 14C 標識サリチル酸メチルが約 1:1 の割合で生成する。

3 主として 14C 標識サリチル酸メチルが生成する。

4 主として 14C 標識サリチル酸が生成する。

5 主として 14CO2 が生成する。

解答 1

サリチル酸は、フェノール(OH)とカルボン酸(COOH)の両方の性質を持つ酸である。硫酸存在下で酢酸と反応させると、サリチル酸の OH と酢酸の COOH が反応するアセチル化がおきて、アセチルサリチル酸が生成する。サリチル酸と 14C で標識された酢酸との化学反応式は次のようになる。

よって、主として 14C 標識アセチルサリチル酸が生成する。なお、サリチル酸メチルの合成には、サリチル酸とメタノールを化学反応させる。

問26

標識化合物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 同位体希釈法では、目的成分を完全に分離しなくても、その一部を純粋に取り出せれば定量できる。

B 標識化合物の放射化学的純度は、同位体希釈分析法のうち直接希釈法により求めることができる。

C [14C]エタノールの比放射能[Bq/mol]とそれを酸化して得られる[14C]酢酸の比放射能[Bq/mol]は、化学収率によらず等しい。

D ラジオイムノアッセイは、抗原ー抗体反応を利用した分析法である。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 BDのみ 5 BCDのみ

解答 1

A 正 同位体希釈法では、一部を純粋に取り出しさえすれば定量できる特徴がある。

B 誤 直接分析法は、非放射性物質の質量を定量する方法である。標識化合物の放射化学純度は、二重希釈法により定量して求める。

C 正 エタノールが酸化され、アセトアルデヒドを経て酢酸になる反応式は、C2H5OH + O2 → CH3(COOH) + H2O エタノールと生成する酢酸の物質量は等しいため、収率によらず比放射能[Bq/mol]が等しくなる。

D 正 ラジオイムノアッセイは、抗原ー抗体反応を利用した分析法であり、一般的に 125I が用いられる。

問27

次の分析法に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 加速器質量分析法は短半減期核種の定量分析に有効である。

B 中性子放射化分析法では、γ線計測によって定量分析を行う。

C 3He を入射粒子とする荷電粒子放射化分析法は、半導体中の微量酸素の定量分析に有効である。

D PIXE 法では、内殻電子の励起後に発生する X 線を利用する。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 BDのみ 5 BCDのみ

解答 5

様々な質量分析法を下記に示す。

質量分析法

質量分析法には様々な方法がある。

1 加速器質量分析法(AMS)とは、同重体などの除去した特定の原子のみを直接計測する手法であり、長半減期の測定に用いられる。

2 中性子放射化分析(機器中性子放射化分析、INAA)とは、放射化した試料を非破壊のまま測定する方法で分解能の高い半導体検出器と波高分析器を組み合わせることでγ線を測定し多元素同時分析が可能となる。また、中性子放射化分析法では、核反応によって生成した核種から発生するγ線をGe半導体検出器で多元素同時測定するのが一般的である。

3 荷電粒子放射化分析法とは高エネルギーイオンを照射して生成する放射性核種から放出される放射線を計測して目的元素を定量する。3He を入射とする荷電粒子放射化分析法は、半導体中の微量酸素の定量分析に有効である。16O(3He,p)18F の核反応で生成した 18F の放射線を測定することにより半導体中の微量酸素を定量する。

4 PIXE法(荷電粒子励起X線)とは試料にイオンビームを照射して、その際に発生する特性X線を検出して、そのエネルギーと強度から元素を同定・定量する方法である。

5 ラザフォード散乱分析とは、固体試料に水素やヘリウムのビームを照射し、後方に散乱されてくるイオンのエネルギー及び強度を測定して定量する。

6 陽電子消滅法とは材料中に陽電子ビームを打ち込み、電子と衝突して消滅するまでの時間を測定する。大きい空孔ほど消滅するまでの時間が長くなることからそのサイズがわかる。

7 フィッショントラック法(核分裂飛跳法)は、年代測定の1つである 238U の自発核分裂で生じた飛跡を試薬により溶解・拡大させて観察し、飛跡の密度から岩石の年代を測定する。

8 即発γ線分析法とは熱外中性子ビームを試料に照射し、共鳴吸収後に照射される即発γ線を測定することにより非破壊多元素(同位体)分析をする方法。

9 熱中性子を試料に照射し、中性子の透過率を測定することにより、試料中の水分の分布が観測される。

10 中性子回折法とは物質内部の結晶配列や磁気構造の情報を得られる。軽元素と重元素が混合して含まれる物質の軽元素の位置や存在比を決定できる。

11 放射化学的中性子放射化分析(RNAA)とは、放射化した試料を放射科学的に分離・精製したのち測定する方法で、極低濃度の元素の分析や測定ピークに妨害となる核種が含まれている場合、検出感度及び分析値の確率が高い。

問28

次の記述のうち、ホットアトム効果による現象として正しいものの組み合わせはどれか。

A ヨウ化エチルを中性子照射したのち、水を加えて振盪すると放射性ヨウ素が水相中に移った。

B 安息香酸と炭酸リチウムを混合して中性子照射すると、トリチウムで標識された安息香酸が得られた。

C 90Sr を含む Sr(2+) の水溶液をろ過すると、90Y がろ紙に捕集された。

D クロム酸カリウムを中性子照射したのち、水に溶解し陽イオン交換樹脂カラムに流すと 51Cr(3+) が樹脂に捕集された。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

A 正 127I(n,γ)128I 反応のγ線の反跳エネルギーによって、C2H5-I の結合が切られたため水相に高放射能の 128I が移行することをホットアトム効果という。

B 正 有機化合物に炭酸リチウムまたは 3He を混合して中性子照射することにより、6Li(n,α)3H または 3He(n,p)3H で生成するホットアトムの 3H によって有機化合物を標識する。これを反跳合成法と呼び、トリチウムの標識化合物が生成する。

C 誤 90Sr は壊変により 90Y を生成する。ろ紙に 90Y が捕集されるのは、ラジオコロイドを形成することによるもので、ホットアトム効果ではない。

D 正 反跳エネルギーにより Cr4(-) イオン中の結合が切られるため、51Cr(3+) イオンが生成する。この反応を利用して高比放射能の 51Cr が (n,γ) 反応によって作られる。

問29

次の放射性同位元素が用いられている分析・計測装置で、利用される放射線が正しいものはどれか。

1 60Co ー レベル計 ー X線

2 63Ni ー ガスクロマトグラフ ー γ線

3 147Pm ー 厚さ計 ー β線

4 241Am ー 蛍光X線分析装置 ー 中性子線

5 252Cf ー 水分計 ー α線

解答 3

各々の核種の用途を下の表に示す。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

 

1 誤 60Co から発生する 1.17 MeV、1.33 MeV のγ線がレベル計に使用される。

2 誤 63Ni は β- 線のみを発生する核種であり、ガスクロマトグラフの検出器に使われる。

3 正 147Pm は β- 線のみを発生する核種であり、10^(-2) ~ 10^(-1) kg/m2 程度の厚さ計に使われる。

4 誤 蛍光X線分析装置は、低エネルギーγ線やX線で試料を照射して励起させ、発生する蛍光X線スペクトルから分析を行う装置である。分析する元素の原子番号に応じて線源が使い分けられており、55Fe、241Am、238Pu、109Cd、57Co などが用いられる。

5 誤 252Cf が自発核分裂して発生する中性子が、水分計に使われる。

問30

線量計に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A フリッケ線量計は、鉄イオンの酸化を利用する。

B セリウム線量計は、セリウムイオンの還元を利用する。

C フリッケ線量計は、空気を十分に通じてから使用する。

D アラニン線量計は、水和電子による還元作用を利用する。

E セリウム線量計は、ESR(電子スピン共鳴)装置を定量に用いる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ

解答 1

それぞれの線量計の特徴を下に示す。

フリッケ線量計

第1鉄イオン(Fe2+) → 酸化 → 第2鉄イオン(Fe3+) と変化させて測定する線量計で、測定範囲エネルギーは 50 ~ 400 Gy 。また硫酸鉄(Ⅲ)水溶液に空気または酸素と飽和して用いる。酸素飽和していると高線量の測定が可能。

セリウム線量計

第2セリウム(Ce4+) → 還元 → 第1セリウム(Ce3+) と変化させて測定する線量計で、測定範囲エネルギーは 10^4 ~ 5×10^4 Gy。セリウム線量計の定量には、320 nm の紫外線の吸収が用いられる。

アラニン線量計

アラニンを主成分としたパラフィン、フィルム等で作られた固形素子に放射線を照射した際にその吸収線量に比例して生じるラジカルの相対濃度を電子スピン共鳴(ESR)を用いて測定する。

 

熱中性子による核分裂についての記述

核医学診断で最も多く用いられている 99mTc(半減期:6.0時間)の製造には、99Mo(半減期:66時間)による 99mTc ジェネレータが利用できる。それに使用する 99Mo は、235U の熱中性子核分裂反応で製造され、無担体に近いものが得られる。99Mo はβ-壊変し、その 88% は 99mTc に、残りの 12% は直接 99Tc(半減期:2.1×10^5年)になる。生成した 99mTc は核異性体転移して 99Tc になる。分離生成した 99Mo の中では、99mTc の放射能が増加し、約 23 時間後に最大となるとき、99mTc の放射能は、その時点での 99Mo の放射能の約 88% になる。その後、99mTc の放射能は次第に半減期 66 時間で減衰 するようになる。約 60 時間以上で 99Mo と 99mTc は放射平衡状態になり、これを過渡平衡という。この時、99mTc の放射能と 99Mo の放射能の比は、99mTc と 99Mo の壊変定数をそれぞれ λ(Tc) 及び λ(Mo) とすると、[0.88λ(Tc)]/[λ(Tc)-λ(Mo)] で表され、99mTc の放射能は、99Mo の放射能を上回ることはない。

補足 親核種の半減期が娘核種の半減期に対して長い場合、十分な時間が経過すると娘核種は親核種の半減期で減衰するようになる。これを過渡平衡と呼ぶ。親核種が壊変して全て娘核種になる場合、娘核種の放射能が最大となるときに親核種と同じ放射能になる。この時を境に、娘核種と親核種の放射能が逆転し、娘核種の放射能が親核種の放射能よりも多くなる。99Mo の壊変では、88% が 99mTc を生成して放射平衡が成り立つが、12% は直接 99mTc になる。99mTc は 99Mo よりも半減期が長いため、99Mo の 12% は放射平衡が成り立たないことになる。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者問題・解答 物理学8

問1

4.0 pg の質量に相当するエネルギー[J]として最も近い値は。次のうちどれか。

1 1.5 × 10^1

2 3.6 × 10^1

3 1.5 × 10^2

4 3.6 × 10^2

5 1.5 × 10^3

解答 4

E = m・c^2 = 4.0 × 10^(-12)[g] × 10^(-3) × (3.0×10^8)^2 = 3.6 × 10^2 [J] となる。

問2

次の現象のうち、ニュートリノが放出されるものの組み合わせはどれか。

A α壊変

B β+ 壊変

C 電子捕獲壊変

D 内部転換

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

A 誤

B 正 p → n + ν + e という反応である。

C 正 p + e- → n + ν  という反応である。

D 誤

問3

次の現象のうち、軌道電子が関係しないものはどれか

1 ラザフォード散乱

2 電子捕獲壊変

3 内部転換

4 オージエ効果

5 光電効果

 

解答 1

1 関係なし

ラザフォード散乱・・・α線または加速された陽イオンが、原子核近傍の強い電場によって散乱される現象。ラザフォードはα線の金の原子によって大角度に散乱されることを観測し、原子の構造は、中心に小さな原子核があり、その周り電子が飛び回っていることを発見した。

2 関係あり

電子捕獲壊変・・・軌道電子が原子核に取り込まれる壊変形式。

3 関係あり

内部転換・・・原子核の励起エネルギーが軌道電子に与えられ、内部転換電子が放出される壊変形式。

4 関係あり

オージエ効果・・・光電効果、軌道電子捕獲、内部転換等の現象で原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される際、この特性X線の エネルギーを別の軌道電子に与えて、一定のエネルギーを持つ電子を放出することがある。この時出てくる電子をオージエ電子、この現象をオージエ効果という。オージエ電子は線スペクトルである。 原子番号の大きい物質ほど特性X線の発生量が多く、オージエ電子の発生量が少なくなる。

5 関係あり

光電効果・・・光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を 光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、 同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、 次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、 オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。 特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

問4

K-X線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A K 殻の内部転換が K-X 線の放出原因となり得る。

B K-X 線の放出は L-X 線の放出には関係しない。

C K-X 線のエネルギーは原子番号が大きいほど高くなる。

D 同じ原子番号の場合、K-X 線のエネルギーは L-X 線のエネルギーより高い。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 3

A:正 内部転換などによって K 殻電子が放出された空席を、L 殻などの軌道電子が遷移したときに放出される特性 X 線が K-X 線である。

B:誤 L 殻の電子が K 殻に遷移して K-X 線が放出された場合、L 殻に空席が生じるため、L-X 線の放出が起こりえる。

C:正 K 殻と L 殻の結合エネルギーの差は、原子番号が大きいほど大きい。

D:正 K 殻と L 殻の結合エネルギーの差は、L 殻と M 殻の結合エネルギーの差より大きい。

問5

56Fe の原子核の核子 1 個当たりの結合エネルギーは、水素原子における電子の結合エネルギーの何倍か。次のうち、最も近い値はどれか。

1 10^2

2 10^4

3 10^6

4 10^8

5 10^12

解答 3

56Fe の核子あたりの結合エネルギーは、約 8.8 MeV である。一方水素の K 殻電子の結合エネルギーは 約 13 eV であるから 8.8×10^6/13 = 6.8 × 10^5 倍となる。

問6

質量 m、電荷 q の重荷電粒子が、磁束密度 B の一様な磁場中を速度 v で磁場に垂直な面内を円運動している。このとき粒子が円運動を一周するのに要する時間は、次のうちどれか。

1 (2πm)/(qB)

2 (2πB)/(qm)

3 (2πmB)/(q)

4 (2πqm)/(B)

5 (2πmB)/(qv)

 

解答 1

速度 v の荷電粒子が速度が強度 B の磁場中を運動するときに受けるローレンツ力 F(B) は、F(B) = qvB である。一方、その荷電粒子(質量を m とする)が半径 r で円運動をするときに受ける遠心力 F(c) は F(c) = mv^2/r である。定常的に円運動をしているといううことは、F(B) = F(c) であるから、qvB = mv^2/r、すなわち v = rqB/m である。円周の長さは 2πr であるから、1 周に要する時間 T は、T = 2πr/v = 2πrm/rqB = 2πm/qB となる。

問7

次の加速器のうち、電子並びにイオンのいずれの加速にも適用できるものの組み合わせはどれか。

A コッククロフト・ワルトン型加速装置

B ファン・デ・グラーフ型加速装置

C サイクロトロン

D ベータトロン

E シンクロトロン

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 2 それぞれの加速器の記述を下記に示す。

コッククロフト・ワルトン加速器

コンデンサーと整流器を組み合わせた倍圧整流回路を利用して、コンデンサーに高電圧を貯めて、コンデンサーから加速管に高電圧を印加する事で荷電粒子を加速する。
直流高電圧、静電場を使っているため、イオン・電子共に加速可能である。

バン・デ・グラーフ型加速器

超高圧タンク内に絶縁ベルトを回転させ、電荷を帯電球に貯めて、超高電圧を抵抗によって分圧し、加速管に電圧を加えて加速する。帯電球に電荷が貯まると、ベルト上の電荷と 斥力が作用し、ベルトの回転数が低下したり放電を発生する。超高圧ガスはは放電防止用窒素ガスである。
直流高電圧、静電場を使っているため、イオン・電子共に加速可能である。

ベータトロン

ベータトロンは交流励磁によって作られる磁界により、電子に一定の円運動させ、その磁場により生じる電場で電子を加速する。交流電場で行い、電子だけを加速させる。 また磁場の変化で誘起される電場で加速される。

マイクロトロン

一様な直線磁界で円軌道上を回転させ、マグネトロン又はクライストロンに夜3000MHzのマイクロ波の電場で電子を加速する。電子エネルギーが増大すると回転半径も大きくなる。

サイクロトロン

D電極の上下に磁石を設置し、D電極に+、ーの高周波を掛けると、荷電粒子は回転運動を始め、ギャップで加速され、回転半径は大きくなり、ビームとして取り出される。D電極上下の磁界は直流磁界(直流電磁石)で 高周波は一定周波数を用いギャップ間で加速する。高周波静磁場を用いてイオンのみを加速させる。現在は粒子線治療とPET薬剤生成加速器に用いられる。

シンクロトロン

シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事で X線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化する。

問8

中性子を発生させる手法として、正しいものの組み合わせはどれか。

A Be に 2.8 MeV のγ線を照射する。

B Be に 5.3 MeV のα線を照射する。

C 3H ターゲットに 200keV の 2H ビームを照射する。

D 2H ターゲットに 2 MeV の 2H ビームを照射する。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

中性子を発生させる方法を下記に示す。

中性子を発生させる方法

① 9Be(γ , n)8Be という反応で、約 1.7 MeV 以上のγ線があればこの反応を起こせる。
② 9Be(α , n)12C という反応で、5.3 MeV のα線を照射した場合、最大 10 MeV を超える中性子が発生する。
③ 3H(2H , n)4He という反応で、200 keV の2Hビームを照射した場合は、平均約14 MeV の中性子が放出される。この反応は中性子線源、核融合発電にも利用される。
④ 2H(2H , n)3He という反応で、2 MeV の2Hビームを照射した場合は、前方に約 5 MeV の中性子が放出される。

問9

235U が熱中性子を吸収して、95Sr、139Xe 及び中性子に分裂する反応において、1.0 g の 235U がすべてこの反応を起こすと、この反応により発生するエネルギー[kWh]はいくらか。最も近いものを選べ。ただし、95Sr、139Xe、235U の各原子核 1 個の質量[kg]を、それぞれ、151.61×10^(-27)、230.67×10^(-27)、390.29×10^(-27) とする。また、中性子 1 個の質量[kg]は 1.67×10^(-27) とする。

1 2.2 × 10^4

2 4.2 × 10^4

3 6.4 × 10^4

4 9.2 × 10^4

5 1.2 × 10^5

解答 1

核分裂で起こる質量差は次のようになる。質量差 = [235U] + [n] – ([95Sr] + [139Xe] + 2n) = [235U] – ([95Sr] + [139Xe] + [n]) = 0.34 × 10^(-27) kg となる。したがって一つの核分裂によって発生するエネルギー(E)は、c を光の速度として、E = mc^2 = 0.34 × 10^(-27) × (3.0×10^8)^2 = 3.06 × 10^(-11) J である。一方 1 g の 235U に含まれる原子数 N は、N = (1.0×10^(-3))/(390.29×10^(-27)) = 2.6 × 10^21 個 である。したがってすべての 235U が核分裂したときに得られるエネルギーは、 3.06 × 10^(-11) × 2.6 × 10^21 = 8.0 × 10^10 J である。1 kWh は、1 × 10^3 × 60 × 60 = 3.6 × 10^6 J であるから、エネルギーを kWh 単位に換算すれば (8.0×10^10)/(3.6×10^6) = 2.2 × 10^4 kWh となる。

問10

制動放射線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 荷電粒子と軌道電子とのとの弾性散乱に起因する。

B オージエ電子と競合して放出される。

C エネルギー分布は線スペクトルとなる。

D 制動放射線の強度は標的物質の原子番号が大きいほど高い。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 制動放射線は、荷電粒子が原子核の近くを通過する際、原子核の持つ強い電場によって進行方向が大きく曲げられて生成する。

B 誤 オージエ電子と競合して放出されるのは特性X線である。

C 誤 エネルギー分布は連続スペクトルである。

D 正 原子番号の大きい原子核ほど周辺の電場は強いため、制動の強度は大きい。

問11

電子線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 線衝突阻止能は入射した物質の原子番号に比例して大きくなる。

B 強度は、透過する物質の厚さに関して指数関数に減弱する。

C 同じエネルギーの陽子線に比べて制動放射によるエネルギー損失が大きい。

D 同じエネルギーの陽子線に比べて後方散乱の割合が大きい。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 1

A 線衝突阻止能は、電子との衝突によるエネルギー損失であり、したがって線衝突阻止能は単位体積に含まれる電子数に比例する。よって単位体積あたりの原子数が同じと仮定すれば、線衝突阻止能は原子番号に比例する。

B β線は 0 から最大エネルギーまで連続的に分布するため、物質を通過するにつれてエネルギーまで連続的に分布するため、物質を通過するにつれてエネルギーの小さなβ線から停止し、最大飛程までの厚さの範囲では擬似的に指数関数に従って減衰する。一方、単一エネルギーの電子線では、最大飛程以下の厚さの物質の場合、散乱によってのみ様相は異なる。

C 電子は陽子に比べて質量が約 1/2000 と小さいため、原子核の電場によって進行方向が急激に曲げられる確率が高く、制動放射線によるエネルギー損失は無視できない。一方陽子線については、制動放射線の生成は多くの場合無視できる。

D 電子線は原子核だけでなく、軌道電子との衝突によって比較的大きく散乱されるため、後方散乱の確率は大きい。

問12

α粒子と重粒子が同じ速度の場合に、α粒子の阻止能(S(α))と重陽子の阻止能(S(d))の比(S(α)/S(d))として最も近い値はどれか。

1 1

2 2

3 4

4 8

5 16

解答 3

質量衝突阻止能 ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(n × Z)/ρ] ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(A × Z) × Na] z : 有効電荷 e : 電子。荷電粒子の速度が同じ場合、粒子の電荷の 2 乗に比例するため阻止能比は 2^2/1^2 = 4 となる。

問13

W 値に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 入射放射線のエネルギーにほとんど依存しない。

B 気体の電離エネルギーの 2 倍程度である。

C ヘリウムとヘリウムーアルゴン(0.13%)混合気体の W 値を比較すると、ヘリウムの方が大きい。

D アルゴンと空気の W 値を比較すると、アルゴンの方が大きい。

E 二次電子によって生じたイオン対は含めない。

1 ABCのみ 2 ABEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 1

W 値に関する記述を下記に示す。

W値

イオン対または正孔対を1個生成するのに必要なエネルギーのことで、すべての荷電粒子に対して用いることができる。He:43 eV 空気:34 eV Ar:26eV C:18 eV Xe:22 eV Si:3.6 eV

A 正 α粒子と電子に対しても W 値の差は小さい。

B 正 電離エネルギーは、最も結合エネルギーの小さい最外殻の電子が原子から引き離されるのに必要なエネルギーである。一方 W 値は、荷電粒子が停止するまでの間に生成した電子ーイオン対数を電離電流によって測定し、荷電粒子の初期エネルギーを電子ーイオン対数で割った値である。したがって、W 値は電子とイオンの再結合、原子から飛び出した電子のエネルギーなどの損失を受けるため、電離エネルギーよりも大きい。

C 正 それぞれの W 値は He:43 eV 空気:34 eV Ar:26eV C:18 eV Xe:22 eV Si:3.6 eV

D 誤 それぞれの W 値は He:43 eV 空気:34 eV Ar:26eV C:18 eV Xe:22 eV Si:3.6 eV

E 誤 2 次電子のうち、それがさらに電離を生じさせるエネルギーを有する電子を δ(デルタ)線という。δ線による 2 次電離によるイオン対も、W 値の算定に含まれている。

問14

光電効果に関連する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 光電子のエネルギーは入射光子のエネルギーに比例する。

B 光電効果に伴って必ず特性X線が放出される。

C 光電効果の起こる確率(断面積)は入射光子のエネルギーとともに単調に変化する。

D 蛍光収率は原子番号によって決まる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

光電効果に関する記述を下記に示す。

光電効果

光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。 特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。
光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

A 誤 光電子のエネルギー E(e) は、光子のエネルギーを E(γ)、軌道電子の結合エネルギーを E(b) とすれば、E(e) = E(γ) – E(b) である。

B 誤 特性X線ではなく、競合する過程であるオージエ効果によってオージエ電子が放出されることがある。

C 誤 例えば軌道電子の結合エネルギーの影響である K 吸収端、L 吸収端(断面積)は不連続に増加する。

D 正 何らかの相互作用によって生じた軌道電子の空席あたりに放出される特性X線の割合を蛍光収率と呼ぶ。蛍光収率は核外電子の軌道の性質のみに依存するため、原子番号によって決まる。

問15

コンプトン効果に関連する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 入射光子の波長と 90 度方向に散乱された光子の波長との差は、入射光子エネルギーや散乱物質によらず一定である。

B 物質の単位体積あたりに起こる確率は物質の電子密度に比例する。

C 入射光子エネルギーが高いほど後方散乱の割合が多くなる。

D コンプトン効果は軌道電子に対しては起こらない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

コンプトン効果の記述を下記に示す。

コンプトン効果

波長λの光子が物質内の自由電子と衝突して進行方向が φ だけ変えられ、エネルギーを電子に与えて ψ なる方向へはじき出し、自らは波長λ’となる。これをコンプトン効果という。コンプトン効果は粒子性を示し、光子エネルギー1〜3 MeV の範囲で起こる。コンプトン散乱は非干渉性散乱であり、① 入射波長より散乱波長の方が長い。 ② 線減弱係数は原子番号Zに比例する。原子当たりの断面積は原子番号Zに比例する。コンプトン電子のエネルギーEeは Ee = E0/[1 + (E0/(1 – cosθ)mc^2)] で表すことができる。 ここで 60Co γ線についての補足。60Co γ線エネルギーでは全ての物質についてコンプトン散乱が優勢であり、水素を除いては、質量減弱計数はほぼ同じである。したがって、単位面積当たりの質量で表した遮蔽体の厚さ、すなわち密度×厚さの積が大きいほど遮蔽効果が大きくなる。

A 正 90 度方向にコンプトン散乱された場合の、散乱前後の波長の差はコンプトン波長 λ(c) と呼ばれ、h をプランク定数、m を粒子の静止質量、c の光速度として、λ(c) = h/(mc) である。λ(c) は粒子の質量だけに依存する。

B 正 コンプトン効果が重要な領域では、軌道電子の束縛エネルギーは光子のエネルギーに比較して小さく、無視することができる。この条件ではどの軌道電子も自由電子と同様にふるまうため、コンプトン効果の起こる確率は、照射される物質に含まれる電子数に比例する。すなわち、コンプトン散乱の単位体積あたりの発生確率は、単位体積当たりの電子数(電子密度)に比例する。

C 誤 入射光子エネルギーが高いほど、前方散乱の確率が大きくなる。

D 誤 コンプトン効果が重要な領域では、軌道電子は自由電子と同様に作用しコンプトン効果を起こす。

問16

コンプトン散乱において、散乱角 90 度における散乱光子の波長が入射光子の波長の 2 倍となる場合の入射光子のエネルギー[MeV]として最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.26

2 0.51

3 0.76

4 1.01

5 1.51

解答 2

散乱光子のエネルギー E'(γ) は、入射光子エネルギーを E(γ)、電子の静止質量を m、光の速度を c、光子の散乱角度を θ とすれば、次式で与えられる。E'(γ) = (E(γ))/[1 + [(E(γ)/(mc^2)] × (1 – cosθ))]・・・① 光子の波長を λ、プランク定数を h とすれば、E(γ) = hc/λ の関係がある。散乱後の波長 λ’ は、題意より λ’ = 2λ であるから、E'(γ) = hc/λ’ = hc/(2λ) = E(γ)/2 である。θ = 90 度とともに ①に代入すると、E(γ) = (E(γ))/[1 + [(E(γ)/(mc^2)] × (1 – 0))] = mc^2 = 0.511 MeV となる。

問17

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 0.1 MeV の光子による鉛の吸収線量においては、光電効果が最も大きく寄与する。

B 137Cs γ線 による鉄の吸収線量においては、光電効果が最も大きく寄与する。

C 60Co γ線による吸収線量においては、コンプトン効果が最も大きく寄与する。

D 3 MeV の光子による鉄の吸収線量においては、電子対生成が最も大きく寄与する。

解答 2

光電効果、コンプトン効果、電子対生成が起こる物質のエネルギー範囲との関係性を下記に示す。

光電効果、コンプトン効果、電子対生成が起こる物質のエネルギー範囲との関係性。

アルミニウム(Z=13)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 50KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 50KeV ~ 20MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 20MeV]

水と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 30KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 30KeV ~ 30MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 30MeV]

鉄と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 100KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 100KeV ~ 10MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 10MeV]

鉛(Z=82)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 600KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 600KeV ~ 5MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 5MeV]

問18

3.2 g の 32S がフルエンス率 200 cm^(-2)・s^(-1) の速中性子に照射されている。誘導される 32P の飽和放射線[Bq]として、最も近い値は、次のうちどれか。ただし 32S(n,p)32P の反応の断面積が 0.07b(バーン)とする。

1 0.42

2 0.70

3 0.84

4 0.98

5 1.3

解答 3

3.2 g の 32S に含まれる原子数 N は、N(A) をアボガドロ数(N(A) = 6.0 × 10^23) として、N = N(A) × 3.2/32 = 6.0 × 10^22 個である。従って反応率、すなわち飽和放射線 A(∞) は、A(∞) = σNφ = 0.07 × 10^(-24) × 6.0 × 10^22 × 200 = 0.84 Bq

問19

次の核種のうち、自発核分裂による中性子源として用いられるものはどれか。

1 226Ra

2 238U

3 239Pu

4 241Am

5 252Cf

解答 5

放射性同位体特性表を下記に示す。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問20

10 MeV の中性子が三重水素原子核(3H)との弾性衝突によって 0.1 MeV 以下のエネルギーになるための最小の衝突回数として正しい値は次のうちどれか。

1 2

2 3

3 4

4 5

5 6

 

解答 3

エネルギー E(0) の中性子(質量m)が 質量 M の物質に弾性衝突してエネルギー E(n) になった時のエネルギーも求め方は E(n) = [(M-m)/(M+m)]^2 × E(0) と表せる。ここの問いにおいて、m=1、M=3 であるので、E(n)=(1/4)E(0) となる。10MeV から 0.1MeV へは、0.1/10 = 1/100 のエネルギー減少である。3H との散乱では1回に最大 1/4 に減少するので、最低4回の衝突が必要となる。

問21

吸収線量の単位を SI 基本単位で表記した場合、正しいものは次のうちどれか。

1 m^2・s^(-2)・kg^(-1)

2 m・s^(-2)・kg^(-1)

3 m^2・s^(-1)

4 m^2・s^(-2)

5 A・s・kg^(-1)

解答 4

吸収線量は J・kg^(-1) = kg・m^2・s^(-2)・kg^(-1) = m^2・s^(-1) となる。またその他の放射線量と単位を下記の表に示す。

放射線量と単位

記号 SI単位 その他
量子数 N I  ー
フルエンス Φ m^(-2)  ー
エネルギーフルエンス φ J × m^(-2)  ー
断面積 δ m^2  ー
線減弱係数 μ m^(-1) = 線エネルギー吸収係数
質量エネルギー転移係数 μtr/ρ m^2 × kg^(-1) 光子との相互作用
質量エネルギー吸収係数 μen/ρ m^2 × kg^(-1)  ー
質量阻止能 S/ρ J × m^2 × kg^(-1) 荷電粒子との相互作用
線エネルギー付与 J × m^(-1)  ー
質量減弱係数 μ/ρ m^2 × kg^(-1) 物質には依存しない
カーマ K J × kg^(-1)  ー
照射線量 X C × kg^(-1)  ー
エネルギー付与 εi J 荷電粒子に対して用いる
吸収線量 D J × kg^(-1)  ー
放射能 A Bq  ー

問22

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射能は単位時間当たりに放出される放射線の数をいう。

B 吸収線量は任意の電離放射線に用いられる。

C カーマは任意の電離放射線に用いられる。

D 照射線量は空気に対してのみ定義される。

解答 4

A 誤 放射能(Bq)は、単位時間当たりに壊変する原子数である。

B 正 吸収線量(Gy)は、任意の電離放射線、任意の物質に対して用いられる。

C 誤 カーマ(Gy)は、光子や中性子のような、電荷を持たない電離放射線に対して用いられる。

D 正 照射線量(C・kg^(-1))は、光子が空気を照射するときに定義される量である。

問23

次の検出器のうち、α線の測定に用いられないものの組み合わせはどれか。

A ガスフロー式 2π比例計数管

B NaI(Tl)シンチレーション検出器

C Ge 半導体検出器

D プラスチックシンチレーション検出器

E 表面障壁型 Si 半導体検出器

1 AとD 2 AとE 3 BとD 4 BとE 5 CとD

解答 3

A ガスフロー式 2π比例計数管・・・α線は飛程が短く、ほとんどの場合計数ガス中でエネルギーをすべて失うため、測定が可能である。

B NaI(Tl)シンチレーション検出器・・・NaI は潮解性があるため、アルミニウムなどの密封容器に納められている。α線は容器を通過できないため、測定できない。

C Ge 半導体検出器・・・Ge 半導体検出器は真空容器中に入れて冷却されている。α線は容器を通過できないため、測定できない。

D プラスチックシンチレーション検出器・・・極めて薄い遮光膜で覆われたプラスチックシンチレータは、α線を検出可能である。

E 表面障壁型 Si 半導体検出器・・・主にα線用の高いエネルギー分解能を有する検出器である。

問24

容器 1 L、圧力 5 気圧の空気充填電離箱に 10 kBq のトリチウムガス(β線平均エネルギー:5.7 keV)を注入したとき、得られる飽和電流[pA]として、最も近い値は次のうちどれか。ただし、β線に対する空気の W 値は 34 eV で、この値はトリチウムガスの注入により変わらないものとする。また、壁効果は無視する。

1 0.13

2 0.27

3 0.52

4 2.6

5 5.7

 

解答 2

トリチウムは 100 % の割合で β- 壊変する核種であるから、10 kBq のトリチウムが毎秒空気に与えるエネルギーは、5.7 × 10 × 10^3 = 5.7 × 10^4 keV・s^(-1) = 5.7 × 10^7 eV・s^(-1) となる。したがって毎秒生成するイオン対数は、5.7×10^7/34 = 1.7 × 10^6 個・s^(-1) である。素電荷は 1.6 × 10^(-19) C であるから、飽和電流値は、1.7 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19) = 2.7 × 10^(-13) A = 0.27 pA となる。

問25

ダイノード 10 段の光電子増倍管の利得が 1.0 × 10^6 である場合、各ダイノードの平均の電子増倍率はいくらか。次のうちから最も近いものを選べ。

1 3.0

2 3.5

3 4.0

4 4.5

5 5.0

解答 3 1 段あたりの増倍率を x とすると、題意より x^10 = 1.0 × 10^6 であり、すなわち、x^5 = 10^3 となることがわかる。2^10 = 1024 であるので x^5 ≒ 2^10、すなわち x ≒ 2^2 = 4 となる。

問26

目的とする量 P は、それぞれ独立の測定値 X、Y により、P = X/Y の関係で与えられる。X、Y の標準偏差をそれぞれ σ(X)、σ(Y) とすると、P の標準偏差として正しいものは、次のうちどれか。

解答 1 P の標準偏差 σ(P) は次のようになる。

問27

γ線スペクトロメトリによる放射能測定において、次の光子の対のうち、サム効果を考慮する必要があるものの正しい組み合わせはどれか。

A 24Na 線源からの 1.369 MeV のγ線と 2.754 MeV の γ線

B 57Co 線源からの 0.122 MeV のγ線と 0.136 MeV の γ線

C 60Co 線源からの 1.173 MeV のγ線と 1.333 MeV の γ線

D 134Cs 線源からの 0.605 MeV のγ線と 0.796 MeV の γ線

E 137Cs 線源からの 0.662 MeV のγ線と 0.032 MeV の K-X(Ba)線

1 ABEのみ 2 ACDのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 BCEのみ

解答 2

励起状態にある原子核の下方遷移(高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に遷移すること)がカスケード(「段階状の滝」という意味)的に生じて、複数のγ線が極めて短時間に放出され、それらがともに検出されると、検出器の出力波高は複数のγ線によるエネルギー吸収の和に相当する高さになる。このような現象をコインシデンス・サム効果と呼び、全吸収ピークの検出効率は、γ線が単独で放出される場合に比べて低下する。サム効果はγ線に対する検出効率が高いと顕著になり、特に低エネルギーγ線を井戸型検出器を用いて測定した場合は著しい。 なお、偶発同時計数(別々の原子核から放出されたγ線が、偶然同時に検出される現象)と異なり、サム効果の発生頻度は線源強度に依存しない。

A 正 2 つのγ線は、24Mg の 1.369 MeV の準位(半減期 1.35 ps)を挟んでカスケードに放出されるため、サム効果を生じる。

B 誤 2 つのγ線は、57Fe の 0.136 MeV の準位から、どちらかが選択されて放出されるため、サム効果を生じない。

C 正 2 つのγ線は、60Ni の 1.333 MeV の準位(半減期 0.713 ps)を挟んでカスケードに放出されるため、サム効果を生じる。

D 正 2 つのγ線は、134Ba の 0.605 keV の準位(半減期 5.12 ps)を挟んでカスケードに放出されるため、サム効果を生じる。

D 誤 0.032 MeV の K-X(Ba)線は、137Ba の 0.662 MeV の準位が内部転換によって K 殻電子を放出させたときに生じる。0.662 MeV のγ線放出と内部転換は、どちらかが選択されて起きるため、サム効果は生じない。

問28

放射線源を用いて得た比例計数管の出力パルス信号を分解時間 50 μs の電気回路を通して計数したところ、計数率は 60 kcpm であった。次に、この回路の分解時間を 150 μs に変えたとき、計数率[kcpm] として最も近い値は、次のうちどれか。

1 45

2 48

3 50

4 55

5 58

解答 4

毎秒の計数率 n は、60 × 10^3/60 = 1.0 × 10^3 s^(-1) である。分解時間を補正した計数率 n(0) は、n(0) = n/(1-nτ) = 10^3/(1-0.05) = 1053 s^(-1) である。n(0) = n/(1-nτ) より n = n(0)/(1-n(0)τ) が得られる。したがって分解時間を 150 μs に変更したときの計数率 n’ は次の式で計算できる。n’ = 1053/(1+1053×150×10^(-6)) = 909 s^(-1) = 909 × 60 × 10^(-3) kcpm = 54.5 kcpm

問29

GM 計数管の計数値の相対標準偏差が 5 % になる計数に最も近い値は、次のうちどれか。

 

1 200

2 400

3 600

4 800

5 1000

解答 2

計数が x のときの標準偏差 σ は √x であるから、題意より √x/x = 0.05、すなわち、 x = 400 である。

問30

1 mg の 137Cs を含む点状線源がある。この点状線源から 2 m 離れた位置における 1 cm 線量当量率[μSv・h^(-1)]として最も近い値は次のうちどれか。ただし、137Cs 線源に対する 1 cm 線量当量率定数を 0.093 μSv・m^2・MBq^(-1)・h^(-1) とする。

1 11

2 23

3 64

4 74

5 83

解答 4

137Cs 1 mg の 原子数 N は、アボガドロ数 N(A) を、N(A) = 6.0 × 10^23 として、次式で計算される。N = 6.0 × 10^23 × (1×10^(-3)/137) = 4.4 × 10^18。137Cs の半減期 T は約 30 年であるから、壊変定数 λ は次の値となる。λ = ln2/T = 0.693/(30×365×24×60×60) = 7.3 × 10^(-10) s^(-1)。したがって、137Cs の放射能 A は次式で計算できる。A = λN = 7.3 × 10^(-10) × 4.4 × 10^18 = 3.2 × 10^9 Bq = 3200 MBq。 よって 2 m 離れた位置における線量率 H は、次のようになる。H = 0.093 × (3200/2^2) = 74 μSv/h

 

中性子エネルギー

中性子はそのエネルギーにより熱中性子、熱外中性子、熱中性子等に分類される。原子核に中性子が捕獲される捕獲反応は熱中性子や熱外中性子等の「遅い中性子」で主として起こり、質量数が 1 増加した原子核が 生成される。核内の中性子の結合エネルギーがおよそ 8 MeV であるので、この反応は発熱反応であり、エネルギーの低い中性子によってエネルギーの高い励起状態の核が形成される。 この励起状態からγ線が放出される。カドミウムは熱中性子に対する捕獲断面積が 2520 b(バーン)と大きいことが知られ、熱中性子の遮蔽や発生するγ線を利用して熱中性子の検出 に用いられる。この他に 3He(n , p)3H , 6Li(n , α)3H , 10B(n , α)7Li 等の核変換を起こす反応があり、比較的大きなQ値を持つため、熱中性子の検出に利用される。これらは荷電粒子放出 反応と呼ばれ、通例は高エネルギー中性子の吸熱反応として起こるが、エネルギーの低い中性子でもクーロン障壁の小さい軽い核に対して起こり得る。 捕獲反応及び荷電粒子放出反応は吸収反応と総称され、これに核分裂反応や中性子放出反応も含まれる。さらに中性子のエネルギーが大きくなるに従い、 反応の断面積は中性子の速度に逆比例する振る舞いを見せる。また、中性子のある特定のエネルギーで捕獲反応が強く起こることがあり、これを共鳴吸収という。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験・解答 放射線生物7

問1

培養中の細胞の生体高分子を標識する場合、次の標識化合物と生体高分子の組み合わせのうち、最も適切なものはどれか。

1 [3H]ウリジン ー DNA

2 [35S]メチオニン ー RNA

3 [125I]5-ヨード-2′-デオキシウリジン ー RNA

4 [α-32P]デオキシシチジン三リン酸 ー DNA

5 [3H]チミジン ー タンパク質

解答 4

主な標識化合物と使用方法

 

標識化合物 使用方法
[3H]チミジン(あるいは[14C]チミジン)、[32P]デオキシリボヌクレオチド、[125I]ヨードデオキシウリジン DNA合成量の測定
[3H]ウリジン(あるいは[14C]ウリジン)、[125I]ヨードウリジン RNA合成量の測定
[3H]ロイシン タンパク質の代謝速度の測定
[35S]メチオニン、[3H]グリシン、[3H]ヒスチジン タンパク質合成量の測定
[125I]標識化合物 ラジオイムノアッセイ(免疫活性検査)
[14C]グルコース 脳・がん細胞を標識
[α-32P]デオキシシチジン三リン酸 DNA の塩基配列の測定

1 誤 [3H]ウリジンは、RNA の標識に用いる。

2 誤 [35S]メチオニンは、タンパク質の標識に用いる。

3 誤 [125I]5-ヨード-2′-デオキシウリジン は DNA の標識に用いる。

4 正 [α-32P]デオキシシチジン三リン酸(dCTP) は、DNA の塩基配列決定に用いる。

5 誤 [3H]チミジンは、DNA の標識に用いる。

問2

治療や診断に利用される次の標識化合物と疾患又は検査項目の組み合わせのうち、適切なものはどれか。

A [90Y]抗CD20抗体 ー 悪性リンパ腫

B [51Cr]クロム酸ナトリウム ー 赤血球寿命

C [67Ga]クエン酸ガリウム ー 心筋梗塞

D [99mTc]ピロリン酸 ー 糖尿病

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 [90Y]抗CD20抗体・・・静脈内投与すると CD20 陽性細胞に集積し、90Y のβ線で細胞を破壊する。

B 正 [51Cr]クロム酸ナトリウム・・・クロム酸ナトリウムにより赤血球を標識し、循環血液量と寿命の測定が行われる。

C 誤 [67Ga]クエン酸ガリウム・・・ガリウムシンチグラフィによる悪性腫瘍診断に用いられる。

D 誤 [99mTc]ピロリン酸・・・心筋シンチグラフィによる心筋梗塞の検査に用いられる。

問3

放射線による DNA 鎖切断に関する次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか。

A 低 LET放射線の場合、1 本鎖切断よりも 2 本鎖切断の方が起こりやすい。

B 低酸素下では通常酸素下よりも 2 本鎖切断が増える。

C 細胞周期の G0 期では G2 期よりも細胞当たりの 1 本鎖切断は多い。

D ラジカルスカベンジャーは 1 本鎖切断の数を増加させる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

A 誤 電離密度が粗であるため、1 本鎖切断の方が起こりやすい。

B 誤 低酸素下では酸素効果により DNA への損傷は少なくなる。

C 誤 G2 期は DNA 合成期を経て DNA が倍量となっており、G0 期に比べ影響が大きい。

D 誤 ラジカルスカベンジャーは間接効果を低減する。

問4

放射線における希釈効果についての次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 間接作用を特徴付けるものである。

B 希釈効果とは生成されたラジカルが水分子で希釈されることである。

C 溶質として存在する酸素などの生体高分子の不活性化を指標とした場合、吸収線量が一定であれば不活性化した分子数は濃度によらず一定である。

D 溶質として存在する酸素などの生体高分子の不活性化を指標とした場合、吸収線量が一定であれば不活性化率は濃度によらず一定である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 2

A 正 間接効果の修飾要因、つまり間接効果の存在を示す根拠として説明される。

B 誤 希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶質の濃度が低い方が高い時よりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなることをいう。

C 正 間接効果で、不活化数を指標にすると、濃度によらず一定となる。

D 誤 間接効果で、不活化の割合を指標にすると、濃度の増加に伴い低下する。

問5

放射線被ばくと染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 二動原体染色体は被ばく線量評価に用いられる。

B 誘発される染色体異常の頻度は、線量率により異なる。

C 小核の形成は放射線に特有な異常である。

D 安定型の染色体異常が観察されることがある。

1 ABDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

A 正 形態の異常が観察しやすいため。

B 正 線量率が低ければ、頻度は低下する。

C 誤 小核は染色体の断片。化学物質などの他の変異原物質でも見られる。

D 正

染色体突然変異(染色体異常)

染色体突然変異では、染色体の構造に変化が生じ、その変化に伴い染色体上の遺伝子に変化が生じる。染色体突然変異は遺伝子側に注目した呼び方であるが、染色体側に注目した呼び方は染色体異常である。 染色体異常の原因は染色体の切断であり、切断の大部分は修復されるが、切断されたままであったり、誤って再結合した場合に異常が現れる。染色体異常の型には欠失、逆位、環状染色体、転座、2動原体染色体 などがある。

① 欠失・・・同一腕内の 2 ヶ所に切断が起こり中央部が欠失した腕内欠失と 1 ヶ所で切断が起こり末端部が欠失した末端欠失がある。

② 逆位・・・2 ヶ所で切断が起こり、中央部が 180°回転して再結合したもの。

③ 環状染色体・・・両腕で切断が生じ、動原体を含む中央部の両端が再結合しリング状になったもので、リングとも呼ばれる。

④ 転座・・・2 個の染色体の間で部分的に交換が起こったもの。

⑤ 2動原体染色体・・・転座の交換の仕方によっては動原体を持った2動原体染色体が生じる。主に G1 期の被ばくによりなり、G2 期の時に染色分体異常が起きる。

環状染色体や 2動原体染色体は細胞分裂に際してうまく両極に分かれることがでず、異常は比較的早期に消失する。これを不安定型の異常という。一方、欠失、逆位、転座などは 細胞分裂によっても引き継がれ長期にわたって存在し、安定型の異常(発がんしやすい異常)といわれる。放射線の生物影響に基づき被ばく線量を推定する方法をバイオドシメトリ (生物学的線量算定)と呼ぶ。染色体異常の発生は確率的であり、低線量域では統計的なバラツキが大きい。染色体異常は染色体型と染色分体型に分けられる。 DNA 合成期より前(G1期での照射)に染色体が切断される(1対の染色分体の同じ位置に異常が認められる)と M 期で染色体型、DNA 合成期より後(G2期での照射)に染色体分体が切断されると M 期で染色分体型の異常となる。

問6

放射線による細胞死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 増殖死は照射された後に分裂を経て起こる細胞死である。

B 小核形成は増殖死の原因となる。

C 照射された細胞では分裂停止とともに代謝も停止する。

D 増殖死を定量するにはコロニー形成法を用いる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 2

A 正

B 正 主要な部分の染色体が欠損すれば細胞死につながる。

C 誤 代謝が継続されるために、巨細胞などが見られる。

D 正 これに対して、間期死の定量では色素排出能などを観察する。

問7

放射線による突然変異に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A DNA 2 本鎖切断は染色体異常の原因となる。

B 放射線に特有な突然変異がある。

C G2 期に被ばくを受けると染色体型異常が生じる。

D 同一吸収線量で比較した場合、γ線の方が中性子線より誘発率は高い。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 2 本鎖切断では、誤修復が起こりやすい。

B 誤 非特異的な影響であり、他の要因で引き起こされたものと区別はつかない。

C 正 G2 期は DNA 合成期を経ており、照射を受ければ染色体分体の片側の異常となる。

D 誤 中性子線の方が影響が大きい。

問8

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 環状染色体をもつ細胞は正常に分裂する。

B 転座は安定型異常である。

C 二動原体をもつ細胞は細胞分裂により増殖する。

D 相互転座は染色体型異常である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 CとD

解答 5

染色体異常について下に記述する。

染色体突然変異(染色体異常)

染色体突然変異では、染色体の構造に変化が生じ、その変化に伴い染色体上の遺伝子に変化が生じる。染色体突然変異は遺伝子側に注目した呼び方であるが、染色体側に注目した呼び方は染色体異常である。 染色体異常の原因は染色体の切断であり、切断の大部分は修復されるが、切断されたままであったり、誤って再結合した場合に異常が現れる。染色体異常の型には欠失、逆位、環状染色体、転座、2動原体染色体 などがある。

① 欠失・・・同一腕内の 2 ヶ所に切断が起こり中央部が欠失した腕内欠失と 1 ヶ所で切断が起こり末端部が欠失した末端欠失がある。

② 逆位・・・2 ヶ所で切断が起こり、中央部が 180°回転して再結合したもの。

③ 環状染色体・・・両腕で切断が生じ、動原体を含む中央部の両端が再結合しリング状になったもので、リングとも呼ばれる。

④ 転座・・・2 個の染色体の間で部分的に交換が起こったもの。

⑤ 2動原体染色体・・・転座の交換の仕方によっては動原体を持った2動原体染色体が生じる。主に G1 期の被ばくによりなり、G2 期の時に染色分体異常が起きる。

環状染色体や 2動原体染色体は細胞分裂に際してうまく両極に分かれることがでず、異常は比較的早期に消失する。これを不安定型の異常という。一方、欠失、逆位、転座などは 細胞分裂によっても引き継がれ長期にわたって存在し、安定型の異常(発がんしやすい異常)といわれる。放射線の生物影響に基づき被ばく線量を推定する方法をバイオドシメトリ (生物学的線量算定)と呼ぶ。染色体異常の発生は確率的であり、低線量域では統計的なバラツキが大きい。染色体異常は染色体型と染色分体型に分けられる。 DNA 合成期より前(G1期での照射)に染色体が切断される(1対の染色分体の同じ位置に異常が認められる)と M 期で染色体型、DNA 合成期より後(G2期での照射)に染色体分体が切断されると M 期で染色分体型の異常となる。

A 誤 環状染色体は細胞分裂の際にうまく両極に分かれることができず、二動原体染色体とともに不安定型の異常に分類される。

B 正 上記参照

C 誤 上記参照

D 正 相互転座(転座と同じ)は安定型の異常である。したがって、細胞分裂を経て、DNA 合成が行われると、両腕に異常がある染色体型の異常となる。

問9

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 染色体異常は分裂期に照射された細胞だけに生じる。

B 間期染色体を薬剤で凝集させることで、分裂期を経なくても染色体異常を観察できる。

C 不安定型異常は発がんの原因となる。

D 抹消血中のリンパ球の染色体異常の出現頻度から被ばく線量の推定が可能である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 どの時期の照射によっても起こる・

B 正 カリクリンAという薬剤が用いられる。

C 誤 不安定型は比較的早期に消失するため、発がんの原因とはなりにくい。

D 正 生物学的線量評価(バイオドシメトリ)といい、主に二動原体染色体を観察する。

問10

細胞周期と放射線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A S 期後半は放射線抵抗である。

B どの細胞周期でも細胞致死感受性に関する OER に大きな変化はない。

C 高 LET 放射線では、X 線に比べて放射線致死感受性の細胞周期依存性が大きい。

D 放射線照射によって細胞周期は M 期と G1 期の間で停止する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 合成された相同染色体が距離的に近くにあるため、相同組換え修復の効率が高い。

B 正 OER の細胞周期依存性は小さい。

C 誤 高 LET 放射線では、X線に比べて細胞周期による影響の差は小さい。

D 誤 細胞周期の停止は、あらゆる時期に起こると考えられている。

問11

γ線急性全身被ばくによる骨髄死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白血病の異常増殖による。

B 晩発障害である。

C 治療方法として骨髄移植がある。

D 治療しなければ、4 Gy の被ばくで約半数のヒトが骨髄死で死亡する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 造血臓器が障害され白血球減少が起こり、感染、免疫能の低下が原因となる。

B 誤 リンパ球は被ばくした直後から減少する。

C 正 造血幹細胞移植として骨髄移植の他、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植がある。

D 正 ヒトの LD(50) は 3 ~ 5 Gy、LD(100) は 7 ~ 10 Gy とされている。

問12

γ線全身被ばくによる腸管への影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 腺窩細胞(クリプト細胞)は絨毛上皮細胞よりも放射線感受性が高い。

B 腺窩細胞(クリプト細胞)がすべて死に至っても、絨毛上皮細胞が生き残れば腸死に至ることはない。

C 一般に腸死は被ばく後 2 日以内に起こる。

D 脱水は腸死の直接の原因の一つである。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 正 クリプト細胞は幹細胞で、吸収上皮細胞を産生する。幹細胞の感受性が高い。

B 誤 クリプト細胞の死により吸収上皮細胞の供給が絶たれる。現在ある吸収上皮細胞の寿命が尽きると、粘膜上皮の剥離、萎縮、潰瘍が発生する。

C 誤 2 週間程度である。

D 正 体液バランスの失調は死亡原因となる。

問13

放射性核種と体内での集積部位の関係として、正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 32P ー 肝臓

B 60Co ー 肺

C 90Sr ー 骨

D 137Cs ー 全身

E 226Ra ー 骨

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACDのみ 4 BCEのみ 5 CDEのみ

解答 5 放射性核種の臓器親和性を下記にまとめた。

放射性核種の臓器親和性

 

核種 臓器親和性
32P , 45Ca , 65Zn , 90Sr , 226Ra , 232Th , 238U , 239Pu , 241Am
40K , 137Cs 筋肉
222Rn , 232Th , 238U , 239Pu
53Fe , 59Fe 骨髄
3H , 14C , 24Na , 40K , 137Cs 全身
59Fe , 60Co , 65Zn , 232Th , 239Pu 肝臓
131I 甲状腺
59Fe 脾臓

問14

γ線急性全身被ばくによる中枢神経死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中枢神経死は腸死よりも小さい線量で起こる。

B 被ばく線量が大きくなると中枢神経死に至るまでの期間は短くなる。

C 血管障害は中枢神経死の直接の原因の一つである。

D 血液脳関門の障害は中枢神経死では起きない。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 誤 線量の小さい頃に、骨髄死ー腸死ー中枢神経死である。

B 正 一般に、被ばく線量の増加は潜伏期間を短縮させる。

C 正 神経細胞自体の細胞死は起こらず、血管系の障害が死亡の大きな原因となる。

D 誤 神経細胞自体の細胞死は起こらず、血管系の障害が死亡の大きな原因となる。

問15

ベルゴニー・トリボンドーの法則に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 形態及び機能において未分化な細胞ほど放射線感受性は高い。

B 将来の分裂回数が少ない細胞ほど放射線感受性は高い。

C 細胞分裂頻度の高い細胞ほど放射線感受性は低い。

D ベルゴニー・トリボンドーの法則はリンパ球には当てはまらない。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3 ベルゴニー・トリボンドーの法則を下記に記述する。

ベルゴニー・トリボンドーの法則

ベルゴニーとトリボンドーは「放射線感受性は細胞分裂の頻度の高いものほど、将来行う細胞分裂の数が多いものほど、形態・機能が未分化なものほど高い」という 3 点からなる放射線感受性についてのベルゴニー・トリボンドーの法則をまとめた。 成人において細胞分裂の頻度が高いのは細胞再生系であり、造血臓器(骨髄)、小腸、皮膚、水晶体、精巣(睾丸)などがこれに属する。さらに、細胞再生系には芽球(骨髄)や精原細胞(精巣)といった未分化な細胞も存在し、放射線感受性は高い。また、小児 あるいは胎児は活発な成長・発達をしており、将来行う細胞分裂の数も多く、細胞再生系に限らず全体の放射線感受性が高い。

問16

2 Gy のγ線急性全身被ばく後の末梢血の変化に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 赤血球の減少率は血小板に比べ小さい。

B 赤血球の減少は顆粒球の減少よりも早く認められる。

C リンパ球の減少は血球の中で最も遅く起こる。

D 顆粒球は被ばく後数日の間に一過性に増加する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3 末梢血の変化に関する記述を下記に示す。

造血臓器は、赤血球、白血球などの血液細胞(血球)を産生する臓器であり、骨髄、リンパ球がこれにあたる。胎児期には、肝臓、脾臓も造血機能を持つ。骨髄は造血機能を持つ赤色骨髄と脂肪変性して造血機能を失った 白色骨髄(黄色骨髄)に分けられる。小児期において、ほとんど全ての骨髄が赤色骨髄であるが、年齢が増大すると白色骨髄の割合が大きくなる。赤色骨髄が 0.5 Gy 程度被ばくすると、造血機能の低下が起こり 血球の供給が止まる。このため、造血臓器の放射線障害は末梢血中の血球数の変化によって検出できる。しかし一方では、放射線被ばくによりリンパ球は血球自体の細胞死が引き起こされるし、他の血球においても 寿命が尽きたものは死んで抹消血中から除かれていく。したがって、放射線影響による血球数の変化は、造血臓器と抹消血球の両方について供給と減少の関係を総合してとらえることが重要である。赤血球および血小板は核を持たないが、 白血球には核がある。白血球は起源や形態から、リンパ球と顆粒球に分類され、さらに顆粒球は、酸性や塩基性の染色液によく染まるか否かおよび形態の観点から、好酸球、好中球、好塩基球および単球に分類される。白血球においては、 リンパ球を除き、顆粒球の種類による放射線影響の違いは特にない

A 正 図に示すように赤血球の減少率は血小板に比べ小さい。

B 誤

C 誤 リンパ球の減少は最も早く見られる。

D 正 貯留プールからの一過性の放出による初期白血球増加が見られることがある。

問17

原爆被爆者の疫学調査において、放射線発がんの過剰絶対リスクが最も大きいものはどれか。

1 白血病

2 食道がん

3 胃がん

4 肝がん

5 甲状腺がん

解答 3

絶対リスクは放射線により影響が増加した総数(または率)をいい、相対リスクはコントロール群と比較して被ばく群のリスクが何倍になっているかを表すものである。がんの過剰症例数は、胃、乳房、直腸、甲状腺の順に多いとの寿命調査(LSS)の報告がある。

絶対リスク予測モデル

線量あたりどれだけ影響が発生するかという評価法。自然発生が少ない白血病が適合。絶対リスクの臓器間の大小は単位線量当たりの発生数として表すことができる。年齢にかかわらず一定で、年齢が関わるのは相対リスク。

相対リスク予測モデル

線量あたり自然発生率の何倍の影響が発生するという評価法。自然発生が多い固形がんが適用。相対リスクの大小は自然発生が多いものは小さくなり、自然発生が少ないものは大きくなる。 日本人では白血病の自然発生は少なく、胃がんは多い。2012年に発表された寿命調査第14報では、全固形がんの過剰相対リスクは 1 Gy あたり 0.42 とされている。したがって相対リスクは 1.42 となる。

補足 相対リスクは自然発生の何倍かを考えており、過剰相対リスクは自然発生分の 1 を引いた値である。したがって相対リスクと過剰相対リスクの差は常に 1 である。また相対リスクは白血病が最も高くなる。 相対リスクの大小関係は自然発生が多いものは小さく、少ないものは大きい。

 

原爆被爆者の疫学調査

① 発がんの増加が認められる臓器・・・胃、肺、白血病、肝、乳房。認められていない臓器・・・膵、直腸、胆、子宮。前立腺、腎、喉頭。

② ヒトでは遺伝的影響の増加は有意ではない。

③ 組織荷重係数の大きさはガンの感受性を表している。

④ 組織荷重係数は低線量被ばくによる確率的影響を評価する。

⑤ 器官形成期の被ばくの影響で小頭症が胎児奇形で唯一確認されている。その他に精神発達遅滞、低身長もあげられる。

問18

原爆被爆者における発がんの潜伏期間に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 白血病では被ばく時の年齢が若いほど短い。

B 白血病では被ばく線量が大きいほど短い。

C 肺がんでは被ばく時の年齢が若いほど短い。

D 肺がんでは被ばく線量が大きいほど短い。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 2 放射線発がんの潜伏期間については、白血病とその他の固形がんとでは様相が全く異なる。肺がん(固形がん)の発現分布は、相対リスク予測モデルに良く従い、発がんの好発年齢(壮年期、老年期)における発症が多い。このため、被ばく年齢が若ければ潜伏期間が 長くなるし、被ばく線量が大きくても好発年齢まで発症が遅れる。一方、白血病は絶対リスク予測モデルに発現分布は従い、最小潜伏期間は 2 年、発症のピークは 7 ~ 8 年とされている。

原爆被爆者の疫学調査

① 発がんの増加が認められる臓器・・・胃、肺、白血病、肝、乳房。認められていない臓器・・・膵、直腸、胆、子宮。前立腺、腎、喉頭。

② ヒトでは遺伝的影響の増加は有意ではない。

③ 組織荷重係数の大きさはガンの感受性を表している。

④ 組織荷重係数は低線量被ばくによる確率的影響を評価する。

⑤ 器官形成期の被ばくの影響で小頭症が胎児奇形で唯一確認されている。その他に精神発達遅滞、低身長もあげられる。

白血病と固形ガンの特徴

白血病

① 造血細胞由来の腫瘍

② 原爆被ばく後最小潜伏期間 2年、ピーク 6 ~ 7年

③ 白血病では潜伏期間は被ばく線量が大きい程短い

④ 被ばく時の年齢が若い程、潜伏期間が短い

⑤ LQ(直線-2次曲線)モデルがよく適合する・・・低LET放射線の場合、被ばく線量と不安定型染色体異常の頻度の関係はLQモデルに当てはまる。

⑥ 絶対リスク予測モデルが適合

固形ガン

① 最少潜伏期間は 10 年

② 潜伏期間は年齢によって複雑

③ 若年被ばくの方が潜伏期間が短い

④ 直線モデル(Lモデル)が適合・・・X線による線量の突然変異頻度と吸収線量との関係は直線的とされている。

⑤ 相対リスク予測モデルが適合

問19

次の放射線による影響のうち、確定的影響として正しいものの組み合わせはどれか。

A 胎児被ばくによる発がん

B 胎児被ばくによる奇形

C 白内障

D 皮膚潰瘍

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 5

A 誤 発がんは確率的影響である。

B 正 しきい線量は 0.1 Gy。

C 正 しきい線量は 0.5 Gy。

D 正 しきい線量は 10 Gy。

問20

我が国における自然放射線による年間実効線量の最近の評価に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 年間実効線量は約 2.1 mSv と推定されている。

B 世界平均に比べ我が国ではラドン・トロンによる内部被ばく線量が大きい。

C 内部被ばくは主に鉛 210、ポロニウム 210 によるとされている。

D 大地からの放射線による被ばく線量は宇宙線による被ばく線量の約 3 倍である。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 主として魚に含まれる 210Po からの寄与分の評価が増加したことにより、2.1 mSv/年 とされた。

B 誤 ラドン・トロンの寄与が低いのは、木造家屋が多いことによる。

C 正 主として魚に含まれる 210Po からの寄与分の評価とされている。

D 誤 大地からの放射線と宇宙線による被ばくは約 0.3 mSv/年 と同程度である。

問21

X線による体内被ばくの影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 小頭症のしきい線量は 10 mGy 程度である。

B 精神遅滞が生じやすいのは妊娠 25 週目以降である。

C 精神遅滞のしきい線量は 10 mGy 程度である。

D 致死感受性が最も高いものは着床前期である。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4 胎児期の放射線影響を下表に示す。

胎児期の放射線影響

 

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形 0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延 0.5 ~ 1.0
全期間 発がんと遺伝的影響

A 誤 小頭症のは奇形の一つであり、しきい線量は 150 mGy。

B 誤 精神遅滞が生じやすいのは受精 8 週 ~ 受精 25 週である。

C 誤 精神遅滞のしきい線量は 200 ~ 400 mGy 程度である。

D 正

問22

X線による体内被ばくの影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 奇形が生じやすい時期は、受精後 1 週間までの期間である。

B 発がんリスクは、小児と比較して非常に高い。

C 器官形成期に胎児が 0.5 Gy 被ばくすると奇形発生のリスクが増す。

D 遺伝的影響も想定されている。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5 胎児期の放射線影響を下表に示す。

胎児期の放射線影響

 

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形 0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延 0.5 ~ 1.0
全期間 発がんと遺伝的影響

A 誤 奇形は器官形成期(受精 9 日 ~ 受精 8 週)に生じやすい。

B 誤 体内被ばくと小児期の被ばくのリスクは同程度である。

C 正 奇形のしきい線量は 150 mGy。

D 正 遺伝的影響も発がんも想定されている。

問23

遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 倍加線量の逆数は単位線量当たりの突然変異の過剰相対リスクを表す。

B 遺伝的影響のしきい線量は 1 Gy 程度とされている。

C 放射線被ばくとは無関係に生じることがある。

D 遺伝的影響には線量率効果が見られない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 倍加線量は自然発生と同じだけの影響を起こすのに必要な線量であり、倍加線量が大きいということは、一定の影響を起こすために大きな線量が必要であるということを示すので、感受性が低いことを意味する。したがって、倍加線量が大きいほど遺伝的影響は起こりにくいということを意味する。倍加線量の逆数は単位線量あたりの相対突然変異リスクを表す。

B 誤 遺伝的影響のしきい線量はない。

C 正 自然発生の遺伝的影響がある。

D 誤 精原細胞、卵細胞に照射したマウスの実験で線量率効果は確認されている。

問24

放射線による遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 遺伝的影響の重篤度は線量に依存しない。

B 原爆被爆者の調査では見つかっていない。

C 遺伝的影響ののリスク推定では、動物実験のデータも利用されている。

D 遺伝的影響は倍加線量が大きいほど起こりやすい。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

A 正 確率的影響の重篤度は線量に依存しないとされている。

B 正 マウス等では確認されているが、ヒト(原爆被爆者)では確認されていない。

C 正 ヒトでは確認されていないため、倍加線量法で間接的に求める際に用いる。

D 誤 倍加線量は自然発生と同じだけの影響を起こすのに必要な線量であり、倍加線量が大きいということは、一定の影響を起こすために大きな線量が必要であるということを示すので、感受性が低いことを意味する。したがって、倍加線量が大きいほど遺伝的影響は起こりにくいということを意味する。

問25

低 LET 放射線と比較した高 LET 放射線の細胞致死作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A ラジカルスカベンジャーによる防護効果が小さい。

B 間接作用の寄与が大きい。

C RBE が大きい。

D 線量率効果が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2 低LET放射線では間接作用の寄与が大きいが、高LET放射線では間接作用の寄与が小さくなる。

間接作用の修飾要因

① 希釈効果

希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶質の濃度が低い方が高い時よりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなることをいう。主に酵素濃度が減少する。 ① 溶質として存在する酵素などの生体高分子数の不活化を指揮とした場合吸収線量が一定であれば不活性化した分子数は濃度によらず一定 → 同じ条件での不活性化率は濃度の増加に伴い低下する。

② 酸素効果

組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることを酸素効果という。酸素存在下での放射線効果は、無酸素下での放射線効果に比べて大きい。これは酸素分子が電子親和性が大きく、 電子を取り込んでスーパーオキシドという反応性に富むラジカルを産生するためである。また、照射後に酸素濃度を高めたとしても酸素効果は見られない。同じ生物学的効果を 得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比を酸素増感比(OER)という。

OER = (無酸素下である効果を得るのに必要な線量)/(酸素存在下で同じ効果を得るのに必要な線量)

OERは酸素分圧の上昇につれて大きくなるが、酸素分圧が 20 mmHg を越えるとほぼ一定となる。低LET(線エネルギー付与)放射線ではOERは 2.5 ~ 3 程度であるが、 高LET放射線では酸素効果は小さい。

③ 保護効果

ラジカルと反応しやすい物質が照射野に存在すれば、生じたラジカルは除去されるので放射線の効果は減少する。これを保護効果といい、このような働きを持つ物質を放射線防護剤あるいは単に防護剤という。 SH化合物などのラジカルスカベンジャーはその一例である。SH基にはシステイン、システアミン、グルタチオン、シスタミンがある。またOH基も還元作用があることから、 アルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなども同様に保護効果を持つ。

④ 温度効果

温度が低下した状態では放射線効果は減少する。これを温度効果という。ラジカルの拡散が低温により妨げられるためだと考えられている。

A 正 高 LET 放射線は電離密度が高く、生じたラジカルの再結合が起こる。このため、間接作用の寄与は小さくなる。

B 誤 低LET放射線では間接作用の寄与が大きいが、高LET放射線では間接作用の寄与が小さくなる。

C 正

D 誤 線量率効果を含め、照射条件による修飾は一般に小さい。

問26

次の放射線のうち、高 LET 放射線に分類されるものの組み合わせはどれか。

A γ線

B β線

C 中性子線

D 炭素イオン線

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5 低 LET 放射線:γ線、β線。高 LET 放射線:中性子線、炭素イオン線

問27

培養細胞の致死効果を指標とした RBE に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 細胞の種類によって値が異なる。

B 線量率によって値が変化する。

C 酸素濃度の違いによる効果の違いを表す。

D LET の増加とともに増加し続ける。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1 RBE(生物学的効果比)についての記述を下記に示す。

RBE(生物学的効果比)

放射線の線質の違い、すなわちLETの違いにより影響の違いを表す指標として、生物学的効果比(RBE)がある。RBEは酸素分圧、中性子のエネルギー、線量率効果、細胞の種類によって変化する。一般に高LET放射線の方がRBEは大きいが、LETが100keV/μmを越えるあたりからRBEはかえって減少する。これは overkill と呼ばれるが、細胞を殺すために必要なエネルギー以上の エネルギーが無駄になっているからと考えられている。

問28

炭素イオン線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A γ線よりも細胞致死効果を指標とした RBE が大きい。

B 停止する付近で LET が最大となる。

C 治療に利用する場合、体内よりも体表面のがんに有効である。

D γ線よりも細胞致死効果の OER が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 炭素イオン線は重荷電粒子であり、高 LET 放射線である。

B 正 ブラッグピークを作る。

C 誤 ブラッグピークを作るため、深部治療に適している。

D 誤 酸素効果は間接効果であるため、高 LET 放射線では効果が小さい。

問29

各種放射線による外部被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A α線は身体の深部にまで到達する。

B β線は骨髄障害に比べ皮膚障害を起こしやすい。

C γ線は体内でブラッグピークを形成する。

D 熱中性子は骨髄障害に比べ皮膚障害を起こしやすい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 α線は皮膚の表皮で止まる。

B 正 β線の透過力も大きくなく、表層部にある皮膚への影響が大きい。

C 誤 ブラッグピークは荷電粒子で見られる現象である。

D 正 熱中性子の透過力は小さい。

問30

放射線荷重係数(ICRP 2007 年勧告)に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 光子では 1 である。

B α粒子と重イオンでは 20 である。

C 陽子では 5 である。

D 中性子では 25 である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1 放射線荷重係数 ICRP 2007 を下表に示す。

放射線荷重係数 ICRP 2007

 光子  放射線荷重係数
 光子(X線、γ線)  1
 電子、β線、μ粒子  1
 中性子(エネルギーの連続関数で設定)  2.5 ~ 20
 陽子線  2
 α粒子、核分裂片、重原子  20

下の表に詳しく示す。

 

急性障害・晩発障害

X線やγ線による高線量急性被ばくでは、全身被ばくする場合と局所被ばくする場合で様相が異なる。全身被ばくでは致死が問題となり、局所被ばくでは高線量を被ばくしても致死とはならず、被ばくした組織や臓器の障害が問題となることが多い。組織や臓器の放射線障害では、被ばくした直後から数週間以内に起こる障害を急性障害と呼び、 数ヶ月から数年後以降に起こる障害を晩期障害と呼ぶ。臓器にはそれぞれ特徴的な晩期障害が存在する。脳では脳壊死、脊髄神経では脊髄神経麻痺、腸管では穿孔・狭窄が晩期障害として重要である。これらの晩期障害は 主に血管の閉塞が原因であると考えられる。ただし、全ての晩期障害が血管の閉塞ではなく、肺の晩期障害として重要である放射線肺線維症では肺胞細胞の障害などが原因として考えられている。消化管に関しては、 放射線障害による小腸上皮の喪失を原因とする体液漏出や感染が原因となる。中枢神経障害による死亡は被ばく線量が 50 ~ 100 Gy を越える場合に起こり、脳浮腫による頭蓋内圧亢進が主な原因の1つと考えられている。LD 50/60 程度以上の線量を 全身被ばくした場合には肺では 30 日以内に放射線肺炎が生じる。特に肺でウイルス感染が高頻度に生じる点に注意が必要である。

補足

① 血管の閉塞では主に放射線脊髄炎(脊髄神経麻痺)、消化管穿孔、心筋症が起こる。② 肺、特に全肺照射の場合 10 Gy を下回る線量でも重篤な影響が現れる。 ③ 放射線肺炎のしきい線量は 6 ~ 8 Gy。肺は肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の放射線感受性が高く、フリーラジカル 産生、透過性亢進、サイトカインの誘導を経て、間質の浮腫が原因である。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験・解答 放射化学7

問1

ある放射性同位元素 3.7 GBq は 5 年後に 37 MBq に減衰した。この 37 MBq が 3.7 kBq に減衰するのは、おおよそ何年後か。最も近い値は、次のうちどれか。

1 5

2 10

3 20

4 40

5 50

解答 2

5 年後で 3.7 GBq が 37 MBq に減衰する。すなわち、5 年後で 1/100 になる。37 MBq が 3.7 kBq に減衰するとは、1/10000 になることを意味している。37 MBq が 5 年間で 1/100 に減衰し、次の 5 年間でもその時点から 1/100 に減衰する。すなわち、10 年間で 1/100 × 1/100 = 1/10000 となる。

問2

純度 100% のトリチウムガス 3(H2) が、アンプルの中に 1.00 気圧で封入されている。これが 24.6 年間経過すると、内部の圧力は何気圧になるか。ただしトリチウムは半減期 12.3 年で β- 壊変し、アンプル中のトリチウムの化学形は常に 3(H2) とする。

1 0.75

2 1.00

3 1.25

4 1.50

5 1.75

解答 5

トリチウム 3H は半減期 12.3 年で β- 壊変して 3He になる。トリチウムは 2 原子で安定な 1 分子の気体を構成するが、ヘリウムは希ガスであるため 1 原子で安定な 1 分子の気体を構成する。そのため、壊変したトリチウム分子 3(H2) の 2 倍の個数の気体分子が生成することになり、密閉容器中では内部の圧力を上昇させる。24.6 年間は 2 半減期に相当するため、トリチウム原子の 75 % が壊変する。よって、求める内部の圧力は、壊変せず残った 25 % の トリチウム分子 3(H2) の分圧と壊変により生成した 3He の分圧との和であるので、1 気圧との和であるので、1 気圧 × (25% + 75% × 2) = 1.75 気圧となる。

問3

70 MBq の 201Tl(半減期 73 時間 = 2.6 × 10^5 秒)の質量[g]に最も近い値は、次のうちどれか。

1 4.4 × 10^(-9)

2 8.7 × 10^(-9)

3 1.3 × 10^(-8)

4 2.7 × 10^(-8)

5 5.2 × 10^(-8)

解答 2

半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は、A = (0.693N)/A と表される。また、原子数 N は質量数 M、重量 W グラムと以下の関係がある。N = (W/M) × 6.02 × 10^23 以上の 2 式より、重量 W グラムは以下のように表される。W = (ATM)/(0.693×6.02×10^23) それぞれい数値を代入すると、W = (70×10^6×2.6×10^5×201)/(0.693×6.02×10^23) = 8.7 × 10^(-9) となる。

問4

比放射能が 50 kBq/mg の[14C]フェノール(C6H5OH、分子量 94)を臭素化して、[14C]トリブロモフェノール(C6H2(OH)Br3、分子量 331)を得た。この[14C]トリブロモフェノールの比放射能[kBq/mg]に最も近い値は、次のうちどれか。

1 14

2 23

3 50

4 120

5 170

解答 1

比放射能とは、放射性核種の属する元素の単位質量あたりの放射能のことである。また、化学反応前後で放射能は等しい。[14C]フェノールの質量を m[mg] とおくと、求める[14C]トリブロモフェノールの比放射能 A は以下のようになる。50・m = A・m × (331/94)。A = 50 × (94/331) ≒ 14 となる。

問5

親核種         娘核種

A 57Ni(1.5日) 57Co(272日)

B 68Ge(271日) 68Ga(68分)

C 87Y(79.8時間) 87mSr(2.8時間)

D 140Ba(12.8日) 140La(1.7日)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

親核種の半減期が娘核種の半減期よりも長いときに放射平衡が成立し、親核種の半減期が娘核種の半減期よりも短いときは放射平衡が成立しない。よって A 以外は放射平衡は成立する。

問6

次の核反応のうち、アルカリ金属元素の同位体を生成するのはどれか。

A 10B(n.α)

B 23Na(p,pn)

C 40Ar(α,p)

D 84Kr(d,2n)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

生成する核種を下に示す。また周期表も同時に覚えておかなければならない。

A 10B(n.α)7Li

B 23Na(p,pn)22Na

C 40Ar(α,p)43K

D 84Kr(d,2n)84Rb

問7

23Na を 1.0 × 10^(-6) mol 含む試料を、原子炉で熱中性子フルエンス率 1.0 × 10^12 cm^(-2)・s^(-1) で照射したとき、生成する 24Na の飽和放射能[Bq]に最も近い値は、次のうちどれか。ただし、23Na の熱中性子捕獲断面積γは 0.53b(バーン)とする。

1 3.2 × 10^5

2 5.3 × 10^6

3 3.2 × 10^7

4 5.3 × 10^8

5 3.2 × 10^9

解答 1

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 A は、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積 σ、ターゲット核の原子数 N、生成核の半減期 T、照射時間 t、とすると次のような関係が成り立つ。A = Nfσ[1-(1/2)^(t/T)]。飽和放射能とは、無限時間の照射を行なった場合の放射能である。よって、前の式の [1-(1/2)^(t/T)] の部分は 1 となる。1 mol は 6 × 10^23 個であるので、1.0 × 10^(-6) mol noscript 23Na の 原子数は 6 × 10^23 × 1.0 × 10^(-6) 個 = 6 × 10^17 個である。また、1b(バーン)は、10^(-24) cm2 である。各数値を代入すると、A = 1.0 × 10^12 × 0.53 × 10^(-24) × 6 × 10^17 = 3.2 × 10^5 となる。

問8

ある短寿命核種(半減期T分)を加速器で製造するのに、2T 分間照射して 2T 分間冷却したときの放射能は、T 分間照射して T 分間冷却したときの放射能の何倍か。

1 3/4

2 1

3 4/3

4 3/2

5 5/3

解答 1

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 A は、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積 σ、ターゲット核の原子数 N、生成核の半減期 T、照射時間 t とは次のような関係が成り立つ。A = Nfσ[1-(1/2)^(t/T)]。[1-(1/2)^(t/T)] の部分を、飽和係数と呼ぶ。生成する放射能は飽和係数に比例するので、2T 分間の照射で生成する放射能は、[1-(1/2)^(t/T)] = [1-(1/2)^(2T/t)] = 1 – 1/4 = 3/4 となり、2T 分間の冷却は、 2 半減期の経過を意味するのでこの 1/4、すなわち 3/16 となる。一方、T 分間の照射で生成する放射能は、[1-(1/2)^(t/T)] = 1 – (1/2)^(T/T) = 1 – 1/2 = 1/2 となり、T 分間の冷却は 1 半減期の経過を意味するので、この 1/2、すなわち、1/4 となる。よって、(3/16)/(1/4) = 3/4 となる。

 

問9

ある物質 A を 40 分間中性子照射したところ、半減期 40 分の放射性核種 B が 5.0 MBq 生成した。勝者条件を変えずに同じ量の A を 20 分間又は 120 分間中性子照射したときに生成する B の放射能の値[MBq]として正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

20 分間 120 分間

1 1.8 6.1

2 2.5 7.5

3 2.5 8.8

4 2.9 8.8

5 3.8 15

解答 4

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 X は、ターゲット核の数 n、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積 σ、生成核の半減期 T、照射時間 t と次のような関係が成り立つ。A = nfσ[1-(1/2)^(t/T)]。40 分間中性子照射で、半減期 40 分の放射性核種が 5.0 MBq 生成したので、5.0 × 10^6 = A = nfσ[1-(1/2)^(40/40)]。5.0 × 10^6 = (1/2)nfσ。nfσ = 1 × 10^7。よって、20 分間の同じ照射条件で生成する半減期 40 分の放射性核種の 放射能 X(20) は、X(20) = 1 × 10^7 × [1 – (1/2)^(20/40)] = 1 × 10^7 × [1 – (1/√2)] = 2.9 × 10^6 Bq となる。また、120 分間の同じ照射条件で生成する半減期 40 分の放射性核種の放射能 X(120) は、X(120) = 1 × 10^7 × [1 – (1/2)^(120/40)] = 1 × 10^7 × [1 – (1/8)] = 8.8 × 10^6 Bq となる。

問10

[133Ba]BaCl2 の 0.1 mol/L 水溶液がある。これに次の溶液を加えると放射性の沈殿が生成するのはどれか。

A 0.1 mol/L 硫酸

B 0.1 mol/L 炭酸ナトリウム水溶液

C 0.1 mol/L 硫化ナトリウム水溶液

D 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 BaCl2 + H2SO4 → 2HCl + BaSO4 ↓ の化学反応が起き、白色の硫酸バリウムが沈殿する。

B 正 BaCl2 + Na2CO3 → 2NaCl + BaCO3 ↓ の化学反応が起き、白色の炭酸バリウムが沈殿する。

C 誤 バリウムは、酸性でもアルカリ性でも硫化物沈殿を生成しない。

D 誤 バリウムは、、酸性でもアルカリ性でも水酸化物沈殿を生成しない。

問11

放射性ヨウ素に関する次の記述のうち、適切なものの組み合わせはどれか。

A 123I は核医学診断に用いられる。

B 125I の測定に NaI(Tl)シンチレーション検出器が用いられている。

C 128I はラジオイムノアッセイに用いられている。

D 129I の定量に加速器質量分析法(AMS)が用いられている。

E 131I はポジトロン線源に用いられている。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACEのみ 4 BDEのみ 5 CDEのみ

解答 2

A 正 123I は、半減期 12.3 時間と短いこと、EC 壊変核種であって β-線を放出しないことから、人体への被ばく量が小さい。また、放出する 159 keV のγ線は検出器に対する感度が高い。そのため、脳血流、心筋、甲状腺新地グラフィーなどの核医学診断に用いられている。

B 正 125I は EC 壊変して 125Te になる。その際に、35.5 keV のγ線を 6.7 % の割合で放出する。低エネルギーγ線のみを放出する核種のため、125I による表面汚染は薄窓式 NaI(Tl) サーベイメータで検出する。

C 誤 ラジオイムノアッセイとは、抗体ー抗原反応を利用した抗原の定量法である。抗原の標識には主に、半減期が 60 日の放射性ヨウ素である 125I を用いるのが一般的であり、半減期が 25 分の 128I は用いられない。

D 正 129I は半減期 1600 万年の核種である。加速器質量分析法(AMS)とは、壊変による放射線を計測する手法とは異なり、同重体などを除去した特定の原子のみを直接計数する手法である。なお、AMS の利用により、14C を測定する年代測定法では極微量の試料から高精度の年代決定を行うことが可能になった。

E 誤 131I は陽電子放出核種でないため、ポジトロン線源に用いられることはない。131I はβ-壊変核種であり多くの種類のγ線を放出する。そのため、甲状腺疾患の診断および治療に用いられる。

問12

次の放射性核種のうち、半減期が 3 倍以上異なるものはどれか。

A 11C と 13N

B 99Mo と 99mTc

C 60Co と 137Cs

D 125I と 131I

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 11C:20 分、13N:10 分

B 正 99Mo:66 時間、99mTc:6 時間

C 正 60Co:5.3 年、137Cs:30 年

D 正 125I:60 日、131I:8 日

問13

次のうち、放射性核種のみの組み合わせはどれか。

1 11C、12C、14C

2 13N、14N、15N

3 30P、32P、33P

4 35Cl、36Cl、37Cl

5 40Ca、42Ca、45Ca

解答 3

1 誤 安定同位体の核種は 12C、13C である。

2 誤 安定同位体の核種は 14N、15N である。

3 正 安定同位体の核種は 31P のみである。

4 誤 安定同位体の核種は 35Cl、37Cl である。

5 誤 安定同位体の核種は 40Ca、42Ca、43Ca、44Ca である。

問14

3H、14C、32P、35S、45Ca について半減期の短い順に正しく並んでいるものは、次のうちどれか。

1 35S < 32P < 14C < 3H < 45Ca

2 35S < 32P < 45Ca < 3H < 14C

3 32P < 35S < 14C < 45Ca < 3H

4 45Ca < 32P < 35S < 3H < 14C

5 32P < 35S < 45Ca < 3H < 14C

解答 5

少なくとも下に記載してある放射性同位体特性表は暗記しておくと良い。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
36Cl 3.0×10^5y 0.71  ー β+ , β- , EC  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
55Fe EC
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
63Ni 100y 0.067  ー β-  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
134Cs 2.1y 2.06  ー β-  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問15

それぞれの放射性核種と壊変系列の組み合わせのうち、誤っているものはどれか。

1 232Th ー トリウム系列

2 224Ra ー ウラン系列

3 208Tl ー トリウム系列

4 234U ー ウラン系列

5 235U ー アクチニウム系列

解答 2 下記に放射性連鎖崩壊を示す。

放射性連鎖崩壊(一次放射性崩壊)

トリウム系列(4n)・・・232Th – 1.4×10^10 y – 208Pb
ネプチニウム系列(4n+1)・・・237Np – 2.1×10^6 y – 209Bi
ウラン系列(4n+2)・・・238U – 4.5×10^9 y – 206Pb
アクチニウム(4n+3)・・・235U – 7.1×10^8 y – 207Pb

原子番号 82 以上の Pb 以上の元素には全て天然の放射性核種が存在し、壊変系列を作る。トリウム系列、ネプチニウム系列、ウラン系列、アクチニウム系列のいずれかに属することになるが、壊変系列の中で質量数が変化する壊変は、アルファ壊変のみである。

問16

次のうち、宇宙線により生成し、地上でも観測される放射性核種のみの組み合わせはどれか。

1 3H、7Be、14C

2 11C、13N、15O

3 19F、23Na、59Co

4 40K、87Rb、137Cs

5 222Rn、226Ra、238U

解答 1

宇宙線や天然の放射性核種からの放射線による核反応で生成する放射性同位体元素を天然誘導放射性核種と呼ぶ。宇宙線が大気上層で大気中の酸素、窒素、アルゴンなどに当たり核反応や破砕反応によって生成する核種としては、3H、7Be、10B、14C、22Na、32S、32P、33P などがある。

問17

次の放射性核種の壊変形式と壊変で放出されるγ線の有無について、正しいものの組み合わせはどれか。

核種 壊変形式 γ線放出の有無

A 13N β+ 無

B 32P β- 有

C 63Ni EC 無

D 137mBa IT 有

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2 放射性同位体特性表を下に示す。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
36Cl 3.0×10^5y 0.71  ー β+ , β- , EC  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
55Fe EC
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
63Ni 100y 0.067  ー β-  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
134Cs 2.1y 2.06  ー β-  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問18

次の操作のうち、放射性気体が発生するのはどれか。

A Ba(14CO3)に塩酸を加える。

B Fe(35S)に塩酸を加える。

C Na2(35SO4)に水酸化カリウム水溶液を加える。

D Cu(36Cl2)にアンモニア水を加える。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

A 正 Ba(14CO3)に塩酸を加える。・・・Ba(14CO2) + 2HCl → BaCl2 + 14CO2↑ + H2O となり、14C を含む CO2 気体が発生する。

B 正 Fe(35S)に塩酸を加える。・・・Fe(35S) + 2HCl → FeCl2 + H2(35S)↑ となり、35S を含む H2(35S) 気体が発生する。

C 誤 Na2(35SO4)に水酸化カリウム水溶液を加える。・・・Na2(35SO4) + 2KOH → 2K2(35SO4) + 2NaOH という反応になり、放射性物質を含む気体は発生しない。

D 誤 Cu(36Cl2)にアンモニア水を加える。・・・Cu(36Cl2) + 2NH3 → Cu(OH)2 + 2NH4(36Cl) という反応になり、放射性物質を含む気体は発生しない。

問19

ビーカーに入った各 0.1 mol/L 水溶液に、よく磨いた金属板を浸して静置したときに、金属板に放射性物質が析出するのはどれか。

A [65Zn]ZnSO4 +Cu板

B [64Cu]CuSO4 +Fe板

C [110mAg]AgNO3 +Cu板

D [210Pb]Pb(CH3COO)2 +Zn板

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 4

金属が陽イオンになろうとする性質のことをイオン化傾向と呼ぶ。イオン化傾向の小さい元素は、イオンではなく金属の方が安定である。よって、水溶液中の金属元素よりも金属板の元素のイオン化傾向が高いときに、金属板に水溶液中の金属元素が析出する。イオン化傾向は次の通りである。 K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > H > Cu > Hg > Ag > Pt >Au。

問20

次の実験操作のうち、空気中の放射性濃度の上昇を招くおそれのあるものの組み合わせはどれか。

A OH 基が 3H で標識されたエタノールに米粒大のナトリウムを入れた。

B 14C で標識された炭酸カルシウム粒に濃水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。

C 放射性粉末試料を実験用容器に分取した。

D 144Ce(4+) の水溶液に 60Co 密封線源からのγ線を照射した。

E 125I(-)の弱アルカリ性水溶液に塩酸を加えて酸性とした。

1 ABCのみ 2 ACEのみ 3 ADEのみ 4 BCDのみ 5 BDEのみ

解答 2

A 正 2(C2H5O(3H)) + 2Na → 2(C2H5ONa) + 3(H2)↑ の化学反応がおき、3(H2)ガスが発生する。

B 誤 炭酸カルシウムは、塩酸などの強酸と反応して二酸化炭素を発生するが、水酸化ナトリウムとは反応しない。

C 正 粉末試料を取扱う際には、粉塵の飛散に注意が必要である。

D 誤 大線量のγ線ならば、Ce(4+) が Ce(3+) に還元されることがある。これを応用したのが、セリウム線量計である。

E 正 I(-) は酸性にすると酸化されて I2 となり、揮発しやすい。

問21

図のトリチウム標識酢酸エチルの希硫酸による加水分解での生成物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射性の酢酸が生成する。

B 放射性のエタノールが生成する。

C 非放射性の酢酸が生成する。

D 非放射性のエタノールが生成する。

E 放射性の水が生成する。

1 AとB 2 AとD 3 BとC 4 CとE 5 DとE

解答 3 加水分解では以下のような反応が起きる。

問22

放射性核種とその利用に関する次の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

1 14C ー 石炭の生成年代の測定

2 18F ー 人体の陽電子放射断層撮影(PET)

3 57Co ー 岩石中のコバルトの中性子放射化分析

4 90Sr ー じゃがいもの発芽防止

5 99Tc ー 人体のシングルフォトン断層撮影(SPECT)

解答 2

1 誤 14C を利用した年代分析法で分かるのは、生命活動が終わった年代である。石炭は植物腐敗する前に長期間地熱や地圧を受けることで徐々に変質して生成したものであるため、石炭の生成年代は分からない。

2 正 PET(陽電子放射断層撮影)には、短半減期の陽電子放出核種である 11C、13N、15O、18F が用いられる。

3 誤 コバルトは単核種元素であり、唯一の安定同位体である 59Co が (n,γ)反応を起こして放出される即発γ線、あるいは生成する 60Co が出すγ線を測定することにより中性子放射化分析する。57Co はメスバウア装置の線源として用いられる。

4 誤 90Sr は、β-線のみを放出する核種である。じゃがいもの発芽防止のため照射に用いられるのはγ線であり、日本では 60Co のみ実用化されれいる。

5 誤 シングルフォトン断層撮影(SPECT)に用いられるのは、荷電粒子を放出せずかつ単一光子を放出する核種である。内部転換や EC 壊変でγ線を放出する 99mTc や 123I が用いられる。

問23

次のような 14C/12C の比がすべて等しい炭化水素があるとき、各化合物 1 グラム中の 14C 放射能も、各化合物 1 モル中の 14C 放射能も、ともに最大である化合物はどれか。

1 エタン (C2H6)

2 エチレン (C2H4)

3 アセチレン (C2H2)

4 ベンゼン (C6H6)

5 シクロヘキサン (C6H12)

解答 4

分子量 M の物質 1 モル(= 6.02×10^23 個)の質量が M g であるので、分子量が小さいほど 1 g 中に含まれる物質量(分子の個数)は多くなる。それぞれの 1 分子中の炭素数および、炭素数を分子量で割った値は以下のようになる。

炭素数 炭素数/分子量

1 エタン 2 2/30=1/15

2 エチレン 2 2/28=1/14

3 アセチレン 2 2/26=1/13

4 ベンゼン 6 6/78=1/13

5 シクロヘキサン 6 6/84=1/14

1 g 中に含まれる 14C 放射能が最大になるのは、炭素数/分子量が最も大きいアセチレンとベンゼンである。また、1 モル中に含まれる 14C 放射能が最大になるのは、1 分子中に炭素を最も多く含むベンゼンとシクロヘキサンである。よってともに最大なのはベンゼンである。

問24

次のトリチウム標識有機化合物に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 有機化合物中の特定位置の標識にはウィルツバッハ法が用いられる。

B 化学純度を上げるために精製を繰り返すと比放射能は一定となる。

C 放射化学純度は非放射性の不純物の量とは無関係である。

D 保管時にはできるだけ放射能濃度の高い状態とする。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

A 誤 ウィルツバッハ法は、トリチウムガスと有機化合物を同じ容器に入れて密閉する方法である。簡便な方法であるが、標識位置が一致しない。

B 正 化学的精製を繰り返すと不純物の濃度は下がり、標識化合物の純度が上がるため、最終的に比放射能は一定になる。

C 正 放射化学純度とは、指定の化学形で存在する着目放射性核種がその物質の全放射能に占める割合である。非放射性物質は放射能を持たないため、放射化学純度は非放射性物質の不純物量と無関係である。

D 誤 保管時には放射能濃度を下げて、放射線による自己分解を低減させる。

問25

中性子放射化分析の特徴として、正しいものの組み合わせは次のうちどれか。

A 多元素同時分析ができる。

B 非破壊分析ができる。

C 中性子捕獲断面積の大きい元素が共存すると、定量誤差の原因となる。

D 照射後の化学分離の際の目的元素の混入は、定量に影響しない。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 放出されるγ線をゲルマニウム半導体検出器で測定するため、多元素を同時に分析できる。

B 正 測定するのはγ線のため、非破壊で分析可能である。

C 正 中性子捕獲断面積が大きい不純物があると、目的元素に照射される中性子フルエンスが相対的に小さくなるため、放射能が少なくなり定量誤差が大きくなる。

D 正 中性子の照射により核反応を起こして別の核種にした後に測定するため、照射後に非放射性の目的元素が混入しても定量には影響しない。

問26

荷電粒子励起X線(PIXE)分析法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 生体試料中の重金属元素分析に適している。

B 多元素同時分析ができる。

C 微小領域の分析が可能である。

D 分析試料が放射化される。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

荷電粒子励起X線(PIXE)分析法とは、試料にイオンビームを照射した際に発生する特性X線を検出して、そのエネルギーと強度から元素を同定・定量する方法である。

A 正 生体中の主要構成元素である炭素などの軽元素は検出できないため、含まれる重金属元素の分析に適している。

B 正 特性X線は元素ごとに特有のエネルギーを持つため、ナトリウムからウランまでの多元素を同時に分析できる。

C 正 イオンビームの大きさを小さくすれば、細胞中の微量元素分析も可能である。

D 誤 試料に照射するのは 3 MeV 程度のイオンビームのため、分析試料の放射化はおきない。

問27

210Po は 5.304 MeV のα線を放出し、安定な 206Pb になる。α線による 206Pb の反跳エネルギー[keV]に最も近いものはどれか。

1 83

2 96

3 103

4 110

5 122

解答 3

生成核の質量を M、α粒子の質量を m、生成する粒子の運動エネルギーをそれぞれ E(Po)、E(α) とすると、E(Po) = (m/M)・E(α) で求めることができる。よって E(Po) = (4/206) × 5.304[MeV] = 0.1034[MeV] となる。

問28

ホットアトム化学に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性子照射したヨウ化エチル C2H5I を水と振り混ぜると放射性の 128I が水に溶け出す。

B 有機化合物を炭酸リチウムと混合して中性子照射すると、14C の標識化合物が得られる。

C 中性子照射したクロム酸カリウム K2CrO4 を水に溶かすと陽イオンの 51Cr も観測される。

D 37Cl(n,γ)35Cl で 38Cl が得る反跳エネルギーは 1 eV 程度である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 127I(n,γ)128I 反応のγ線の反跳エネルギーによって、C2H5-I の結合が切られたため水相に高比放射能の 128I が移行する。

B 誤 有機化合物に炭酸リチウムまたは 3He を混合して中性子照射することにより、6Li(n,α)3H または 3He(n,p)3H で生成するホットアトムである 3H によって有機化合物を標識する。これを反跳合成法と呼び、トリチウムの標識化合物が生成する。

C 正 反跳エネルギーにより CrO4(-) 中の結合が切られるため、51Cr(3+) イオンが生成する。

D 誤 (n,γ)反応の反跳エネルギー E(γ)は、反跳原子の質量を M、γ線のエネルギーを E とおくと、E(γ) = 537・(E^2/M) [eV] で表される。この式から、37Cl(n,γ)38Cl 反応によって生成する 38Cl の反跳エネルギーを求めると 527 eV となる。

問29

次の放射性核種の用途と放出核種の中で正しい組み合わせはどれか。

1 55Fe ー 硫黄計 ー β線

2 63Ni ー ECD ガスクロマトグラフ ー X線

3 90Sr ー 透過型厚さ計 ー γ線

4 147Pm ー 散乱型厚さ計 ー α線

5 252Cr ー 水分計 ー 中性子線

解答 5

核種の半減期、エネルギー、用途などをまとめた表を下に示す。少なくともこれを覚えておいた方が良い。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
36Cl 3.0×10^5y 0.71  ー β+ , β- , EC  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
55Fe EC
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
63Ni 100y 0.067  ー β-  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
134Cs 2.1y 2.06  ー β-  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問30

線量計に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A フリッケ線量計は、Fe(2+) の酸化反応を利用している。

B フリッケ線量計の G 値は、60Co のγ線に対して約 15.5 である。

C セリウム線量計は、感度は低いが大線量の測定に適している。

D アラニン線量計はラジカル生成を利用する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 フリッケ線量計(鉄線量計)は、放射線の照射により Fe(2+) が Fe(3+) に酸化されることを利用した線量計である。大線量の測定に用いられ、個人線量計としては適さない。

B 正 フリッケ線量計では、通常用いられる 0.4 M 硫酸濃度で、放射線のエネルギーが 100 keV ~ 2 MeV の範囲で、G 値は 15.5 と一定の値をとる。

C 正 セリウム線量計は、放射線の照射により Ce(4+) が Ce(3+) に還元されることを利用した線量計である。低線量の測定は不可能であり、10 ~ 50 kGy の大線量の測定に用いられる。

D 正 アラニン線量計は、放射線の照射によりアラニン分子中のアミノ基が切断され、ラジカルが生成することを利用した線量計である。放射線照射により、吸収線量に比例して生じるラジカルの相対濃度を電子スピン共鳴(ESR)によって測定する。線量測定範囲が 1 ~ 10^5 Gy と広く、高い精度と安定性を持つ。組成が人体組織に近いため、放射線治療における吸収線量測定に用いられる。

 

放射性気体の発生について

放射性気体が発生するような化合物はフードまたはグローブボックス内に取り扱う。空気中の放射性物質の濃度を測定を測定するには、いったん捕集して行う方法がとらえる場合が多い。捕集するには放射性物質の物理的、化学的性状によって様々な手法が用いられる。 例えば、気体の HTO(トリチウム水蒸気) を捕集するにはシリカゲルを用いた固体捕集法や、ドライアイスを用いた冷却凝縮法などがとられる。HT(トリチウムガス)の場合にはパラジウム触媒 を用いて HTO(トリチウム水蒸気)に変えたのちに集める。(水素ガス状トリチウムの場合には、前段でもレギュラーシーブを通して HTO を除いた乾燥空気に無トリチウム水素ガスを担体として加えたのち、パラジウム酸化触媒を通して 水に変換して捕集する。)また、放射性ヨウ素が I2 の状態で存在する場合には活性炭での捕集が行われるが、CH3I の場合にはトリエチレンジアミン担持の 活性炭が利用されている。(気体状のヨウ素の捕集には、活性炭を用いる。トリエチレンジアミン(TEDA)を添着させた活性炭を用いることにより、有機状のヨウ素を高収率で捕集できる。) 放射性の二酸化炭素を捕集するにはアルカリ性溶液に通す方法がとられる。(例えば水酸化ナトリウム溶液に通すと炭酸水素ナトリウムの形で溶液中に捕集できる。NaOH + CO2 → NaHCO3) 一般的に非密封放射性同位元素の排気設備は、実験室内を換気し空気中濃度限度以下にするとともに、排気中の放射性同位元素の濃度を排気中濃度限度以下にするためのものである。排気設備に備えられるフィルタとして、プレフィルタと高性能エアフィルタがある。 プレフィルタにはガラス繊維フィルタ等が用いられている。高性能エアフィルタは HEPA フィルタとも呼ばれ、定格風量で 0.3 μm の微粒子を 99.97 % 以上の捕集効率で捕集する性能を有するものとされている。 (HEPA フィルターの性能は、JIS 規格により「定格流量で粒径が 0.3 μm の粒子に対して、99.97 % 以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が 24.5 Pa 以下の性能を持つエアフィルター」として定められている。)

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験・解答 物理学7

問1

1.3 MeV のγ線の運動量[kg・m/s] はいくらか。次のうちから最も近いものを選べ。

1 3.1 × 10^(-23)

2 6.9 × 10^(-22)

3 3.9 × 10^(-21)

4 5.1 × 10^(-21)

5 3.0 × 10^(-20)

解答 2

光子の運動量は p = E/c で与えられる。E = 1.3 MeV = 1.3 × 10^6 eV = 1.3 × 10^6 × 1.60 × 10^(-19) J = 2.08 × 10^(-13) J、c = 3.00 × 10^8 m/s であるから、p = 2.08 × 10^(-13)/(3.00 × 10^8) = 6.93 × 10^(-22) [kg・m/s]

問2

シンクロトロンに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 磁場を用いて粒子を周回させる。

B 高周波磁場を用いて粒子を加速する。

C 電子や陽子の高エネルギー加速器として用いられる。

D 粒子をあらかじめ加速する前段の加速器が用いられる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事で X線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化する。

A 正

B 正

C 正

D 正

問3

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A μ粒子は電荷を持った粒子である。

B 安定な原子核のうち、陽子数と中性子数が共に偶数であるものの数は、そのどちらか一方が奇数であるものの数より大きい。

C 電子は陽電子よりも質量が大きい。

D 陽子は中性子よりも質量が大きい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

 

解答 1

A 正 μ粒子はミュオンともよばれ、電子と同じレプトンという種類の素粒子の一種である。μ粒子の電荷は負、反μ粒子の電荷は正である。

B 正 例えば、地殻に多く存在する酸素(Z=8)では、中性子数 8 が最も存在度が多く(99.8%)、次に多く存在するケイ素(Z=14)でも、中性子数 14 が最も存在度が大きい(92.2%)。これは、ともに偶数である原子核の方が結合エネルギーが大きいためである。

C 誤 同じである。

D 誤 中性子の質量は陽子よりも若干大きい。

問4

 

特性X線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A エネルギーは原子核のエネルギー準位の差で決まる。

B エネルギー分布は線スペクトルを示す。

C オージエ電子と競合して放出される。

D 電子が原子核のクーロン場により減速される過程において発生する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

 

解答 4

光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を 光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、 同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、 次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、 オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。 特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

A:誤 軌道電子エネルギー準位の差で決まる。

B:正

C:正

D:誤 電子が原子核のクーロン場により減速される過程において発生する光子は制動X線である。

問5

質量数 20 以上の安定な原子核の核子 1 個当たりの結合エネルギー[MeV]は、次のどの範囲にあるか。

1 0.5 ~ 1.0

2 1.0 ~ 2.0

3 2.0 ~ 5.0

4 5.0 ~ 10

5 10 ~ 20

解答 4

結合エネルギーは約 8 MeV (およそ 7.5 MeV ~ 8.8 MeV の範囲)である。

問6

アルミニウム原子核(27Al)の半径は水素原子核(1H)の半径のおおよそ何倍か。次のうちから最も近い値を選べ。

1 2

2 3

3 4

4 5

5 13

 

解答 2

原子核の半径 R は、

R = r(0)・A^(1/3) である。R(Al)/R(H) = (r(0)×27^(1/3))/(r(0)×1^(1/3)) = 27^(1/3) = 3

問7

放射性核種に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A α壊変ではニュートリノが放出されない。

B α壊変と β- 壊変は同一核種では起きない。

C β+ 壊変が起きる核種では競合して EC 壊変が起きる。

D EC 壊変ではニュートリノが放出されない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正

B 誤 例えば、ウラン系列の 218Po は 99.98% の確率でα壊変、0.02% の確率で β- 壊変する。

C 正 EC 壊変核種では β+ 壊変を起こさない核種があるが、β+ 壊変核種は EC 壊変と競合する。

D 誤 β+ 壊変と同様、ニュートリノが放出される。

問8

137Cs の壊変に際して放出される種々の放射線に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A γ線と内部転換電子とは同時に放出される。

B E(max) = 514 keV のβ線(β1)とγ線とは同時に放出される。

C K-X線と K 殻オージエ電子とは同時に放出される。

D 特性X線に伴い放出される。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 137mBa は 90% の確率でγ線放出し、10% の確率で内部転換電子を放出する。ただし 1 個の 137mBa の核異性体転移で放出されるのはどちらかであり、同時には放出されない。

B 誤 137Ba の 662 keV の励起準位は半減期 2.55 分 の核異性体であるため、γ線はβ線よりも遅れて放出される。

C 誤 137mBa の内部転換によって K 殻電子が放出されると、Ba の K-X線と K 殻オージエ電子の放出は競合するが、1 回の内部転換によって放出されるのはいずれか一方である。

D 正

問9

サイクロトロンにおいて、磁束密度 B の磁場に垂直な平面内を非相対論的速度 v で運動する粒子(質量 M、電荷ze)が円軌道を 1 周するのにかかる時間は次のうちどれか。

1 (zeM)/(2πB)

2 (2πB)/(zeM)

3 (2πM)/(zeB)

4 [2π(ze)^2M]/(Bv)

5 (zeB)/(2πM)

解答 3

磁場中を磁場に直行して運動する荷電粒子に働くローレンツ力 F(L) = zevB である。円運動をする粒子に働く遠心力 F(C) は、F(C) = (Mv^2)/r である。サイクロトロンでは F(L) = F(C) が成立して加速されるのであるから、zevB = (Mv^2)/r、すなわち r = (Mv)/(zeB) である。r = (Mv)/(zeB) である。したがって 1 周に要する時間 T は、 T = (2πr)/v = (2πMv)/(zeBv) = (2πM)/(zeB) となる。

問10

熱中性子の検出に適した核反応の組み合わせは、次のうちどれか。

A 3He(n,p)3H

B 10B(n,α)7Li

C 16O(n,n’)16O*

D 35S(n,p)32P

E 197Au(n,γ)198Au

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 2

A 正 3He(n,p)3H

B 正 10B(n,α)7Li

C 誤 16O(n,n’)16O*・・・高速中性子によって生じる非弾性散乱であるが、励起された 16O は直ちにγ線を放出して基底状態に戻る。

D 誤 35S(n,p)32P・・・しきい反応であり、高速中性子の検出に利用される。

E 正 197Au(n,γ)198Au

問11

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 2 MeV のα線の飛程と 1 MeV の陽子線の飛程はほぼ同じである。

B 5 MeV のα線と 1 MeV の電子線の空気に対する W 値は、α線の方が電子線より 2 倍大きい。

C 炭素の原子核を 5 MV の電圧で加速すると、得られる運動エネルギーは 30 MeV である。

D 3 MeV の電子線 2 μA の全エネルギーが 100 g の水に吸収されたとき、平均の吸収線量率は 60 Gy/s である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 より、2 MeV のα線の飛程 = 1/4。 1 MeV の陽子線の飛程 = 1 となるので、誤りとなる。

B 誤 α線の空気に対する W 値は 35.1 eV、電子では 34.0 eV であり、差は小さい。

C 正 炭素の原子番号は 6 であるから、E = zeV = 6 × 5 = 30 MeV である。

D 正 e を素電荷の値(1.6×10^(-19))とすれば、3 MeV の電子 1 個のもつ運動エネルギーは 3 × 10^6 e (J) である。2 μA の電子線で毎秒流れる電子の個数は 2 × 10^(-6)/e (個/s)であるから、吸収線量率は、[3×10^6 e×2×10^(-6)/e]/[100×10^(-3)] = 60(J/kg・s)

問12

原子番号 Z、質量 M の荷電粒子(速度 v)が物質中で停止する際の粒子飛程 R と、Z 及び M の関係として正しいものはどれか。

1 R = ∝ Z^2・M・v^4

2 R = ∝ Z^(-2)・M・v^4

3 R = ∝ Z・M・v^4

4 R = ∝ Z^(-1)・M・v^4

5 R = ∝ Z・M^(-1)・v^4

解答 2

質量衝突阻止能 ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(n × Z)/ρ] ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(A × Z) × Na]

z : 有効電荷 e : 電子。

また S ≈ Z^2/v^2 = [(1/2)M × Z^2]/[(1/2)M × v^2] = (M × Z^2)/E とおける。

また飛程 R = (1/M) × (E/Z)^2 = Z^(-2)・M・v^4 と表される。

問13

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 電子対生成により生じた電子と陽電子は光子の入射方向に対して 90° の角度で放出される。

B 電子対生成では光子の全エネルギーが電子及び陽電子の運動エネルギーに転移する。

C 電子対生成が起きると特性X線又はオージエ電子が放出される。

D 電子対生成が起きる確率は物質の原子番号のほぼ 2 乗に比例して増加する。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 光子のエネルギーが 1.02 MeV より大きくなるとともに、電子と陽電子は光子の入射方向に対し前方に放出される傾向が強まる。

B 誤 光子のエネルギーから、電子と陽電子の静止質量に相当するエネルギー(0.511 MeV × 2 = 1.022 MeV)だけ小さい運動エネルギーに転移する。

C 誤 軌道電子との相互作用ではないため、放出されない。

D 正 電子対生成に対する原子断面積は、原子番号のほぼ 2 乗に比例する。

問14

500 keV 光子が物質に入射してコンプトン効果を起こした場合、次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 散乱光子のエネルギーは 332 keV を超えない。

B 反跳電子の最小エネルギーは約 170 keV である。

C 180° 方向に散乱される光子のエネルギーは約 170keV である。

D 反跳電子のエネルギーは 332 keV を超えない。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 4

コンプトン効果に関する記述を下にまとめる。

波長λの光子が物質内の自由電子と衝突して進行方向が φ だけ変えられ、エネルギーを電子に与えて ψ なる方向へはじき出し、自らは波長λ’となる。これをコンプトン効果という。 コンプトン効果は粒子性を示し、光子エネルギー1〜3 MeV の範囲で起こる。コンプトン散乱は非干渉性散乱であり、① 入射波長より散乱波長の方が長い。 ② 線減弱係数は原子番号Zに比例する。原子当たりの断面積は原子番号Zに比例する。コンプトン電子のエネルギーEeは Ee = E0/[1 + (E0/(1 – cosθ)mc^2)] で表すことができる。 ここで60Coγ線についての補足。60Coγ線エネルギーでは全ての物質についてコンプトン散乱が優勢であり、水素を除いては、質量減弱計数はほぼ同じである。したがって、単位面積当たりの質量で 表した遮蔽体の厚さ、すなわち密度×厚さの積が大きいほど遮蔽効果が大きくなる。

A 誤 光子の散乱角度が 0° では、エネルギーは変化せず 500 keV である。

B 誤 光子の散乱角度が 0° では、反跳エネルギーは 0 である。

C 正 散乱光子のエネルギーhν = (hν0)/[1 + ((hν0)/(m0c^2)) × (1 – cosθ)] と表されることから、hν = 500/[1 + (500/511) × (1 – cos180°)] = 169 keV となる。

D 正 反跳電子のエネルギーが最大になるのは、光子が 180° 方向に散乱されるときであり、最大エネルギーは 500 – 169 = 331 keV である。

問15

50 ~ 200 keV 程度の光子の光電効果に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 光電効果に対する線減弱係数は、光子エネルギーに逆比例する。

2 光電効果に対する線減弱係数は、物質の原子番号の 2 乗に比例する。

3 光電効果は、光子と軌道電子との弾性衝突である。

4 光電効果に伴って、オージエ電子が放出されることがある。

5 光電子の運動エネルギーは、入射光子のエネルギーに比例する。

解答 4

光電効果の記述を下記に示す。

光電効果

光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、 同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

1 誤 光子エネルギーを E(γ)として、E(γ)^(-3.5) に比例する。

2 誤 原子の断面積は、ほぼ Z^5 に比例し、質量減弱係数は、ほぼ Z^4 に比例する。ただし、線減弱係数は物質の密度に依存するため、一概には言えない。

3 誤 光電子の運動エネルギーは、光子エネルギーよりも軌道電子の結合エネルギーだけ小さいので、非弾性散乱である。

4 正 光電効果では K 殻電子が放出されることが多いため、K-X線の放出とともにオージエ電子の放出が競合する。

5 誤 光電子の運動エネルギーは光子エネルギーよりも軌道電子の毛癒合エネルギーだけ小さい。

問16

図に示されたヨウ化ナトリウム(NaI)の質量減弱係数における①〜④の相互作用及び⑤の吸収端に関し、正しい組み合わせは次のうちどれか。

 

 

①     ②     ③     ④      ⑤

1 光電効果 レイリー散乱 電子対生成 コンプトン効果 L吸収端

2 光電効果 レイリー散乱 コンプトン効果 電子対生成 L吸収端

3 レイリー散乱 コンプトン効果 光電効果 電子対生成 K吸収端

4 レイリー散乱 光電効果 コンプトン効果 電子対生成 K吸収端

5 光電効果 レイリー散乱 コンプトン効果 電子対生成 K吸収端

解答 4

低エネルギー領域では、全減弱係数は光電効果による減弱係数にほぼ等しいため、②は光電効果であることが分かる。光電効果の領域で、エネルギーが下がるにつれて最初に現れる不連続が⑤K吸収端である。①は低エネルギー光子によって生じる弾性散乱(散乱によって光子エネルギーが変化しない)であるレイリー散乱である。1 MeV 近辺では、あらゆる物質について③コンプトン効果が最も優勢であり、エネルギーがさらに高くなるにつれ、④電子対生成過程が増加する。

問17

ある遮蔽材に対して、半価層が 1 cm である細い線束のγ線の強度を 1/100 に減ずるのに要する遮蔽材厚さ[cm]として、最も近いものは次のうちどれか。ただし、ビルドアップ効果は考慮しないものとする。

1 2

2 5

3 7

4 9

5 10

解答 3

半価層は、放射線の強度が 1/2 になる遮蔽材の厚さである。(1/2)^6 = 1/64、(1/2)^7 = 1/128 であるから、7 cm が最も近い。

問18

2 MeV の中性子が水素核(1H)との弾性衝突で失う平均エネルギーを A、酸素核(18O)との衝突で失う平均エネルギーを B としたとき、A/B の値として最も近いものは次のうちどれか。

1 0.11

2 0.39

3 4.5

4 9.0

5 20.0

解答 3

反跳粒子のエネルギーが最大となるのは中性子が重心系で 180° の方向に散乱するときである。その時の反跳粒子のエネルギー E は、E(n) を散乱前の中性子エネルギー、m を中性子の質量、M を衝突する原子核の質量として、E = [(2mM)/(m+M)]・(1-cos180°)E(n) = [(4mM)/(m+M)^2] ・ E(n) で与えられる。水素との衝突では、m ≒ 1u、M ≒ 1u であるから、E = [(4×1×1)/(1+1)^2] × 2 = 2 MeV、酸素との衝突では E = [(4×1×16)/(1+16)^2] × 2 = 0.44 MeV。衝突で 失う平均エネルギーは、最大エネルギーの 1/2 であるから、A = 1 MeV、B = 0.22 MeV より、A/B = 1/0.22 = 4.5 となる。

問19

物理量と単位の次の対応のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射線量率 ー C・kg^(-1)

B 質量阻止能 ー J・kg・m^(-2)

C 空気カーマ ー J・kg^(-1)

D エネルギーフルエンス率 ー J・m^(-2)・s^(-1)

E 線エネルギー付与 ー J・m^(-1)

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACEのみ 4 BCDのみ 5 CDEのみ

解答 5

A 誤 照射線量率 ー C・kg^(-1)・s^(-1) が正しい

B 誤 質量阻止能 ー J・kg^(-1)・m^2 が正しい

C 正 空気カーマ ー J・kg^(-1)

D 正 エネルギーフルエンス率 ー J・m^(-2)・s^(-1)

E 正 線エネルギー付与 ー J・m^(-1)

問20

厚さ 0.1 mm、一辺の長さ 10 mm の正方形のアルミニウム板 2 枚で 210Po (α線のエネルギーは 5.3 MeV) 10 MBq 放置した場合、上昇温度[K]として最も近い値次のうちどれか。ただし、アルミニウムの密度は 2.7 g・cm^(-3)、比熱は 0.90 J・g^(-1)・K^(-1) とする。

1 0.05

2 0.11

3 0.21

4 0.49

5 0.77

 

解答 2

α粒子 1個が有するエネルギーは、5.3 × 10^6 (eV) = 5.3 × 10^6 × 1.6 × 10^(-19) (J) = 8.48 × 10^(-13) (J) である。10 分間にアルミニウムが吸収するエネルギーは、8.48 × 10^(-13) × 10 × 10^6 × 60 × 10 = 5.09 × 10^(-3) (J) である。2 枚のアルミニウム板の質量は、2.7 × 0.01 × 1.0 × 1.0 × 2 = 5.4 × 10^(-2) (g) である。したがって上昇温度は、(5.09 × 10^-3)/(5.4 × 10^(-2) × 0.90) = 0.105 (K) となる。

問21

放射線検出器として利用される半導体に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップエネルギーが絶縁体より大きい。

B ε値はシリコンよりゲルマニウムのほうが小さい。

C ゲルマニウム中において電子と正孔の移動度は等しい。

D シリコン中に微量のガリウムが不純物として存在すると p 型半導体となる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 5

A 誤 バンドギャップエネルギーは絶縁体より小さい。

B 正 シリコンでは 3.6 eV、ゲルマニウムでは 3.0 eV である。

C 誤 電界強度を E(V・m^(-1))、その時の電子や正孔の流動速度を v(m・s^(-1))とすれば、v = μ・E で表される。μ を移動度といい、常温のゲルマニウム中では、電子に対し 0.39、正孔に対して 0.19 である。

D 正 4 価 のシリコンに 3 価のガリウムを添加すると、結晶内で電子が不足し、正孔が電気伝導に寄与する p 型半導体となる。

問22

空気を充填した空洞電離箱に 60Co γ線を照射して電離電流を測定したところ I(air) を得た。この充填期待をアルゴンに置き換えた場合、電離電流は I(air) の何倍となるか。次のうちから最も近いものを選べ。ただし、気温、圧力は同一とする。なお、アルゴンの電子に対する W 値は 26.4 eV であり、二次電子に対して(アルゴンの質量阻止能)/(空気の質量阻止能) = 0.82 とする。

1 0.9

2 1.2

3 1.5

4 1.8

5 2.0

解答 3

空気は十分小さく、気体の置き換えによって2次電子の分布に変化がないと考えれば、アルゴンの吸収線量は空気の場合の 0.82 倍になる。一方、同一の吸収線量では、質量が同じ場合、電離電流は W 値に反比例する(空気のW値は 34 eV)。また、体積が同じ場合、気体の質量は分子量に比例する。空気は 80 % が窒素、20 % が酸素と近似できるので、空気の平均的な分子量は 14 × 2 × 0.8 + 16 × 2 × 0.2 = 28.8 である。したがってアルゴンと空気の質量の比は 40/28.8 = 1.39 である。したがって、アルゴンの場合の電離電流を I(Ar) とすれば、I(Ar)/I(air) = (0.82×1.39)/(26.4/34) = 1.47 となる。

問23

次のシンチレータのうち、それ自体の放射能によるバックグラウンドが測定上問題になるものの組み合わせはどれか。

A CsI(Tl)

B Bi4(Ce3)O12

C Lu2(SiO5)Ce

D La(Br3)Ce

E CdWO4

1 AとB 2 AとE 3 BとD 4 CとD 5 CとE

解答 4 Lu と La には、それぞれ天然放射性核種である 176Li、138La が、その存在度にしたがって必ず含まれる。これらの放射性核種が放出するβ線、γ線が、検出器自体のバックグラウンドとして測定を妨害する。これは外部に存在する天然の放射性物質からの放射線、宇宙線によるバックグラウンドと異なり、検出器を遮蔽しても防ぐことはできない。

問24

電離箱からの電離電流を電気容量 100 pF のコンデンサ(キャパシタ)に送り込み、その両端の電位差を電位計で測定したところ、10 分後の電位差上昇が 3.0 V であった。平均の電離電流[pA]として最も近い値は次のうちどれか。

1 0.15

2 0.5

3 1.0

4 1.5

5 5.0

 

解答 2

10 分間に流れた電気量は、100 × 10^(-12) × 3.0 = 3.0 × 10^(-10) (C) である。したがって平均電離電流は、(3.0 × 10^(-10))/(60 × 10) = 5.0 × 10^(-13)(A) = 0.50 (pA) となる。

問25

1 MeV 程度のβ線の最大エネルギーを知る方法として、最適なものは次のうちどれか。

1 2πガスフロー型比例計数管により波高分布を求める。

2 端窓型 GM 計数管でアルミニウム板による吸収曲線を求める。

3 TLD を用いてグロー曲線を求める。

4 NaI(Tl)シンチレーション検出器により波高分布を求める。

5 Ge 検出器により波高分布を求める。

解答 2

GM 計数管を用いて吸収曲線からアルミニウム中の最大飛程を推定し、電子の最大飛程の文献値と比較することによってβ線の最大エネルギーを知る。GM計数管によって放射能を決定するための手順を下記に示す。

GM計数管によって放射能を決定するための手順

はじめにβ線の最大飛程よりも厚い吸収板を用いて計数を行い、γ線とバックグラウンドによる計数率を評価する。次に種々の厚さ(2mg/cm2 ~ 50mg/cm2 程度)のアルミニウム製吸収板を置いた時の計数率を順次求める。この値について予め計数装置の不感時間による数え落としの補正を行うとともに厚い吸収板 を用いた時の計数率を差し引き、計数管のγ線に対する感度とバックグラウンドの影響を補正する。これらの結果を片対数グラフの横軸に吸収板厚[mg/cm2]、縦軸に計数率をプロットするとほぼ直線状のグラフが得られる。これは吸収板厚の増加とともにほぼ指数的に計数率が 減少することを意味する。このようなグラフを吸収曲線と呼び、その形はあまり吸収体の材質に依存しない。したがって線源ーGM計数管入射窓間に介在する空気層やGM計数管入射窓におけるβ線の吸収を補正するためには線源ーGM計数管入射窓間と空気密度から空気層の厚さ[mg/cm2]を求め、空気層厚及びGM計数管入射窓の厚さ[mg/cm2]の分だけ 吸収曲線を外挿すればよい。この結果を n’ [s^(-1)]とすると、60Co 試料(線源)の放射能 A [Bq] は次式により決定する。 A = n’/[ε1 × (1+ε2) × (1-ε3)]と表される。ここで ε1 は幾何学的効率。ε2 は後方散乱率。εs は自己吸収率。

端窓型GM計数管を用いた定位体角法では、線源から計数管へ入射するβ-線の割合を絞りにより一定に保ち、放射能 A を求める。この時測定で得られるβ-線の計数率 n と点状線源の放射能との関係は次式で与えられる。n = Aε1 × (1+ε2) × (1-ε3) × (1-ε4) ここで、ε1 は幾何学的効率であり、絞りの半径を R 、絞りと線源との距離を d とするとε1 = 1/2[1 – (d/(√d^2 + R^2))] となる。ε2 は線源支持板の後方散乱の割合、ε3 は線源ー検出器間の空気層や検出器窓による吸収損失の割合、ε4 は線源の自己吸収による損失の割合を表す。また、この測定法を拡張し、幾何学的効率が 0.5 、さらに線源と検出領域との間のβ-線の吸収損失をなくした測定器が 2πβ計数管である。βーγ線同時計数法では、β線検出器とγ線検出器を対向させ、その間に点状線源を置いて測定する。β-線とこれに連続して放出されるγ線について、バックグラウンドを補正したそれぞれの計数率を nβ、nγ、またそれらの同時計数の計数率を nc で表すと、β線検出器及びγ線検出器の計数効率 εβ、εγは εβ = nc/nγ , εγ = nc/nβ となる。この時放射能 A = (nβ・nγ)/nc となる。この測定方法において計数率が高い場合は、β-線と同時事象の関係にないγ線による偶発同時計数率の影響を補正することが必要となり、この補正量は同時計数回路の信号パルスの分解時間を τ とすると 2τ ・ nβ ・ nγ で与えられる。またβ線検出器として 4πβ計数管を用いれば、β線の計数へのγ線の影響がほとんどなく補正が軽減される。

1 誤 2πガスフロー型比例計数管・・・β線の飛程が長いため、エネルギーの一部しか検出されず、最大エネルギーの測定はできない。

2 正

3 誤 TLD・・・吸収線量の測定に用いられ、個々の放射線の測定はできない。

4 誤 NaI(Tl)シンチレーション検出器・・・NaI(Tl)は潮解を防ぐための容器に納められている。また検出器の実効的な原子番号が大きく、入射したβ線が、後方散乱によって再び検出器外に出てしまう確率が高い。これらの理由によって、β線が全エネルギーを検出器に与えることがないため、エネルギー測定には用いられない。

5 誤 Ge 検出器・・・Ge 検出器は低温にするための真空容器に納められている。また、検出器の実効的な原子番号が大きいため、NaI(Tl)検出器と同様、β線のエネルギー測定には用いられない。

問26

同一の条件で試料と標準線源からの放射線をそれぞれ測定した。バックグラウンドを差し引いて求めた計数率は、試料では 6300 ± 63 cpm で標準線源は 2100 ± 21 cpm であった。試料と標準線源の計数率の比に対して誤差が正しく表されているものは、次のうちどれか。

1 3000 ± 0.006

2 3000 ± 0.015

3 3000 ± 0.024

4 3000 ± 0.033

5 3000 ± 0.042

解答 5

計数率の比:6300/2100 = 3.0。誤差:6300/2100 × √[(63/6300)^2 + (21/2100)^2] = 3 × √[(1/100)^2 (1/100)^2] = 3 × (1/100) × √2 = 0.042

問27

ブラッグ・グレイの空洞原理が成り立つための条件として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 荷電粒子平衡が成立していなければならない。

B 空洞内ガスは固体壁と等価な物質でなければならない。

C 空洞内ガスと固体壁の質量阻止能比はエネルギーによって大きく変化しない。

D 空洞の存在はそこを通過する荷電粒子のエネルギー分布に影響を与えない。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 1 ブラッグ・グレイの空洞理論についての記述について下記に示す。

ブラッググレイの原理

吸収線量とは、任意電離放射線が任意物質に当たった時、その物質の単位質量当たりに吸収されたエネルギーとして定義されている。本来の SI 単位は J/kg であるが、この単位に対してグレイ[Gy] という特別単位名称と記号とが与えられる。吸収線量の測定法として最も定義に忠実な方法は熱量計法である。例えば、断熱状態の水に 1.0 Gy の吸収線量が 与えられた時でも、温度上昇は約 0.24 × 10^(-3) ℃ にとどまり、これを正確に測定することは容易ではない。そのため、実用的な吸収線量測定は、ブラッグ・グレイの原理に準拠した空洞電離箱法によることが多い。空洞電離箱とは固体壁(グラファイトなど)の中に空洞を設け、その空洞中に空気などの気体を充填したものである。空洞の中心には細い導電性の棒状電極を配置し、これと固体壁の間に 電圧を印加して電離電流を測定する。固体壁が絶縁体である場合には、内壁面に炭素などを薄く塗布し、導電性を確保する。印加電圧が低いと、電離によって生じたイオン対が再結合するので、充分な電圧をかけて、飽和電流が得られるようにする。

解説

水の比熱は 1.0[cal・℃^(-1)・g^(-1)] = 4.2 × 10^3[J・℃^(-1)・kg^(-1)] であるから、温度上昇は1/(4.2 × 10^3) = 0.238 × 10^(-3) ℃ となる。

空洞体積 V [m^3]、空洞気体密度 ρ [kg/m^3] の空洞電離箱にX線又はγ線を照射して、電離電流 I [A] を得た場合壁物質中の吸収線量率 Dm [Gy/s]は次式により求めることができる。
Dm = 1.6 × 10^(-19) × (W・I)/(V・ρ・e) × Sm Dg = (W・N)/m
ここで、Wは空洞気体中で1イオン対を作るのに要するエネルギー[eV]。すなわち、W値であって、空域の場合は 34 eV である。
Smは壁物質の空洞気体に対する平均質量阻止能比であり、
Sm = (壁物質の二次電子に対する平均質量阻止能)/(空洞気体の二次電子に対する平均質量阻止能)となる。
ここで二次電子とは、コンプトン効果や光電効果によって生じた電子をいう。空洞気体が空気であり、壁物質がグラファイトのような原子番号の低い材料を使う場合、Smはほとんど 1 に近い。 こうした空洞電離箱法の適用にあたっては、二次電子の飛程に比較して空洞が小さく、空洞の存在が二次電子の粒子束に、大きく影響しないことが 前提となっているが、空洞を小さくすると電離電流が少なくなってしまう。また壁厚は壁物質中で二次電子の電子平衡が成立するように留意する。 壁部室として組織等価物質を用いれば生体組織における吸収線量(率)が決定できるが、測定対象物質と壁物質とが異なる場合には、測定対象物質に小さな空洞電離箱を挿入して測定を行い、得られた結果に測定対象物質と 壁物質の質量エネルギー吸収係数比を用いて測定対象物質の吸収線量を間接的に求める。体積 10 × 10^(-6) m3 の空洞に空気(密度 1.3 kg/m3) を充填したグラファイト空洞電離箱にγ線を照射して、1.0 mGy/s の吸収線量率を与えた場合、流れる電流は 0.38 nA である。このような微小な電流を測定するためには MOSFET を用いた高感度電位計や振動容量電位計などが用いられる。

解説

空気の W値は 34 eV であるから、電流は [1.0× 10^(-3)[Gy/s]×1.3×10×10^(-6)[kg]×1.6×10^(-19)[C]]/[34×1.6×10^(-19)[J]] = 3.8 × 10^(-10)[A] = 0,38[nA]

A 正 荷電粒子平衡の成立が必要である。

B 誤 等価でない場合は、2次荷電粒子に対する質量阻止能の比を用いて補正する。

C 正 大きく変化すると、固体壁と空洞内の2次電子のわずかなエネルギースペクトルの変化によって影響を受けてしまい、正確な補正ができない。

D 正 固体壁と空洞内のエネルギー分布に大きな違いがあると、2次荷電粒子の質量阻止能の比のエネルギーによる変動が影響して正確な補正ができない。

問28

水中の一点に空洞体積 1 cm3 で水等価壁の空気電離箱を設置し 60Co γ線 を照射したとき収集電荷 20 nC を得た。この点での水吸収線量[Gy]の値として最も近いのはどれか。ただし、空気の密度及び W 値をそれぞれ 1.2 kg/m3、34 eV とし、この点における二次電子に対する水と空気の平均質量阻止能比(水/空気)を 1.1 とする。

1 0.1

2 0.3

3 0.6

4 0.9

5 1.2

解答 1

空気の吸収線量 D(g) は、素電荷の値(1.60×10^(-19))を e として、D(g) = (WN)/m = [(34e)×(20×10^(-9)/e)]/[1.2×1×10^(-6)] = 0.57 Gy である。したがって水吸収線量 G(m) は、D(m) = D(g) × 1.1 = 0.62 Gy となる。

問29

GM 管式表面汚染検査計を用いて、純β線放出核種が均一に分布した面線源(放射能:1500 Bq、大きさ:縦 100 mm × 横 150 mm )を測定したところ、正味の計数率が 2400 cpm あった。表面汚染検査計の入射窓面積が 20 cm2、面線源との距離が 5 mm、面線源の線源効率が 0.54 とすると、この表面検査計の機器効率として最も近い値は次のうちどれか。

 

1 0.17

2 0.37

3 0.48

4 0.57

5 0.63

解答 2

機器効率とは、検出器に入射した放射線が計数される割合である。また線源効率とは、放出された放射線のうち、表面から放出される割合をいう。0.5 より大きいのはβ線の後方散乱の影響である。検出器と面線源の距離は 5 mm であり、面線源の大きさに比較して十分小さいため、実質的に、面線源のうち 20 cm2 の領域にある放射性物質から表面に放出されたβ線は、全て検出器の入射窓に入ると考えることができる。すなわち検出器に入射するβ線数は、1500/(10×15) × 20 × 0.54 = 108 s^(-1) である。したがって機器効率は (2400/60)/108 = 0.37 となる。

問30

次の表中に示された A から C までの空間線量率を測定する一般のサーベイメータの方式として、最も適切な組み合わせはどれか。また、B.G はバックグラウンド放射線による線量率を表す。

A B C
 エネルギー特性  エネルギー補償可  Cより劣る  良好
 測定範囲  BG ~ 30 μSv/h  BG ~ 300 μSv/h  1 μSv/h ~ 1 Sv/h
 方向特性  Cより劣る  Cより劣る  良好
 感度  非常に高い  Aより劣る  Bより劣る

A       B    C

1 シンチレーション式 GM管式 電離箱式

2 シンチレーション式 電離箱式 GM管式

3 GM管式 シンチレーション式 電離箱式

4 GM管式 電離箱式 シンチレーション式

5 電離箱式 GM管式 シンチレーション式

解答 1

感度は、高い順に並べて、シンチレーション式 > GM管式 > 電離箱式 である。エネルギー特性とエネルギー依存性は同義である。方向特性(方向依存性)については、GM管式では前方入射に比べて横方向からの入射の方が数十%感度が高い。シンチレーション式と電離箱式の方向特性は、180度方向をのぞいてともに良好であるが、若干電離箱式の方が優れていることが多い。

 

バックグラウンドについて

低レベル放射能の測定にとって大切な事柄として、バックグラウンド計数率の低減、高い検出効率の確保、長時間測定などが共通的に挙げられる。また測定対象の 放射能濃度を求める場合には、測定試料の量を多くすることが有効である。バックグラウンドの原因として次のようなものがある。
① 建材、土壌、空気などの周囲環境中に存在する放射性物質
② 検出器自体や遮蔽材などに含まれる放射性物質
③ μ粒子などの宇宙線
④ 他の電気機器からの高周波信号や電源スイッチの開閉に伴う電磁的ノイズ。
これらの原因のうち、①の環境中の放射性物質として232Thや238Uの壊変生成物や40Kなどの 天然の放射性物質が主なものであるが、原子力発電所事故により放出された134Cs、137Csによりバックグラウンドにも注意すべきである。 40Kは高いエネルギーのβ線、γ線を放出し、γ線バックグラウンドスペクトルの 1.46 MeV 相当位置に顕著なピークを出現させる。また、 2.6 MeV 付近にも顕著なピークが 認められるが、これは232Thの子孫核種の208Tlから放出されるγ線によるものである。また、238Uの 子孫核種である 214Bi から 609 keV のγ線が放出されるが、このエネルギーは134Csから放出される 605 keV γ線エネルギーに近接しているので 134Cs の測定に際し、妨害となることがある。 ②については、核種が検出器自体や遮蔽体に含有されると、ここから放出される放射線に対して遮蔽も有効に機能しないため材料の吟味が必要である。例えば、遮蔽体の鉛には半減期22年の210Pbが含まれることもあり、 この場合、その娘核種の210Biからのβ線に起因する制動放射線によるバックグラウンドが問題になることがある。また、 半田(はんだ)には232Thや238Uの壊変生成物が含まれることがあり、ガラスには40Kが含有することがあるので注意する必要がある。 ③に対してμ粒子は極めて透過力が強いため、遮蔽体の使用もあまり効果がない。これを効果的に除去するためには、計数管の周囲や上部にガード計数管を配置し、この出力パルスで主計数管のパルスに対して 逆同時計数を行うと良い。これは特にβ線の低レベル放射能測定測定にとって有効である。④における電磁的ノイズ対策として、金属箱などによる電磁的遮蔽や電源部のフィルタの使用などがある。高い 検出効率を確保するためには、測定試料を検出器に近づけたり、大きな検出器を用いて幾何学効率を大きくすることが有効であるが、大きな検出器を用いると、バックグラウンド計数率 も高くなるので、その兼ね合いに配慮する必要がある。また、測定器がスペクトロメータの場合、検出効率が同じであってもエネルギー分解能が高い方が 連続的なバックグラウンドスペクトルとピークとの識別に関して有利である。

低レベルβ線の測定において、測定試料からの放射線による計数率 ns は、バックグラウンドを含めた全体の計数率 ng から、バックグラウンド計数率 nb を差し引いた値となる。すなわち、
ns = ng – nb = (Ng/Tg) – (Nb/Tb) となる。ここで Ng は試料を置いた状態で計数を時間 Tg の間行った時に得られた計数値、Nb は試料を置かないで計数を時間 Tb の間行った時に得られた計数値である。 この場合、ns の標準偏差を、σs とすると、ns の分散 Vs は、Vs = (σs)^2 = (Ng/(Tg)^2) + (Nb/(Tb)^2) = (ng/Tg) + (nb/Tb)で与えられる。 全体の計数時間 T が一定、すなわち T = Tg – Tb が一定の場合、左式において Tg = T – Tb とし、(σs)^2 を Tb で微分すると、(d(σs)^2)/(dTb) = (d/dTb) × (ng/(T-Tb) + nb/Tb) = ng/(T-Tb)^2 – nb/Tb^2 の関係が得られる。バックグラウンド計測に関わる最適配分時間は dσs^2/dTb = 0 とおいて、(T-Tb)/Tb = Tg/Tb = nb/Tb^2 = ng/(T-Tb)^2 から (T-Tb)^2/Tb^2 = ng/nb よって(T-Tb)/Tb = √(ng/nb)と求めることができる したがって、例えば測定試料を置いたときの計数率が毎分約 20 カウント、バックグラウンド計数率が毎分約 10 カウントであることが予備測定でわかっているとき、測定に関わる時間 T が一定という制約の中で計数率の統計誤差を宰相にするためには Tg/Tb を√2 ≒ 1.41にするのが良い。したがって T = 100 min の場合、Tg = 59min、Tb = 41minとする。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験 生物学問題・解説

問1

標識化合物の利用法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A [3H]ヒスチジンを用いて、タンパク質合成量を調べる。

B [51Cr]クロム酸ナトリウムを用いて、赤血球の寿命を調べる。

C [125I]抗インスリン抗体を用いて、インスリン量を調べる。

D [125I]ヨードウリジンを用いて、タンパク質合成量を調べる。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 ADのみ 5 BCDのみ

解答 3

くすり 剤形 検査目的 保険適用
18F – フルオロデオキシグルコース(FDG) 注射剤 悪性腫瘍、てんかん、虚血性心疾患の検査
15O – 酸素ガス 吸入剤 脳酸素消費量の検査
15O – 一酸化炭素ガス 吸入剤 脳血流量の検査
15O – 二酸化炭素ガス 吸入剤 脳血流量の検査
15O – 水 注射剤 脳、心筋血流の検査
11C – メチオニン 注射剤 腫瘍検査
11C – 酢酸 注射剤 腫瘍検査、心筋機能検査
11C – コリン 注射剤 腫瘍検査
11C – ラクロプライド 注射剤 脳ドーパミン神経機能の検査
11C – フルマゼニル 注射剤 てんかん、脳神経細胞障害の検査
13N – アンモニア 注射剤 心筋血流量の検査
18F – フッ化ナトリウム 注射剤 骨疾患の検査

A 正 ヒスチジンはアミノ酸であり、タンパク合成量の測定に用いられる。

B 正 赤血球寿命測定の他、循環血液量の測定にも用いられる。

C 正 125I 標識抗体は、ラジオイムノアッセイに用いられ、生体内生理活性物質など微量な分子の定量に用いる。

D 誤 ウリジンは、核酸構成塩基の一つとして RNA に取り込まれるため、その標識体は RNA 合成量の測定に用いられる。

問2

心機能・血流量を調べるのに用いられる放射性核種として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 59Fe

B 99mTc

C 198Au

D 201Tl

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

問3

γ線による間接作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 主として水の電離又は励起によって生じるフリーラジカルの作用である。

B 凍結状態で照射すると大きくなる。

C グルタチオンなど SH 基を持つ物質を添加することにより、低減することができる。

D 酸素分圧を低下させることで、低減することができる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 1

間接作用の修飾要因

① 希釈効果

希釈効果とは、溶液を照射する場合に溶質の濃度が低い方が高い時よりも溶質に対する放射線の影響の割合が大きくなることをいう。主に酵素濃度が減少する。 ① 溶質として存在する酵素などの生体高分子数の不活化を指揮とした場合吸収線量が一定であれば不活性化した分子数は濃度によらず一定 → 同じ条件での不活性化率は濃度の増加に伴い低下する。

② 酸素効果

組織内の酸素分圧が放射線効果に影響を与えることを酸素効果という。酸素存在下での放射線効果は、無酸素下での放射線効果に比べて大きい。これは酸素分子が電子親和性が大きく、 電子を取り込んでスーパーオキシドという反応性に富むラジカルを産生するためである。また、照射後に酸素濃度を高めたとしても酸素効果は見られない。同じ生物学的効果を 得るのに必要な無酸素下での線量と酸素存在下での線量の比を酸素増感比(OER)という。

OER = (無酸素下である効果を得るのに必要な線量)/(酸素存在下で同じ効果を得るのに必要な線量)

OERは酸素分圧の上昇につれて大きくなるが、酸素分圧が 20 mmHg を越えるとほぼ一定となる。低LET(線エネルギー付与)放射線ではOERは 2.5 ~ 3 程度であるが、 高LET放射線では酸素効果は小さい。

③ 保護効果

ラジカルと反応しやすい物質が照射野に存在すれば、生じたラジカルは除去されるので放射線の効果は減少する。これを保護効果といい、このような働きを持つ物質を放射線防護剤あるいは単に防護剤という。 SH化合物などのラジカルスカベンジャーはその一例である。SH基にはシステイン、システアミン、グルタチオン、シスタミンがある。またOH基も還元作用があることから、 アルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなども同様に保護効果を持つ。

④ 温度効果

温度が低下した状態では放射線効果は減少する。これを温度効果という。ラジカルの拡散が低温により妨げられるためだと考えられている。

フリーラジカルの生成

励起・・・H2O → H*(還元性) + OH*(酸化性)

電離・・・H2O → H2O+ + e- 、H2O+ → H+ + OH* もしくは H2O+ + H2O → H3O+ + OH*

H3O+ + e- → H* + H2O

電子の周りには水分子が集まり水和電子が生成される。e- + nH2O → e(aq)-[還元性]

e(aq)- + H2O → OH- + H* もしくは、e(aq)- + H+ → H*、e(aq)- + O2 → O2*-(スーパーオキシドラジカル)

H* + OH* → H2O となり、H*は生体分子の水素を引き抜いて反応を起こし、10^(-10)秒の寿命をもつ。

還元性を示す分子・・・H*、e(aq)-、H2

酸化性を示す分子・・・OH*、H2O2

ラジカルの再結合

生成されたH*やOH*といったラジカルは拡散し広がっていくが、その過程でラジカル同士再結合するのもある。ラジカルの再結合はラジカル同士の距離が近いと起きやすい。ラジカルの生成密度は、低LET放射線では 疎で高LET放射線では密であることから、低LET放射線では間接作用の寄与が大きいが、高LET放射線では間接作用の寄与が小さくなる。

A 正 特に、OH ラジカル(ヒドロキシラジカル)の影響が大きい。

B 誤 凍結状態ではラジカルの核酸が抑制されるため影響は小さくなる。

C 正 ラジカルスカベンジャーによる保護効果という。グルタチオンの他、システイン、システアミンなども同様な効果を持つ。

D 正 酸素分圧が 20 mmHg 以下になると、影響が低下する。

問4

酸素効果に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A γ線は速中性子線よりも酸素効果が小さい。

B 照射後に酸素分圧を高めても酸素効果はみられない。

C 腫瘍細胞にみられ、正常細胞ではみられない。

D 培養細胞だけでなく、細菌でも酸素効果がみられる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 間接効果はラジカルの作用であるので、一般に高 LET 放射線の方が効果が少ない。

B 正 照射時に酸素があることが必要である。

C 誤 腫瘍細胞は低酸素細胞なので感受性が低く、正常細胞は血管から酸素が供給され酸素濃度が高い。放射線によるがん治療において、このがんの低酸素細胞を効率的に死滅させる方法の研究が進められている。

D 正 酸素は増感剤であり、細菌においても酸素効果はみられる。

問5

放射線による DNA 損傷とその修復に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 架橋は放射線に特異的な損傷である。

B X線とγ線では、DNA 損傷の種類は同じである。

C 1 本鎖切断より 2 本鎖切断が生じやすい。

D 非相同末端結合修復は 2 本鎖切断を修復する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 正 化学物質でも生じる。

B 誤 X線とγ線は同じ光子であり、生じる DNA 損傷に差はない。

C 正 2本鎖切断は1本鎖切断 よりも生じにくく、10 倍以上のエネルギーを必要とする。

D 誤 主に G1 期に発現する 2 本鎖切断修復機構である。

問6

次の遺伝性疾患由来の細胞のうち、放射線に対して高い致死感受性を示すものの組み合わせはどれか。

A 色素性乾皮症

B レッシュ・ナイハン症候群

C フェニルケトン症候群

D 毛細血管拡張性運動失調症

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 4

A 誤 色素性乾皮症は紫外線によるチミジンダイマーの形成が起きて起こる。

B 誤 レッシュ・ナイハン症候群は伴性劣性遺伝で、男子に限って発症する先天性プリン代謝異常で、放射線とは無関係である。

C 誤 フェニルケトン症候群はフェニルアラニン(アミノ酸)が代謝されず、体内にたまる常染色体劣性遺伝病。フェニルアラニンが体内にたまると、フェニルケトンという物質が尿に排泄されるため、この病名がついている。放射線とは無関係である。

D 正 毛細血管拡張性運動失調症は常染色体劣性遺伝形式をとり、運動失調と毛細血管拡張、細胞性免疫不全を呈する疾患である。これは、ATM遺伝子の異常により、細胞周期の進行が止まらなくなることが原因であり、免疫グロブリンAやEの欠失、Tリンパ球の欠失などがみられる。毛細血管拡張性運動失調症はチェックポイントを欠き、DNA損傷を修復できないため、高率に発がんする。また放射線に対して高感受性を示す。

問7

放射線による細胞の増殖死に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 照射された後に分裂を経ないで起こる細胞死を増殖死という。

B 増殖死はコロニー形成法で調べることができる。

C 増殖死に伴い、しばしば巨細胞が観察される。

D アポトーシスは増殖死の一つである。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

A 誤 分裂を経ずに死に至るのは間期死である。

B 正 増殖してできたコロニーの割合から生存率を調べる。

C 正 増殖死に至るまで数回の分裂が起こるが、この際にうまく分かれないと巨細胞が生じる。

D 誤 アポトーシスは、高感受性の間期死である。

問8

X線による突然変異に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 点突然変異は遺伝性疾患の原因となる。

B 自然突然変異に比べて欠失型が少ない。

C 培養細胞では HPRT 遺伝子の変異が検出によく用いられる。

D α線による突然変異に比べて単位吸収線量当たりの誘発率が高い。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 点突然変異は遺伝性疾患の原因となる。

B 誤 欠失が生じるには 2 本鎖切断が生じる必要があり、放射線で誘発される割合が多い。

C 正 HAT 培地(ヒポキサチン、アミノプテリン、チミジンを含む)において、野生株はヒポキサチンを HPRT によってイノシン酸に変換できるため致死的とならないが、HPRT の欠損株では致死的になる。この性質を利用して、HPRT 遺伝子の変異を調べる。

D 誤 α線の方が高 LET であり、同一線量の場合、密に損傷が起こるため、修復されにくく、突然変異となりやすい。

問9

放射線による染色体異常に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A G0 期リンパ球の被ばくでは染色分体型異常が主に生じる。

B 末梢血リンパ球の染色体異常の出現頻度から被ばく線量が推定できる。

C 二動原体は発がんの主な原因である。

D 転座や逆位は安定型異常である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 G0 期は G1 期が長く続く状態をいい、G1 期に被ばくすると、S 期に異常がそのまま合成されるので、染色体型の異常となる。

B 正 主に二動原体染色体を観察することにより生物学的線量評価を行う。

C 誤 二動原体染色体は不安定型の異常で長く残らないので、がんの主な原因とならない。

D 正 転座、逆位、欠失は安定型で、二動原体染色体、環状型は不安定型である。

問10

低 LET 放射線被ばくにおける致死感受性に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 細胞周期の中で G1 期前半が最も感受性が高い。

B 一般に、同一線量を低線量率で照射すると致死感受性が低下する。

C 水晶体上皮細胞は心筋細胞に比べて致死感受性が高い。

D ラジカルスカベンジャーは致死感受性を高める。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

A 誤 G2 期後半から M 期の感受性が最も高い。

B 正 亜致死損傷(SLD)からの回復があるため、感受性は低下する。

C 正 心筋は筋肉細胞であり、放射線感受性はかなり低い。

D 誤 ラジカルスカベンジャーはラジカルを除去するので、感受性を低くする。

問11

6 Gy のγ線急性被ばくにおいて被ばく者の半数以上で認められる前駆症状のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 嘔吐

B 呼吸障害

C 意識障害

D 発熱

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

6 Gy の被ばくによる急性放射線障害の症状として、発熱、下痢・嘔吐、めまい、血圧低下などがみられる。

問12

γ線全身被ばくによる急性放射線症に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 前駆期、発症期、回復期/死亡の3つの時期に分けられる。

B ヒトの半致死線量は 3.5 ~ 4.5 Gy である。

C 4 Gy の被ばく後 24 時間以内に末梢血中の顆粒球数が上昇する。

D 末梢血中のリンパ球の減少は 1 Gy 未満の被ばくでは認められない。

E 20 Gy の被ばくでは消化管障害が主な死因となる。

1 ABDのみ 2 ABEのみ 3 ACDのみ 4 BCEのみ 5 CDEのみ

解答 4

A 誤 前駆期、潜伏期、発症期、回復期/死亡の 4 期に分けられる。

B 正 ヒトの半致死線量(LD(50/60))は 3 ~ 5 Gy とされている。

C 正 幼若な顆粒球が血液プールから放出され、初期白血球増加がみられることがある。

D 誤 末梢リンパ球減少のしきい線量は 0.25 ~ 0.5 Gy である。

E 正 この線量を超えると中枢神経障害がみられる。

問13

次の放射線障害のうち、8 Gy のγ線急性局所被ばくで認められるものの組み合わせはどれか。

A 男性の永久不妊

B 女性の永久不妊

C 一時的脱毛

D 皮膚の潰瘍

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

A 正 男性の永久不妊・・・しきい線量は 3.5 Gy ~ 6 Gy

B 正 女性の永久不妊・・・しきい線量は 2.5 ~ 6 Gy

C 正 一時的脱毛・・・しきい線量は 3 Gy 以上

D 誤 皮膚の潰瘍・・・しきい線量は潰瘍で 10 Gy 以上。難治性潰瘍では 20 Gy 以上

問14

放射線被ばくによる白内障に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 潜伏期は線量が大きくなると短くなる。

B 3 Gy の X線被ばくでは、被ばく後 1 ヵ月以内に生じる。

C 線量率が低下するとしきい線量は低下する。

D 進行した放射線白内障では、他の原因による白内障と区別できない。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 潜伏期間は線量が大きい方が一時的に短くなる。

B 誤 白内障は代表的な晩発性影響である。

C 誤 線量率が低くなると影響は小さくなるので、しきい線量は大きくなる。

D 正 放射線誘発の白内障と老人性白内障の区別はできない。

問15

生殖腺の放射線障害に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 成人女性では年齢を増すと少ない線量で永久不妊になる。

B 男性ホルモン産生に関係する間質細胞は、精原細胞よりも放射線致死感受性が高い。

C 精子は精原細胞よりも放射線致死感受性が高い。

D 一時的不妊のしきい線量は女性よりも男性で低い

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 20 歳代では 7 ~ 8 Gy、40歳代では 3 Gy 程度である。

B 誤 一時的不妊のしきい線量が低いことから分かるように、精原細胞の感受性は高い。

C 誤 致死感受性は分化が進む、つまり成熟するほど低くなる。

D 正 一時的不妊のしきい線量は、男性で 0.15 Gy、女性では 0.65 ~ 1.5 Gy

問16

X線による皮膚障害に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 被ばくしてすぐに痛みを感じる。

B 同程度の障害を起こすのに必要なエネルギーは熱傷の場合よりも大きい。

C 同一吸収線量を分割して被ばくした場合は、1回で被ばくした場合に比べてしきい線量が高くなる。

D 初期紅斑のしきい線量はおおよそ 2 Gy である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 初期に痛みがないため、どの部位が被ばくしたかを早く把握することが重要となる。

B 誤 同じ障害を起こすのに必要な放射線のエネルギーは 1/40 程度である。

C 正 分割被ばくの場合は、修復があるため、症状は軽くなる。

D 正 初期紅斑のしきい線量は一般に 3 Gy とされているが、2 Gy という資料もあるため、A、B の選択肢が明らかに誤りなためこの解は正とする。

問17

γ線で唾液腺が 8 Gy 急性被ばくして 48 時間以内に認められるものとして、正しいものの組み合わせはどれか。

A 血液中へのアミラーゼの逸脱

B 唾液腺の腫脹

C 唾液腺の痛み

D 唾液腺からの出血

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 1

本問は唾液腺の被ばくという設問であるが、全身急性放射線症の診断として、唾液腺の腫脹と唾液腺の痛み(疼痛・圧痛)は、前駆症状として、診断上重要な項目とされている。さらに血中アミラーゼの逸脱(上昇)も被ばく 2 ~ 3 日間に観察される。血清アミラーゼの上昇は唾液腺障害の指標となる。

問18

放射性ヨウ素の急性摂取による内部被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 10 Gy の被ばくで甲状腺機能低下症になる。

B 1 mGy の被ばくで甲状腺機能亢進症になる。

C 吸入により体内に摂取された放射性ヨウ素は主に尿により体外に排泄される。

D 放射性ヨウ素吸入摂取の 24 時間後に安定ヨウ素剤を利用すれば、放射性ヨウ素の甲状腺への集積はほぼ完全に抑制される。

1 ABDのみ 2 ABのみ 3 ACのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 3

A 正 甲状腺機能低下症のしきい線量は 5 Gy。

B 誤 甲状腺機能亢進症の治療のために、放射性ヨウ素を用いることはあるが、放射線被ばくで亢進症は起こらない。

C 正 ヨウ素は尿から排泄される。

D 誤 安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素の吸入の可能性のある 24 時間前に服用するのがよく、吸入後でも 2 時間までなら甲状腺への集積の低減に有効である。

問19

X線被ばくによる放射線肺炎に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射線肺炎では呼吸困難が起きない。

B 全身被ばくでは骨髄障害よりも高い線量で起こる。

C 一般に、肺の一部が被ばくしても肺全体に炎症が生じる。

D 高線量では放射線肺炎が発生した後に肺線維症が生じる。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 4

A 誤 炎症が起こるので、呼吸困難を伴う。

B 正 放射線肺炎のしきい線量は 6 ~ 8 Gy。骨髄障害は 0.5 Gy 程度。

C 誤 肺の部分被ばくの場合は、全照射野の時に比べてしきい線量は高くなる。障害が起こるのは照射を受けた部分である。

D 正 急性の放射線肺炎(炎症)の後、線維化が始まる。

問20

放射線被ばくによる乳がんの発生に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせは、次のうちどれか。

A 自然発生した乳がんと異なる病理学的特徴を持つ。

B 被ばく後約 30 年してから増加する。

C 被ばく時年齢が低いほど発生の過剰相対リスクが高い。

D 女性ホルモンが影響する。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 他のがんと同様に、放射線誘発であることの特徴はない。

B 誤 被ばく時年齢を固定すると、ERR は到達年齢または被ばくからの経過時間のどちらにも関連しない傾向を示す。つまり、潜伏期間は 30 年とは言えない。

C 正 被ばく時年齢が低いほど過剰相対リスクが高い。

D 正 放射線関連の乳がんは一般の年齢別集団の発生率に密接に関連している(例えば、出産歴の有無など)ということから、女性ホルモンとの関連がある。

問21

次のうち、原爆被爆者におけるがんの発生の過剰相対リスクが高い組織・臓器の組み合わせはどれか。

A 肺

B 子宮

C 膵臓

D 腎臓

E 骨髄(赤色)

1 AとB 2 AとE 3 BとC 4 CとD 5 DとE

解答 2

相対リスクとは、自然発生数の何倍に増えるかという考え方で、過剰がつく場合は自然発生数をのぞいて考える。

問22

原爆被爆者における放射線誘発がんに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 被ばく線量と白血病の過剰絶対リスクの関係は、直線ー2次曲線(LQ)モデルによくあてはまる。

B 被ばく線量と固形がんの過剰相対リスクの関係は、直線(L)モデルによくあてはまる。

C 最も潜伏期の短いのは、白血病である。

D 固形がんの過剰相対リスクは、被爆時年齢が若手の方が恒例の場合よりも高い。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

リスク予測モデル

発がんによる生涯リスクの推定で将来の発生数を現時点での発生数から予測するための発現分布モデル。

リスク係数

単位線量あたりのがん発生率。リスク係数を算定する場合、全てのガンに直線モデルを適用して高線量・高線量域からずれを補正するために線量・線量率効果係数(DDREF)として 2 を採用している。この線量・線量率効果係数(DDREF)は高線量・高線量率データを低線量・低線量率に外挿するための係数。

絶対リスク予測モデル

線量あたりどれだけ影響が発生するかという評価法。自然発生が少ない白血病が適合。絶対リスクの臓器間の大小は単位線量当たりの発生数として表すことができる。年齢にかかわらず一定で、年齢が関わるのは相対リスク。

相対リスク予測モデル

線量あたり自然発生率の何倍の影響が発生するという評価法。自然発生が多い固形がんが適用。相対リスクの大小は自然発生が多いものは小さくなり、自然発生が少ないものは大きくなる。 日本人では白血病の自然発生は少なく、胃がんは多い。2012年に発表された寿命調査第14報では、全固形がんの過剰相対リスクは 1 Gy あたり 0.42 とされている。したがって相対リスクは 1.42 となる。

補足

相対リスクは自然発生の何倍かを考えており、過剰相対リスクは自然発生分の 1 を引いた値である。したがって相対リスクと過剰相対リスクの差は常に 1 である。また相対リスクは白血病が最も高くなる。 相対リスクの大小関係は自然発生が多いものは小さく、少ないものは大きい。

 

原爆被爆者の疫学調査

① 発がんの増加が認められる臓器・・・胃、肺、白血病、肝、乳房。認められていない臓器・・・膵、直腸、胆、子宮。前立腺、腎、喉頭。

② ヒトでは遺伝的影響の増加は有意ではない。

③ 組織荷重係数の大きさはガンの感受性を表している。

④ 組織荷重係数は低線量被ばくによる確率的影響を評価する。

⑤ 器官形成期の被ばくの影響で小頭症が胎児奇形で唯一確認されている。その他に精神発達遅滞、低身長もあげられる。

白血病と固形ガンの特徴

白血病

① 造血細胞由来の腫瘍

② 原爆被ばく後最小潜伏期間 2年、ピーク 6 ~ 7年

③ 白血病では潜伏期間は被ばく線量が大きい程短い

④ 被ばく時の年齢が若い程、潜伏期間が短い

⑤ LQ(直線-2次曲線)モデルがよく適合する・・・低LET放射線の場合、被ばく線量と不安定型染色体異常の頻度の関係はLQモデルに当てはまる。

⑥ 絶対リスク予測モデルが適合

固形ガン

① 最少潜伏期間は 10 年

② 潜伏期間は年齢によって複雑

③ 若年被ばくの方が潜伏期間が短い

④ 直線モデル(Lモデル)が適合・・・X線による線量の突然変異頻度と吸収線量との関係は直線的とされている。

⑤ 相対リスク予測モデルが適合

A 正 白血病の過剰絶対リスク(EAR)の線量ー反応関係は、下に凸の曲線(直線ー2次関数フィット型)を示す。

B 正 固形がん死亡率の過剰相対リスク(ERR)は、線量範囲 0 ~ 3 Sv で直線を示す。

C 正 白血病の最小潜伏期間は 2 年とされている。固形がんは 10 年。

D 正 相対リスクであるため、がんの発症時の年齢における自然発生率と関係する。高齢になれば、自然発生率が増えるため、相対リスクとしては大きくなりにくい。また、高齢での被ばくでは、がんの潜伏期が長いため、他の原因で死亡してしまうという要因もある。

問23

次の放射性核種と主な分布臓器の組み合わせで正しいものはどれか。

A 32P – 脳

B 90Sr – 骨

C 137Cs – 全身

D 222Rn – 骨

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 3

放射性核種の臓器親和性を下の表に示す。

放射性核種の臓器親和性

 

核種 臓器親和性
32P , 45Ca , 65Zn , 90Sr , 226Ra , 232Th , 238U , 239Pu , 241Am
40K , 137Cs 筋肉
222Rn , 232Th , 238U , 239Pu
53Fe , 59Fe 骨髄
3H , 14C , 24Na , 40K , 137Cs 全身
59Fe , 60Co , 65Zn , 232Th , 239Pu 肝臓
131I 甲状腺
59Fe 脾臓

問24

内部被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 放射性核種の摂取経路として、経皮(創傷を含む)、経気道(吸入)および経口である。

B 主として遺伝的影響をもたらす。

C 生物学的半減期が影響する。

D 飛程の短い放射線の影響は小さい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正

B 誤 摂取後は臓器親和性に従い蓄積するので、生殖腺の被ばくが大きいということはない。

C 正 同じ生物学的半減期で、同じエネルギーを放出する核種であれば、生物学的半減期が短い核種の方が内部被ばく線量は小さくなる。

D 誤 1 壊変あたり同じエネルギーを放出するとすれば、飛程の短いα線はすべてのエネルギーを体内に落とすが、γ線であれば体外に飛び出していくものもある。

問25

預託実効線量に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 成人の場合、組織・臓器が受ける吸収線量率を 50 年にわたって積算した線量である。

B 単位はシーベルトである。

C 預託等価線量とその組織・臓器の組織荷重係数との積の総和として求められる。

D 長期にわたる外部被ばくを評価するために用いられる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

A 誤 預託実効線量は体内に取り込まれた放射性物質による内部被ばくの実効線量をおよそ一生分について積算した値。成人では摂取後 50 年間、子供は 70 歳になるまでの年数で計算する。

B 正

C 正

D 誤 預託線量は、内部被ばく線量の概念である。

問26

器官形成期における胎内被ばくに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 胎児に奇形が発生する可能性が妊娠期間中で最も高い。

B 出生前死亡の頻度が高くなる。

C 発がんリスクは増加しない。

D 精神遅滞は起こらない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

胎児期の放射線影響を下の表に示す。

胎児期の放射線影響

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形 0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延 0.5 ~ 1.0
全期間 発がんと遺伝的影響

A 正

B 正 奇形の発生が起こるため、その結果として出生前死亡の頻度が高くなる。

C 誤 胎生期の全期間を通じて、発がん(確率的影響)のリスクは存在する。

D 誤 精神発達遅滞は 受精 8 週 ~ 受精 25 週 の被ばくにより起こると考えられている。

問27

器官形成期の胎児がγ線全身被ばくした場合に、奇形発生のしきい線量[Gy]として適切なものはどれか。

1 0.01

2 0.03

3 0.1

4 0.5

5 1

解答 3

胎児期の放射線影響

胎児期の区分 期間 発生する影響 しきい線量(Gy)
着床前期 受精 8 日まで 胚死亡  0.1
器官形成期 受精 9 日 ~ 受精 8 週 奇形 0.15
胎児期 受精 8 週 ~ 受精 25 週 精神発達遅滞  0.2 ~ 0.4
受精 8 週 ~ 受精 40 週 発育遅延 0.5 ~ 1.0
全期間 発がんと遺伝的影響

問28

放射線荷重係数に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 電子線の場合はエネルギーもよって値が異なる。

B 確定的影響を評価するための係数である。

C 線量率に関わらず同一の値が与えられている。

D X線とγ線については同一の値が与えられている。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

放射線荷重係数を下に示す。

放射線荷重係数 ICRP 1990

 光子  放射線荷重係数
 光子(X線、γ線)  1
 電子、β線、μ粒子  1
 中性子(10 keV 未満)  5
 中性子(10 keV ~ 100 keV まで)  10
 中性子(100 keVを超え ~ 2 MeV まで)  20
 中性子(2 MeV ~ 20 MeV まで)  10
 中性子(20 MeV 未満)  5
 陽子線(2 MeVを越える)  5
 陽子線  2
 α粒子、核分裂片、重原子  20

放射線荷重係数 ICRP 2007

 光子  放射線荷重係数
 光子(X線、γ線)  1
 電子、β線、μ粒子  1
 中性子(エネルギーの連続関数で設定)  2.5 ~ 20
 陽子線  2
 α粒子、核分裂片、重原子  20

下の表に詳しく示す。

A 誤 エネルギーによって値が変化するのは中性子だけである。

B 誤 確率的影響を評価するための実効線量を評価するための係数。

C 正 線量率については、線量・線量率効果係数(DDREF)で考慮している。

D 正 ICRP pub.103 では、光子としてX線もγ線も 1 が与えられている。

問29

RBEに関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 基準放射線としては、一般に 200 kV ~ 250 kV の X線が用いられる。

B 細胞致死、突然変異誘発、発がんなど指標によって値が異なる。

C 照射時の酸素濃度が変化してもその値は変わらない。

D 線量率が変化してもその値は変わらない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 200 ~ 250 kV とあるように、管電圧であることに注意。

B 正 生物作用ごとに、基準放射線との影響の大きさ(違い)を見るための指標。

C 誤 照射条件が変われば影響の大きさは変わるので、RBE の値は変化する。

D 誤 線量率も変われば RBE の値は変化する。

問30

γ線と比べた速中性子の生物作用の特徴として、正しいものの組み合わせはどれか。

A 致死作用の細胞周期依存性が大きい。

B 間接作用の割合が大きい。

C 修復されにくい DNA 損傷を引き起こす。

D 細胞生存率曲線において肩が小さい。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 高 LET 放射線の方が間接作用の修飾をはじめ、さまざまな影響の修飾は小さい。

B 誤 高 LET 放射線では、直接作用の割合が大きくなる。

C 正 RBE が大きいため、2 本鎖切断などより重大な損傷を引き起こす。

D 正 亜致死損傷が少ないため、生存率曲線の肩は小さくなる。

 

放射線被ばくによる急性障害と晩発影響についての記述

高線量放射線を一度に全身被ばくしたような場合、数週間以内に現れる障害を急性障害という。占領によって症状は異なるが、典型的な経過は以下の 4 つの病期に分けられる。被ばく直後から数時間以内に悪心、嘔吐、発熱など非特異的な症状が現れる前駆期、これらの症状が一時的に消失する潜伏期、骨髄や消化管障害、脱水など多彩な症状が現れる発症期、その後回復期あるいは死亡の 4 期である。障害の現れ方やその時期は、線量及び臓器・組織によって異なる。例えば、ヒトが高線量のγ線を全身被ばくしても医療処置がなされないと、3 ~ 10 Gy では 3 ~ 4 週間程度で骨髄の障害により、10 ~ 20 Gy では、1 ~ 2 週間程度で腸管の障害により死亡する危険性が高い。

 

解説

Ⅰ は急性放射線症についての出題である。前駆期は被ばく後 48 時間以内を指し、悪心、嘔吐、下痢、発熱、頭痛、意識障害等の症状が現れる。唾液腺の腫脹、圧痛および口腔粘膜の毛細血管拡張などが診察時の留意点と言われている。

 

臓器や組織の急性障害は、主に臓器・組織の実質細胞の死によって起こると考えられる。臓器や組織によって実質細胞の放射線感受性が違うために、障害を認めるようになるしきい線量も臓器や組織によって異なる。一般に、現れる障害の重篤度は、被ばくした線量が大きいと高い。1 回のγ線による被ばくでは、抹消血中のリンパ球数の減少は 0.5 Gy 以上の被ばくによって起こる。女性の永久不妊は 6 Gy 以上の生殖腺被ばくによって起こり、男性の永久不妊は 6 Gy 以上の生殖腺被ばくによって起こる。又、男性の一時的不妊のしきい線量は 0.15 Gy で、女性の一時的不妊が起こる線量は男性に比べて高い。

 

晩発影響としては、発がん、白内障、遺伝的影響などが挙げられる。発がんと遺伝的影響は、確率的影響と考えられている。一般に、被ばくしてから発がんまでの期間は固形がんでは白血病に比べて長い。白内障は確定的影響に分類され、水晶体の混濁による。遺伝的影響は放射線に被ばくした生殖細胞に遺伝子の突然変異や染色体異常が起こることによる。遺伝的影響のリスクの推定には倍加線量法と、線量効果関係を動物実験によって求め、 これをヒトに適用して行う直接法とがある。遺伝的影響のリスクは、倍加線量が大きいほど低く、一般的に線量率が低いほど低い。UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会) 2001 年報告では倍加線量を 1 Gy と見積もっている。

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験 化学問題・解説6

問1

ある短寿命核種(半減期 T [秒])を 1 半減期測定したところ、C カウントであった。測定終了時におけるこの核種の放射能[Bq]はいくらか。ただし、このときの検出効率は ε とし、数え落としは無いものとする。

1 C/(εT)

2 2・C/(εT)

3 (1/2)・C/(εT)

4 (1/√2)・C/(εT)

5 (ln2)・C/(εT)

解答 5

1 半減期経過後は、壊変した原子数と残っている原子数が等しくなっている。壊変した原子数は、カウント数 C を検出効率 ε で割ることによって求められるので、残っている原子数を N とすると、N = C/ε・・・① となる。放射能 A は、 壊変定数 N から A = λN ・・・② と表される。①、②の式から A = λ・(C/ε) となり、壊変定数 λ は、半減期 T とすると λ = ln2/T で表されるので、A = (ln2)・C/(εT) となる。

問2

放射能で等量の 134Cs(半減期 2.0年)と 137Cs(半減期 30年)がある。10年後の 134Cs と 137Cs の原子数の比としてもっとも近い値は、次のうちどれか。ただし 3√2 = 1.26 とする。

1 0.0013:1

2 0.0026:1

3 0.039:1

4 0.067:1

5 0.13:1

解答 2

半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は、A = 0.693N/T と表される。よって、原子数 N は N = AT/0.693 となり、放射能と半減期の積 AT に比例することがわかる。10 年後には、134Cs では 5半減期経過しているため放射能は (1/2)^5 = 1/32 になり、137Cs では 1/3 半減期経過しているため放射能は、(1/2)^(1/3) = 1/1.26 になる。よって、(134Cs の AT)/(137Cs の AT) を求めると、(1/32×2)/(1/1.26×30) = 0.0026 となるため、原子数比は 0.0026:1 となる。

問3

半減期が 12.5 億年(3.9×10^16 秒)の放射性同位体 3.9 mg の放射能が 1040 Bq であった。この同位体のモル質量[g/mol]にもっとも近い値はどれか。

1 40

2 60

3 80

4 120

5 140

解答 1

半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は A = 0.693N/T と表される。また、原子数 N は質量数 M、重量 W グラムと以下の関係がある。 N = (W/M) × 6.02 × 10^23。これにより M = (0.693 × W)/AT × 6.02 × 10^23 の式で解ける。 これに代入すると M = 40 となる。

問4

次の放射性核種を、比放射能[Bq/g]の大きい順に並べたものはどれか。ただし、それぞれの核種の半減期を 14C は 5700 年、60Co は 5.3 年、32P は 0.04 年とする。

A 14C

B 32P

C 60Co

1 A > B > C

2 B > A > C

3 B > C > A

4 C > B > A

5 C > A > B

解答 3

比放射能 A/W = (0.693N/T) × (6.02×10^23)/MN = (0.693×6.02×10^23)/TM となり、半減期と原子数の積 TM と反比例の関係がある。よって TM を求めると次のようになる。14C:5730 × 14 = 79800。32P:0.04 × 32 = 1.28。 60Co:5.3 × 60 = 318 となり、B > C > A となる。

問5

比放射能 10 kBq/mg の 14CH3(COOH) に C2H5(OH) と少量の濃硫酸を加えて加熱した時に生成する酢酸エチル 14CH3(COO)C2H5 の比放射能[kBq/mg] にもっとも近いものはどれか。

1 3.4

2 6.8

3 8.2

4 14.7

5 18.1

解答 2

反応式は次のようになる。CH3(COOH) + C2H5(OH) → CH3(COO)C2H5 + H2O 14CH3(COOH) から14CH3(COO)C2H5 は同物質量生成するため、14C の全量が CH3(COO)C2H5 になることが分かる。14C の比放射能 10 kBq/mg では、 14C/12C の存在比は無視できるほど小さい。よって、それぞれの分子量は、分子量(CH3(COOH)) = 60、分子量(CH3(COO)C2H5) = 88 として計算できる。よって、60 mg のCH3(COOH) から 88 mg のCH3(COO)C2H5 が生成することになるので、比放射能 10 kBq/mg の14CH3(COOH) からは、 10 × (60÷88) = 6.8 kBq/mg noscriptCH3(COO)C2H5 が生成する。

問6

次の炭化水素の 14C/12C 比がすべて等しいとき、各化合物 1 グラム中の 14C 放射能が最も大きいものと、各化合物 1 モル中の 14C 放射能が最も大きいものとの正しい組み合わせはどれか。

A メタン(CH4)

B エタン(C2H6)

C エチレン(C2H4)

D アセチレン(C2H2)

E プロパン(C3H8)

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとE 5 DとE

解答 5

分子量 M の物質 1 モル(=6.02×10^23 個)の質量が M g であるので、分子量が小さいほど 1 g 中に含まれる物質量は多くなる。それぞれの 1 分子中の炭素数および、炭素数を分子量で割った値は次のようになる。

A メタン(CH4)・・・炭素数 1、炭素数/分子量 = 1/16

B エタン(C2H6)・・・炭素数 2、炭素数/分子量 = 2/30 = 1/15

C エチレン(C2H4)・・・炭素数 2、炭素数/分子量 = 2/28 = 1/14

D アセチレン(C2H2)・・・炭素数 2、炭素数/分子量 = 2/26 = 1/13

E プロパン(C3H8)・・・炭素数 3、炭素数/分子量 = 3/44 ≒ 1/14.7

1 g 中に含まれる 14C 放射能が最も多くなるのは、炭素数/分子量が最も大きいアセチレンになる。また、1 モル中に含まれる 14C 放射能が最も多くなるのは、1 分子中に炭素を最も多く含むプロパン(C3H8)である。

問7

放射性親核種 1 は半減期 T1 で壊変して娘核種 2 になり、生成した娘核種 2 はさらに半減期 T2 で壊変して安定核種 3 になる。この逐次壊変で、T1 > T2 であり、娘核種を分離除去した親核種 1 から生成する娘核種 2 の放射能が最大になるときを t(max) とすると、次の記述のうち 正しいものの組み合わせはどれか。

A t(max) では、娘核種 2 の生成速度と壊変速度は等しい。

B t(max) では、親核種 1 の放射能と娘核種 2 の放射能は等しい。

C t(max) の後は、娘核種 2 の放射能は親核種 1 の放射能を常に上回る。

D t(max) の後は、娘核種 2 の放射能は次第に半減期 T2 で減衰するようになる。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

親核種の原子数を N(1)、壊変定数を λ(1)、放射能を A(1)、娘核種の原子数を N(2)、壊変定数を λ(2)、放射能を A(2) とする。

A 正 N2 の時間変化は、親核種の壊変速度と娘核種の壊変速度の差であるので、次のように表される。dN(2)/dt = λ(1)N(1) – λ(2)N(2)。また、親核種の壊変=娘核種の生成である。t(max) となるのは、dN(2)/dt = 0 のときであるので、娘核種の生成速度=娘核種の壊変速度となる。

B 正 親核種の壊変により娘核種が生成する。t(max) の前は親核種の放射能 A1 の方が大きいが、t(max) を境に逆転する。

C 正 t(max) の後は次のような関係が成り立つ。N(2)/N(1) = λ(1)/[λ(2)-λ(1)]。A(2)/A(1) = [N(2)λ(2)]/[N(1)λ(1)] = 1 + [N(2)λ(2)]/[N(1)λ(1)] = 1 + N(2)/N(1) となり、A(2)/A(1) は 1 より大きくなる。よって、t(max) の後は常に A(2) > A(1) の関係が成り立つ。

D 誤 t(max) の後十分な時間がたつと、娘核種 2 の放射能は次第に親核種の半減期 T1 で減衰するようになる。

問8

精製した 140Ba から生成した 140La の放射能が、精製時より 25.6 日後に 5.0 kBq であった。精製時における 140Ba の放射能[kBq]として最も近いものはどれか。ただし、140Ba の半減期を 12.8 日、140La の半減期を 1.7 日とする。

1 2

2 7

3 12

4 17

5 22

解答 4

親核種 140Ba の半減期 12.8 日 > 娘核種 140Ba の半減期 1.7 日 の関係が成り立ち、親核種 140Ba を精製してから娘核種の約 15 半減期が経過しているため、過渡平衡が成立している。このとき、親核種の放射能を A(1)、半減期を T(1) 秒、娘核種の 放射能を A(2)、半減期を T(2) とすると、次のような関係が成り立つ。A(2) = [A(1)T(1)]/[T(1)-T(2)]。よって精製後 25.6 日後の親核種の放射能は、5.0×10^3 = [A(1)×12.8×24×60×60]/[(12.8-1.7)×24×60×60] A(1) = 4.3 × 10^3 [Bq] となる。精製時は 25.6 日 = 親核種 140Ba の 2 半減期前であるので、(1/2)^2 で割ると、精製時の放射能が求まり、1.7 × 10^4[Bq] = 17[kBq] となる。

 

問9

ある小型アイソトープ電池には、α壊変する 238Pu(半減期87.7年、2.8×10^9秒)が 1.0 mg 用いられている。放出されるα粒子のエネルギーは 1 壊変当たり 9.0 × 10^(-13) J で、このすべてが利用されるとすると、この電池の出力[mW]として最も近い値はどれか。

1 0.07

2 0.14

3 0.28

4 0.56

5 1.12

解答 4

1 J のエネルギーは、1 W の仕事率を 1秒間行った時の仕事と定義されることから、J = W・s、すなわちW = J/s の関係にある。半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は、A = 0.693N/T ・・・①と表される。また、原子数 N は質量数 M、重量 W グラム と次のような関係がある。N = (W/M) × 6.02 × 10^23・・・②。①、②の式より、放射能 A は次のように表される。A = (0.693×W)/(M×T) ×6.02 × 10^23。それぞれに数値を代入し計算すると、239Pu の放射能 A = 6.23 × 10^8 Bq となる。1 秒間当たり 9.0 × 10^(-13) J のエネルギーを持つ α線が 6.23 × 10^8 個放出されるため、これを出力に換算すると、9.0 × 10^(-13)[J] × 6.23 × 10^8[個/s] = 5.6 × 10^(-3)[W] = 0.56[mW] となる。

問10

ある物質を原子炉で 40 分間中性子照射すると、半減期 20 分の放射性核種が 3.0 × 10^5 Bq 生成する。その物質を同じ照射条件の下で 10 分間照射した時に生成する放射能[Bq]は、次のうちどれか。

1 7.5 × 10^4

2 1.2 × 10^5

3 1.5 × 10^5

4 2.0 × 10^5

5 2.8 × 10^5

解答 2

中性子照射によって生成する放射性核種の放射能 A は、ターゲット核の数 n、照射粒子フルエンス率 f、反応断面積σ、生成核 T、照射時間 t と次の関係がある。A = nfσ[1 – (1/2)^(t/T)]。40 分間の中性子照射で生成した半減期 20 分の放射性核種 が 3.0 × 10^5 Bq であるので、3.0×10^5 = nfσ[1-(1/2)^(40/20)] nfσ = 4 × 10^5 よって、10 分間の同じ照射条件で生成する半減期 20 分の放射性核種の放射能 A は、A = 4 × 10^5 × [1-(1/2)^(10/20)] = 4 × 10^5 × [1-(1/√2)] = 1.2 × 10^5 Bq となる。

問11

元素の周期表で 4 族の Zr と Hf の熱中性子断面積は。それぞれ 0.2 barn と 100 barn である。それぞれ 100 mg/cm2 の Zr板又は Hf 板を熱中性子が透過した時、Zr 板での熱中性子束の吸収率 A(Zr) と Hf 板での熱中性子束の吸収率 A(Hf) の比、すなわち A(Zr)/A(Hf) に最も近い値は 次のうちどれか。ただし、Zr と Hf の原子量は、それぞれ 91 と 178 とする。

1 4 × 10^(-3)

2 2 × 10^(-2)

3 4 × 10^(-1)

4 2.5 × 10^2

5 3 × 10^3

解答 1

面密度はそれぞれ 100 mg/cm2 と等しいが、Zr と Hf で原子量が異なるため、単位面積あたりに存在する原子数は異なる。原子量 M の原子が 1 mol 集まると M グラムになるため、単位面積あたりに存在する原子数は原子量の比に反比例する。よって、 吸収率の比 A(Zr)/A(Hf) は、それぞれの吸収断面積をそれぞれの原子量の比で割ったものになる。A(Zr)/A(Hf) = (0.2/91)/(100/178) = 4 × 10^(-3)

問12

炭素の同位体に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 11C は陽電子放出断層撮影(PET)に用いられる。

B 12C は原子量の基準となっている。

C 13C は核磁気共鳴分光法で用いられる。

D 14C は大気中では 14CO2 として存在する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 11C は半減期 20 分の短半減期陽電子放出核種であり、PET に用いられる。他に用いられる核種として、13N(半減期 10 分)、15O(半減期 2.0 分)、18F(半減期 110 分)がある。

B 正 現在の IUPAC(国際純正・応用化学連合)の定義では、12C 原子 1 個の質量の 1/12 を原子量と定めている。

C 正 核磁気共鳴分光法(NMR)では、1H や 13C のような磁気核原子を利用して有機分子の構造を決定する。12C は非磁気核である。

D 正 宇宙線により常時生成している 14CO2 が植物に取り込まれることを利用して、14C 法の年代測定が行われている。

問13

125I と 131I に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 同一放射能の 125I と 131I を比較すると、原子数は 131 の方が多い。

B 131I は 235U んも熱中性子核分裂により生成する。

C ラジオイムノアッセイに最も多く用いられるのは 125I である。

D 125I は EC 壊変してγ線を放出する。

1 ABCのみ 2 ABのみ 3 ADのみ 4 CDのみ 5 BCDのみ

解答 5

A 誤 半減期を T、原子数を N とすると、放射能 A は、A = 0.693N/T と表され、原子数 N は、N = AT/0.693 となる。放射能が同一の場合、原子数 N は半減期 T に比例する。125I の半減期は 59 日、131I の半減期は 8.0 日であるので、125I と 131I の原子数は、 0.693N(125)/59 = 0.693N(131)/8.0 N(125) = 59/8.0 × N(131) となり、125I の原子数は、131I の 7.4 倍程度になる。

B 正 131I は、235U の熱中性子による核分裂で 2.89 % の収率で得られる。質量 95 付近と 138 付近の原子数に収率の極大(収率約 6 %)がある。

C 正 ラジオイムノアッセイは、抗体ー抗原反応を利用した抗原の定量法である。抗原の標識には主に、半減期が 60 日でγ線を放出する放射性ヨウ素の 125I が用いられる。

D 正 125I は EC 壊変して 125Te になる。その際に、35.5 keV のγ線を 6.7 % の割合で放出する。

問14

放射性元素に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A テクネチウム(Tc)はマンガン(Mn)の同族元素である。

B ラドン(Rn)はウラン(U)の同族元素である。

C プロメチウム(Pm)はアクチノイド元素である。

D トリウム(Th)はアクチノイド元素である。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 3

周期表を覚えておく必要がある。

A 正 ともに第 7 族元素である。

B 誤 Rn は希ガス(第 18 族元素)、U はアクチノイド元素(第 3 族元素)である。

C 誤 Pm はランタノイド元素である。

D 正

問15

γ線を放出しない核種のみの組み合わせは、次のうちどれか。

1 32P、55Fe、63Ni

2 3H、14C、134Cs

3 33P、35S、59Fe

4 24Na、36Cl、45Ca

5 54Mn、60Co、90Sr

解答 4

下記に表を示す。

放射性同位体特性表

 

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
36Cl 3.0×10^5y 0.71  ー β+ , β- , EC  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
55Fe EC
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
63Ni 100y 0.067  ー β-  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
134Cs 2.1y 2.06  ー β-  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問16

次のうち、アルカリ金属元素の同位体を生成する反応の組み合わせどれか。

A 10B(n,α)

B 24Mg(d,α)

C 40(α,p)

D 81Br(α,2n)

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 10B(n,α)7Li

B 正 24Mg(d,α)20Na

C 正 40(α,p)43K

D 正 81Br(α,2n)83Rb

問17

次の核種のうち、娘核種が放射性でないものはどれか。

1 90Sr

2 68Ge

3 99Mo

4 210Po

5 226Ra

解答 4

1 誤 90Sr → β- → 90Y:放射性

2 誤 68Ge → EC → 68Ga:放射性

3 誤 99Mo → β- → 99m:放射性

4 正 210Po → α → 206Pb:安定

5 誤 226Ra → α → 222Rn:放射性

問18

環境中の放射性核種に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 トリチウム T は海水中では T2O として存在する。

2 化石燃料の使用は大気中の二酸化炭素の 14C 濃度を上昇させる。

3 40K は太陽宇宙線照射で生成したものである。

4 99mTc は大部分が 235U の核分裂に由来する。

5 ネプチニウム系列のラドン同位体は 221Rn である。

解答 5

これも周期表を覚えておかなければ解けない。

1 誤 トリチウムは同位体交換を起こしやすいため、海水中ではほぼ HT0 の形で存在する。

2 誤 大気上層では宇宙線により一定量の 14C が常時生成されており、大気中の 14C の比放射能は一定である。化石燃料には 14C の取り込みが行われないため、14C の比放射能は大気中よりも小さくなっている。

3 誤 40K は、地球創生時から残存する一次放射性核種であり地殻中に多く存在する。

4 正 環境中の 99Tc(半減期 21 万年) は原子炉で用いられる 235U の核分裂生成物である 99mTc(半減期 6 時間)に由来するものが大部分である。

5 誤 ネプチニウム系列にラドンは含まれない。

問19

図は質量数 51 の壊変図を示している。次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 51Ti と 51Cr は、320 keV のγ線を放出する。

B 51Cr の壊変により V の特性 X 線が放出される。

C 51Ti の壊変は 511 keV の光子の放出を伴う。

D 51Cr の壊変は 609 keV のγ線の放出を伴う。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

A 正 51Ti のβ-壊変の 92 % 及び 51Cr の EC 壊変の 10% が 51V の 320 keV のエネルギー準位を経る。

B 正 EC 壊変では、壊変で生成した核の特性 X 線(またはオージエ電子)が発生する。

C 誤 51Ti の壊変では、320 keV、929 keV、929 – 320 = 609 keV の光子が放出される。また、β+ 壊変を伴わないため、511 keV の光子(消滅放射線)の放出もない。

D 誤 51Cr の壊変では、320 keV のγ線が放出される。

問20

放射性核種を含む試料とその測定に適した検出器に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 55Fe で標識された化合物を含む溶液試料の放射能を BGO シンチレーション検出器を用いて測定する。

B 溶液試料中の未知のγ線放出核種を Ge 半導体検出器を用いて同定する。

C 14C と 3H を含む水溶液の核種濃度を液体シンチレーションカウンタを用いて定量する。

D 金属に電着された未知のα線放出核種を GM 検出器を用いて同定する。

E 210Po の核種濃度を液体シンチレーションカウンタを用いて定量する。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 BCEのみ 4 ADEのみ 5 CDEのみ

解答 3

A 誤 55Fe から放出される特性 X 線は低エネルギーのため、BGO 検出器では測定できない。

B 正 Ge 半導体検出器はエネルギー分解能が良いため、γ線を放出する未知核種の同定に最適である。

C 正 14C と 3H のβ線の最大エネルギーが大きく異なることを利用して、同時定量することができる。

D 誤 α線は、GM 検出器表面のマイカ膜でも遮蔽されてしまうため、検出できない。

E 正 210Po が放出するα線を液体シンチレーションカウンタで測定できる。

問21

100 kBq の 140Ba を含む硫酸バリウム(BaSO4) 100 mg を 1L の水とよく攪拌して混合した時、水に溶解する 140Ba の放射能[kBq] に最も近い値はどれか。ただし、BaSO4 の式量は 2333 とし、BaSO4 の溶解度積 K(sp) = [Ba(2+)][SO4(2-)] = 1.0×10^(-10)(mol/L)^2 とする。

1 0.2

2 2

3 10

4 20

5 30

解答 2

BaSO4 100 mg は、0.1/233 = 1/2330 mol である。この中に 100 kBq の 140Ba が含まれるので、比放射能は 100 kBq/(1/2330 mol) = 2.33 × 10^5 kBq/mol となる。溶解度積は 1.0 × 10^(-10) (mol/L)^2 であるので、溶液中に溶解する[Ba(2+)] および[SO4(2-)] は、ともに 1.0 × 10^(-5) mol/L となる。溶液は 1L であるので、溶解する 140Ba は 2.33 × 10^5 kBq/mol × 1.0 × 10^(-5) mol/L × 1L ≒ 2 kBq となる。

問22

担体を含む 65Zn(2+) の酸性溶液がある。この溶液に NaOH 水溶液又はアンモニア水を加えていくと、いずれもまず白い沈殿が生じる。次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A NaOH 水溶液を少量加えて沈殿するのは水酸化物である。

B NaOH 水溶液をさらに過剰に加えると、この沈殿は再溶解する。

C アンモニア水を少量加えて沈殿するのは水酸化物である。

D アンモニア水をさらに過剰に加えると、この沈殿は再溶解する。

1 ABCのみ 2 ACのみ 3 BDのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 Zn(OH)2 が沈殿する。

B 正 過剰に NaOH を加えると、[Zn(OH)4](2-)(テトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオン)となり、沈殿が再溶解する。

C 正 Zn(OH)2 が沈殿する。

D 正 過剰にアンモニア水を加えると、[Zn(NH3)4](2+)(テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン)となり、沈殿が再溶解する。

問23

担体を含む水溶液からの放射性沈殿の生成に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 45Ca(2+) はシュウ酸イオンを生成する。

B 59Fe(2+) の方が 59Fe(3+) に比べて、より酸性側でも水酸化物を沈殿する。

C 63Cu(2+) の酸性溶液に硫化水素を通じると沈殿を生成する。

D 140Ba(2+) の水溶液に希硫酸を加えると沈殿を生成する。

E 110mAg+ は過塩素酸イオンと沈殿を生成する。

1 ABEのみ 2 ACDのみ 3 ADEのみ 4 ADEのみ 5 BCEのみ

解答 2

A 正 Ca(2+) は、シュウ酸イオンと難溶性の Ca(COO)2 沈殿を形成する。

B 誤 Fe(2+) の水酸化である淡緑色の Fe(OH)2 は、空気で容易に酸化されて赤褐色の水和酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3・H2O になるように、酸化されやすい性質がある。

C 正 Cu(2+) の酸性溶液に硫化水素を加えると、黒色の CuS 沈殿を形成する。

D 正 Ba(2+) に希硫酸を加えると、白色の BaSO4 沈殿を形成する。

E 誤 AgClO4(過塩素酸銀(Ⅰ))は溶解度が大きく(25 ℃ で 557g/100cm3)、沈殿を形成しない。

問24

次の金属が、室温で、トリチウムを含む水または水溶液と反応して、トリチウムを含む水素ガスを発生するものの組み合わせはどれか。

A 金属ナトリウム + トリチウム水

B 金属アルミニウム + トリチウム水

C 金属アルミニウム + トリチウムを含む 2 mol/L 塩酸

D 金属アルミニウム + トリチウムを含む 2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液

1 ABのみ 2 ACのみ 3 BDのみ 4 ACDのみ 5 BCDのみ

解答 4

A 正 金属ナトリウム + トリチウム水 の反応は次のようになる。2Na + 2(H2O) → 2NaOH + H2↑

B 誤 アルミニウムは、表面に酸化アルミニウムの不動態を形成しているため、室温では水と反応しない。ただし、活性アルミニウムの微粒子と水は常温でも次のような反応を起こし、水素ガスが発生し、マイクロ燃料電池に利用されている。2Al + 3(H2O) → Al2O3 + 3(H2)↑

C 正 金属アルミニウム + トリチウムを含む 2 mol/L 塩酸・・・アルミニウムは、酸ともアルカリとも反応する両性元素である。次のような反応がおき、同位体交換により、トリチウムを含む水素ガスが発生する。2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3(H2)↑

D 正 金属アルミニウム + トリチウムを含む 2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液・・・次のような反応がおき、同位体交換により、トリチウムを含む水素ガスが発生する。2Al + 2NaOH + 6(H2O) → 2Na[Al(OH)4] + 3(H2)↑

問25

水相からある有機相への I2 の抽出の分配比が 100 であった。50 MBq の 125I を I2 として含む水相 100 ml から、この I2 を有機相 50 mL に抽出した場合、水相に残る 125I の放射能[MBq] に最も近い値は、次のうちどれか。

1 0.5

2 1.0

3 1.5

4 2.0

5 2.5

解答 2

有機相への抽出率 E は、分配比を D、有機相の体積を V(0)、水相の体積を V(W) とすると、次のような式が成り立つ。E = D/[D+(V(W)/V(0))]。有機相へは、E = 100/[100+(100/50)] = 100/102 が抽出されるため、水相には、50 MBq × (1-(100/102)) = 0.98 MBq が残る。

問26

59Fe(3+)、85Sr(2+)、110mAg(+)、137Cs(+) とそれぞれの担体を含む希硝酸溶液がある。この溶液に、次のイ〜ハの操作を行った。

イ 少量の塩酸を入れたところ、沈殿 A が生じた。

ロ 沈殿 A をろ別した後、溶液をアンモニア水でアルカリ性にしたところ、沈殿 B が生じた。

ハ 沈殿 B をろ別した後、溶液に炭酸アンモニウム溶液を加えたところ、沈殿 C が生じた。

A B C

1 85Sr 59Fe 110mAg

2 59Fe 110mAg 137Cs

3 110mAg 59Fe 85Sr

4 137Cs 85Sr 59Fe

5 110mAg 85Sr 137Cs

 

解答 3

下の図表を覚えておくと良い。

問27

次の記述のうち、ホットアトムの生成と関係がないものはどれか。

1 中性子照射した臭素酸カリウムを水に溶かすと、放射性の Br- イオンも得られる。

2 中性子照射したヨウ化エチルに水を加えて振り混ぜると、水中に高比放射能の 128I が得られる。

3 地下水中の 234U/238U(放射能比)が 1 より大きいことがある。

4 トリチウムを含む水を電気分解すると、水中のトリチウム濃度は高くなる。

5 ホウ素化合物をがん組織に濃縮させた後、熱中性子照射で腫瘍を治療する。

解答 4

1 正 反跳エネルギーにより BrO3(-) 中の結合が切られるため、Br(-) イオンが生成する。

2 正 127I(n,γ)128I 反応のγ線の反跳エネルギーによって、C2H5-I の結合が切られたため水相に高比放射能の 128I が移行する。

3 正 234U は 238U の子孫核種である。放射平衡が成立していれば、234U/238U は 1 に等しいが、反跳効果により周囲の結晶格子が損傷した水に溶解する。

4 誤 同位体効果のため、O-3H 結合は O-1H よりも結合エネルギーが高く、電気分解されにくいため 3H が水中に残る。

5 正 10B(n,α)7Li 反応が起こる。ホットアトム効果により、生成する 7Li も反跳エネルギーを持つ。α線および 7Li のいずれも数 nm の飛程しか持たないため、選択的に腫瘍を照射できる。この方法は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)と呼ばれる。

問28

放射線化学に関連する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 安定同位体をトレーサーとして用いる。

B 測定の対象に主成分として含まれている元素を利用する。

C 放射化分析で感度の高い元素をトレーサーとして加える。

D 放射能汚染を引き起こす可能性があるので、自然環境では使用できない。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正 アクチバブルトレーサー法は、環境の放射能汚染を避けるなどの理由で RI を直接使用できない場合に安定同位体をトレーサーとして用いる。

B 誤 測定の対象に主成分でない元素を利用する。

C 正 放射化分析により定量する。

D 誤 安定同位体を用いるため自然環境でも使用可能である。

問29

次の放射線源と放射性同位元素利用機器も関係のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 55Fe ー 透過型厚さ計

B 63Ni ー ECD ガスクロマトグラフ

C 85Kr ー 煙感知器

D 137Cs ー 水分計

E 147Pm ー 散乱型厚さ計

1 AとD 2 AとE 3 BとC 4 BとE 5 CとD

解答 4

A 誤 55Fe から放出される特性X線は、硫黄計に用いられる。透過型厚さ計には、241Am、137Cs など用いられる。

B 正 63Ni から放出される β- 線は、ECD ガスクロマトグラフの検出器に用いられる。

C 誤 85Kr から放出される β- 線は、透過型厚さ計に用いられる。煙感知器には、241Am から放出されるα線が用いられる。

D 誤 137Cs から放出されるγ線は、医療用照射装置、γ線ラジオグラフィ用小型照射装置、食品や初が防止用の照射装置などが用いられる。水分計には 241Am-Be、252Cf などの中性子線源が用いられる。

E 正 147Pm から放出される β-線は、散乱型厚さ計に用いられる。

問30

次のγ線の線量計(ア)と利用されている現象(イ)の組み合わせが正しいものはどれか。

(ア)                    (イ)

1 フリッケ線量計 Fe(3+)の還元

2 セリウム線量計 Ce(3+)の酸化

3 アラニン線量計 ラジカル生成

4 蛍光ガラス線量計 発熱

5 熱ルミネセンス線量計 イオン対生成

解答 3

1 誤 フリッケ線量計(鉄線量計)は、放射線の照射により Fe(2+) が Fe(3+) に酸化されることを利用した線量計である。大線量の測定に用いられ、個人線量計としては適さない。

2 誤 セリウム線量計は、放射線の照射により Ce(4+) が Ce(3+) に還元されることを利用した線量計である。大線量の測定に用いられ、個人線量計としては適さない。

3 正 アラニン線量計は、放射線の照射によりアラニン分子中のアミノ基が切断され、ラジカルが生成することを利用した線量計である。放射線照射により、吸収線量に比例して生じるラジカルの相対濃度を電子スピン共鳴(ESR)によって測定する。線量測定範囲が 1 ~ 10^5 Gy と広く、高い精度と安定性を持つ。

4 誤 蛍光ガラス線量計は、放射線のエネルギーを蛍光中心に蓄えておき、紫外線によって放出させることによりオレンジ色の光を発することを利用した線量計である。再使用、再読み取りが可能である。高感度のため、個人被ばく線量測定に広く用いられている。

5 誤 熱ルミネセンス線量計(TLD)は、放射線のエネルギーエオ捕獲中心に蓄えておき、加熱によって放出させることにより蛍光を発することを利用した線量計である。再使用は可能であるが、再読み取りが不可能である。高感度のため、個人被ばく線量測定に用いられる。

 

イオン交換樹脂

イオン交換樹脂はイオン交換基をもつ高分子であり、水溶液中のイオンと樹脂自身に吸着しているイオンを交換する。イオン交換樹脂が水溶液中のイオンを吸着する強さがイオンによって異なり、この性質を利用してイオンを分離することができる。例えばスチレンー ジビニルベンゼン共重合体を高分子骨格とし、 -S03H 基をイオン交換部位として持つ強酸性陽イオン交換樹脂では +1 価イオンの樹脂への吸着強度は Li+ < Na+ < K+ < Rb+ であり 水和イオン半径が小さいものほど強い。(水和イオン半径は原子番号が大きいほど小さくなる)。また価数が異なるイオンに対しては一般に +1価 < +2価 < +3価 という傾向がある。 イオン交換樹脂に吸着しているイオンと水溶液中のイオンは吸着平衡になる。陽イオン交換樹脂に吸着している A+ イオンの濃度を [A]r 、水溶液中の A+ イオンの濃度を [A]a 、B+ イオンについても同様に行うと、Kr = ([B]r/[B]a)/([A]r/[A]a) という 平衡定数となる。Kr > 1 の時には B+ イオンの方が A+ イオンより強く吸着する。イオン交換樹脂の吸着平衡は、溶液と樹脂吸着のイオンの濃度比を決定し、濃度には依存しないので、無担体の放射性同位体の分離に適している。 一方、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて塩化物イオンとの錯形成能の違いを利用して分離することができる。強塩基性陰イオン交換樹脂カラムに Fe3+,Co2+,Ni2+ を含む 9 mol/l 塩酸溶液を 1ml ,その後 9 mol/l , 4 mol/l , 0.5 mol/l の濃度の塩酸を 順次 12 ml ずつ流して各イオンを分離すると上図のようになった。塩化物イオンとの錯体形成能の強さは Fe3+ > Co2+ > Ni2+ の順であり、a , b , c のピークは左から Ni2+ , Co2+ , Fe3+ である。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

第1種放射線取扱主任者試験 物理学問題・解説6

問1

1 MeV の電子がタングステンターゲットに当たった場合、制動放射線の最短波長はいくらか。次のうちから最も近い値を選べ。

1 0.6 pm

2 1.2 pm

3 18 pm

4 0.6 nm

5 3.3 nm

解答 2

デュエヌ・フントの法則より、λ(min) = 1.24/(1×10^3) (nm) = 1.24 (pm)

問2

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 1 fm は 1 × 10^(-15) m である。

B 1 nSv は 1 × 10^(-10) Sv である。

C 1 GeV は 1 × 10^9 eV である。

D 1 TBq は 1 × 10^10 Bq である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 正

B 誤 1 × 10^(-9) Sv

C 正

D 誤 1 × 10^12 Bq

問3

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 核子とは中性子、陽子及び中間子をいう。

B 原子核の体積は質量数にほぼ比例する。

C 核子間の結合は強い相互作用によるものである。

D 核子あたりの結合エネルギーは質量数が大きいほど高くなる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 3

A 誤 中間子は含まない。

B 正

C 正

D 誤 質量数約 60 近辺が最もた高い。

問4

内部転換電子に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 運動エネルギーは競合するγ線のエネルギーと等しい。

B K殻転換よりL殻転換において運動エネルギーは高い。

C 運動エネルギーの分布は線スペクトルを示す。

D 特性X線の放出と競合して起きる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 3

A:誤 γ線のエネルギーよりも軌道電子の束縛エネルギー分だけ小さい。

B:正

C:正

D:誤 γ線放出と競合して起きる。

問5

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 原子番号は原子核内の中性子の数に等しい。

B X線より波長の短い電磁波をγ線と呼ぶ。

C 特性X線が原子核から放出されることはない。

D 内部転換が起きるとオージエ電子が放出されることがある。

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 2

A 誤 陽子数に等しい。

B 誤 原子核あるいは素粒子のエネルギー準位間の遷移や、素粒子の対消滅に伴って放出される光子をγ線といい、それ以外をX線という。

C 正

D 正 軌道電子の放出に伴って生じた空席を埋める際に、特性X線の放出と競合してオージエ電子が放出される。

問6

次のうち、βーγ同時計数法により放射能を測定できる核種の組み合わせはどれか。

A 32P

B 24Na

C 55Fe

D 60Co

E 137Cs

1 AとB 2 AとC 3 BとD 4 CとE 5 DとE

解答 3 参考までに下の表に最低限覚えておくべき放射性同位体特性表を示す。

A 誤 32P・・・β- 壊変のみでγ線を放出しないため適用できない。

B 正 24Na・・・β- 壊変の直後に、2.75 MeV、1.37 MeV のγ線をそれぞれほぼ 100% 放出する。

C 誤 55Fe・・・EC 壊変のため適用できない。

D 正 60Co・・・β- 壊変の直後に、1.17 MeV、1.33 MeV のγ線をそれぞれほぼ 100% 放出する。

E 誤 137Cs・・・β- 壊変するが、γ線は半減期 2.55 分の 137mBa から放出され、β-線放出と同時でないため適用できない。

放射性同位体特性表

核種 半減期 β線のエネルギー(MeV) γ線(X線)エネルギー(MeV) 壊変形式 用途
3H 12.3y 0.02  ー β-  ー
11C 20.4m 0.96 (0.51) β+ , EC  ー
14C 5730y 0.16  ー β-  厚さ計(使われることは少ない)
13N 10.0m 1.20  ー β+  ー
15O 2.0m 1.73 (0.51) β+ , EC  ー
18F 110m 0.63 (0.51) β+ , EC  ー
22Na 2.6y 0.55 1.28,(0.51) β+ , EC  ー
24Na 15.0h 1.39 1.37,2.75 β-  ー
30P 2.5m 3.2  ー β+ , EC  ー
32P 14.3d 1.71  ー β-  ー
33P 25d  ー 0.25 β-  ー
35S 87.5d 0.17  ー β-  ー
42K 12.4h 2.00,3.52 1.52 β-  ー
43K 22.3h 0.83 0.32,0.62 β-  ー
45Ca 164d 0.26  ー β-  ー
47Ca 4.5d 0.69 1.30 β-  ー
51Cr 27.7d  ー 0.32 EC  ー
54Mn 312d  ー 0.83 EC  ー
52Fe 8.3h 0.80 (0.51) β+ , EC  ー
59Fe 44.6d 0.47,0.27 1.10,1.29 β-  ー
57Co 271d  ー 0.12,0.14 EC  メスバウア線源
58Co 70.8d 0.48 0.81(0.51) β+ , EC  ー
60Co 5.3y 0.32 1.17,1.33 β-  密度計、レベル計、厚さ計・・・γ線を使用
62Cu 9.7m 2.93 1.17,0.88 β+ , EC  ー
67Ni 100y 0.067  ー β-  ガスクロマトECD検出器用線源
67Ga 3.3d  ー 0.09,0.19 EC  ー
68Ga 1.1h 1.90,0.82 1.08,(0.51) β+ , EC  ー
68Ge 271d  ー 0.009 EC  ー
75Se 120d  ー 0.27,0.14 EC  ー
75Br 98m  ー (0.51),1.7 β+ , EC  ー
76Br 16.2h  ー (0.51),3.6 β+ , EC  ー
82Br 35.3h 0.44 0.78,0.55 β-  ー
81mKr 13s  ー 0.19 IT  ー
85Kr 10.7y 0.69 0.51 β-  厚さ計(よく使われる核種)
81Rb 4.6h 1.05 0.45(0.51) β+ , EC  ー
82Rb 1.3m 3.15 0.78 β+ , EC  ー
86Rb 18.8d 1.77,0.70 1.08 β-  ー
85Sr 64.8d  ー 0.51 EC  ー
87mSr 2.8h  ー 0.39 IT,EC  ー
90Sr 28.8y 0.55  ー β-  厚さ計、タバコ量目計
87Y 80.3h 0.45 0.49 β+ , EC  ー
90Y 64.1 2.28  ー β-  ー
98Mo 66.0h 1.23,0.44 0.74,0.18 β-  ー
99mTc 6.0h  ー 0.14 IT  蛍光X線線源
109Cd 463d  ー 0.222 EC  ー
111In 2.8d  ー 0.17,0.25 EC  ー
113mIn 1.7h  ー 0.39 IT  ー
113Sn 115.1d  ー 0.26 EC  ー
123I 13.2h  ー 0.159 EC インビボ検査(脳血流・甲状腺機能・心機能)、チンチグラム、SPECT
124I 4.2d 1.53,2.14 0.60 β+ , EC  ー
125I 60.1d  ー 0.036 EC インビトロ検査(ホルモン、腫瘍関連抗原などで診断)、ラジオイムノアッセイ(臨床分析においてタンパク質の標識)、前立腺癌 125I挿入小線源療法(125I を密封したシードを前立腺内に永久挿入)
128I 25.0分  ー  ー β+ , β- , EC ホットアトム(ヨウ素原子を熱中性子で照射) 127I (n,γ) 128I → γ線放射、中性子放射化分析において高感度
129I 1.57×10^7y  ー 0.038 β-  ー
131I 8.0d 0.61 0.36 β- 甲状腺治療及び診断(甲状腺機能亢進症)
132I 2.3h 1.19,2.14 0.67,0.77 β-  ー
133Xe 5.3d 0.35 0.08 β-  ー
133mXe 2.2d  ー 0.23 IT  ー
131Cs 9.7d  ー 0.03,0.004 EC  ー
137Cs 30y 0.51 0.66 β-  密度計、レベル計、厚さ計
137mBa 2.6m  ー 0.66 IT  ー
140La 40.2h 1.35 1.60,0.49 β-  ー
141Ce 32.5d 0.44 0.15 β-  ー
147Pm 2.6y 0.224  ー β-  厚さ計
192Ir 74.2d 0.54,0.67 0.32,0.47 β-,EC  非破壊検査
198Au 2.7d 0.96 0.41 β-  ー
197Hg 64.1h  ー 0.08 EC  ー
201Tl 73.0h  ー 0.17,0.14 EC  ー
204Tl 3.8y 0.764 β-,EC  厚さ計
203Pb 52.0h  ー 0.28 β-  ー
210Po 140d α線6.0  ー α  煙感知器、静電除去
222Rn 3.8d α線5.5 0.51 α  ー
226Ra 1622y α線4.8 0.19 α  ー
241Am 400y α線6.0 0.06 α  煙感知器、静電除去・・・α線。蛍光X線、硫黄計、厚さ計・・・γ線
252Cf 2.6y α線6.12 0.04 α,SF  中性子水分計

問7

次の過程のうち、放出される電子が連続スペクトルを示すものの組み合わせはどれか。

A 内部転換

B 光電効果

C 電子対生成

D コンプトン効果

E オージエ効果

1 AとB 2 AとE 3 BとD 4 CとD 5 CとE

解答 4

線スペクトル・・・原子が放射または吸収する光などの電磁波を通して見たときに線状にに見えるスペクトル。線スペクトルにはα線、γ線、オージエ電子、特性X線、内部転換電子、光電子がある。

連続スペクトル・・・ある波長範囲にわたって連続的に分布したスペクトル。分光装置の性能をいくら高めても線スペクトルに分解できないもので、連続スペクトルにはβ-、β+、コンプトン電子や散乱光子、制動放射線、核分裂エネルギー(252Cf などから放出される中性子)、マックス ウェル・ボルツマン分布(0.025 eV のエネルギーを有する熱中性子)に従う連続分布がある。

問8

次のうち、質量数に変化がなく、原子番号が 1 増加する過程はどれか。

1 α壊変

2 β-壊変

3 β+壊変

4 γ遷移

5 電子捕獲

解答 2

壊変形式 原子番号の変化 質量数の変化
 α壊変  -2  -4
 β-壊変  +1  0
 β+壊変  -1  0
 γ遷移  0  0
 電子捕獲  -1  0

問9

陽子(p)と 4He(2+) を 2 MV の電位差で加速した時、2つの粒子の速度の比 (v(p)/v(He)) は次のうちどれか。

1 1/2

2 1

3 √2

4 2

5 4

解答 3 エネルギーは、p[1H(1+)]:2 MeV、4He(2+):4 MeV。E = (1/2)・m・v^2 より、v = √(2E/m)。p と 4H(2+) の質量は、u を原子質量単位としてほぼ 1u と 4u である。したがって、v(p)/v(He) = √(2×2/1)/√(2×4/4) = √4/√2 = √2 となる。

問10

次の組み合わせのうち、正しいものはどれか。

A ベータトロン ー 交流磁場

B 陽電子形加速器 ー アルバレ型円筒空洞共振器

C ファン・デ・グラーフ型加速器 ー 高周波電圧

D シンクロトロン ー 静磁場

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 1

下記に加速器の特徴を示す。

線形加速器

線形加速器は直線状に並べられた多数の電極に粒子の速度に合わせた高周波の高電圧を印加することによって加速する。

コッククロフト・ワルトン加速器

コンデンサーと整流器を組み合わせた倍圧整流回路を利用して、コンデンサーに高電圧を貯めて、コンデンサーから加速管に高電圧を印加する事で荷電粒子を加速する。直流高電圧、静電場を使っているため、イオン・電子共に加速可能である。

バン・デ・グラーフ型加速器

超高圧タンク内に絶縁ベルトを回転させ、電荷を帯電球に貯めて、超高電圧を抵抗によって分圧し、加速管に電圧を加えて加速する。帯電球に電荷が貯まると、ベルト上の電荷と斥力が作用し、ベルトの回転数が低下したり放電を発生する。超高圧ガスはは放電防止用窒素ガスである。直流高電圧、静電場を使っているため、イオン・電子共に加速可能である。

ベータトロン

ベータトロンは交流励磁によって作られる磁界により、電子に一定の円運動させ、その磁場により生じる電場で電子を加速する。交流電場で行い、電子だけを加速させる。また磁場の変化で誘起される電場で加速される。

マイクロトロン

一様な直線磁界で円軌道上を回転させ、マグネトロン又はクライストロンに夜3000MHzのマイクロ波の電場で電子を加速する。電子エネルギーが増大すると回転半径も大きくなる。

サイクロトロン

D電極の上下に磁石を設置し、D電極に+、ーの高周波を掛けると、荷電粒子は回転運動を始め、ギャップで加速され、回転半径は大きくなり、ビームとして取り出される。D電極上下の磁界は直流磁界(直流電磁石)で高周波は一定周波数を用いギャップ間で加速する。高周波静磁場を用いてイオンのみを加速させる。現在は粒子線治療とPET薬剤生成加速器に用いられる。

シンクロトロン

シンクロトロンは増大する磁場を用いて荷電粒子を偏向電磁石で曲げて行う事で一定軌道に回転させ、その途中に高周波を掛けて加速する装置である。また電子軌道を収束電磁石で強制的に変える事でX線が発生する。シンクロトロンは電子とイオンの両方加速可能である。磁場は加速に伴って変化する。

問11

質量数 200 の原子核が 4 MeV のα線を放出して壊変するとき、生成核の反跳エネルギー[MeV]として最も近い値はどれか。

1 0.04

2 0.08

3 0.1

4 0.2

5 0.4

解答 2

質量数 200 の原子核の質量を M(≒ 200u)、反跳速度を V、エネルギーを E、α線の原子核の質量、反跳速度、エネルギーをそれぞれ m(≒ 4u)、v、e(= 4 MeV)とおくと、運動量保存則より、M・V = m・v、したがって V = (m/M)・v である。反跳エネルギーは、 E = (1/2)・M・V^2 = (1/2)・M・(m・v/M)^2 = (m/M) × (1/2)・m・v^2 = (m/M) × e = (4/200) × 4 = 0.08 (MeV)

問12

重荷電粒子に対する物質の阻止能[keV/m]に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 粒子の電荷の2乗に比例する。

2 粒子の速度に依存する。

3 同じ速度の粒子に対して、粒子の質量に反比例する。

4 物質の単位体積当たりの原子の個数に比例する。

5 物質の原子番号に比例する。

解答 3

質量衝突阻止能 ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(n × Z)/ρ] ∝ [(z^2 × e^4)/v^2] × [(A × Z) × Na]

z : 有効電荷 e : 電子

1 正

2 正

3 誤 粒子の質量に依存しない。

4 正

5 正

問13

チェレンコフ光に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 荷電粒子が結晶の格子面に沿って入射したときに放出される光のことである。

B 荷電粒子が物質中での光速より速く進むときに放射される光である。

C 荷電粒子が物質中で曲げられるときひ放出される光である。

D 荷電粒子が物質を通過する際に生じる分極に伴って生じる光である。

解答 5

ある誘導体内に荷電粒子が入射した時、その物質中の光速度 C より粒子速度 v が大きい時に可視光線が発生する。高速電子が誘導体中OP(開いた光弦)に進行すると入射粒子の電界により誘導体は分極する。 分極が元に戻る時、そのエネルギーを光(電磁波)として放出する。水中でチェレンコフ光が発生するためには、二次電子の速度が C/1.33 以上(C:真空中の光速 1.33:水の屈折率)運動エネルギーにして 0.26 MeV 以上であることが必要。コンプトンの場合最大0.8 MeV のエネルギーであるため 発生する。β線エネルギーであれば0.26 MeV であれば発生する。 511keV × [(1/(√1-(v/c)^2))-1] = 511kev × [(1/(√1-(1/n)^2))-1] = 511kev × [1-(1/(√1-(1/1.33)^2))-1] = 264kev

問14

水(屈折率 1.33)中を電子が通過する場合、チェレンコフ光が発生するための電子の運動エネルギー[keV]として、最小の値(しきいエネルギー)に最も近いものは次のうちどれか。

1 90

2 150

3 210

4 270

5 330

解答 4

水中でチェレンコフ光が発生するためには、二次電子の速度が C/1.33 以上(C:真空中の光速 1.33:水の屈折率)運動エネルギーにして 0.26 MeV 以上であることが必要。コンプトンの場合最大0.8 MeV のエネルギーであるため 発生する。β線エネルギーであれば0.26 MeV であれば発生する。 511keV × [(1/(√1-(v/c)^2))-1] = 511kev × [(1/(√1-(1/n)^2))-1] = 511kev × [1-(1/(√1-(1/1.33)^2))-1] = 264kev

問15

γ線と物質との相互作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 光電効果ではγ線のエネルギーがすべて光電子に転移する。

B コンプトン効果の断面積は物質の原子番号に比例して増加する。

C コンプトン効果ではγ線のエネルギーが高いほど前方に散乱されやすい。

D K吸収端はコンプトン効果に起因して生じる。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 4

光電効果、コンプトン効果、電子対生成の記述を下記に示す。

光電効果

光子が物質に入射すると、その原子の軌道電子に全エネルギーを与えて外へ追い出してしまう現象をいう。光子自身は原子に吸収されて消滅したことになる。その代わり電子を飛び出させる。飛び出る電子を光電子という。入射光子エネルギーをhνとし、軌道電子の原子核との結合エネルギーをIとすると、電子のもらう運動エネルギー = 1/2(mv2) = hν – I である。光電効果は1 MeV 以下の光子で特によく起こり、 同じエネルギーの光子では、原子番号が大きいほどよく起こる。K軌道で最もよく起こり、次いでL軌道が起こりやすい。光電効果の後に特性X線かオージエ電子が放出される。特性X線の発生する割合ωは蛍光収率といい、オージエ効果によるオージエ電子放出は(1 – ω)となる。原子番号が大きいほど蛍光収率の割合が高くなり、エネルギーも高くなる。またKオージエ電子はLオージエ電子よりもエネルギーは高い。特性X線もK > Lである。主に粒子性を示す。光電効果に対する原子あたりの断面積はZ^(4~5)である。

光電効果に関する例題

0.1 MeV の光子がタングステンと光電効果を起こしたときのK軌道電子とKα-X線のエネルギーを求めよ。K軌道、L軌道の結合エネルギーは69.5 KeV、10.9 KeVとする。

光電子エネルギー 100 – 69.5 = 30.5 KeV

Kα-X線 69.5 – 10.9 = 58.6 KeV

オージエ効果

光電効果、軌道電子捕獲、内部転換等の現象で原子の軌道に空席が生じたとき、外側の軌道のエネルギー準位の高い電子がそこへ飛び込み、そのエネルギー差が特性X線として放出される際、この特性X線のエネルギーを別の軌道電子に与えて、一定のエネルギーを持つ電子を放出することがある。この時出てくる電子をオージエ電子、この現象をオージエ効果という。オージエ電子は線スペクトルである。 原子番号の大きい物質ほど特性X線の発生量が多く、オージエ電子の発生量が少なくなる。

コンプトン効果

波長λの光子が物質内の自由電子と衝突して進行方向が φ だけ変えられ、エネルギーを電子に与えて ψ なる方向へはじき出し、自らは波長λ’となる。これをコンプトン効果という。コンプトン効果は粒子性を示し、光子エネルギー1〜3 MeV の範囲で起こる。コンプトン散乱は非干渉性散乱であり、① 入射波長より散乱波長の方が長い。 ② 線減弱係数は原子番号Zに比例する。原子当たりの断面積は原子番号Zに比例する。コンプトン電子のエネルギーEeは Ee = E0/[1 + (E0/(1 – cosθ)mc^2)] で表すことができる。 ここで60Coγ線についての補足。60Coγ線エネルギーでは全ての物質についてコンプトン散乱が優勢であり、水素を除いては、質量減弱計数はほぼ同じである。したがって、単位面積当たりの質量で表した遮蔽体の厚さ、すなわち密度×厚さの積が大きいほど遮蔽効果が大きくなる。

電子対生成

エネルギー1.02 MeV をもつ光子が通過中の物質の原子核付近で強いクーロン場の影響を受けて、一対の陰陽電子が生まれて光子が消滅する。これを電子対生成という。電子対生成の全断面積は Z(Z+1) ≒ Z^2 に比例する。三対子生成:電子対生成=1:2の割合で発生する。三対子生成は低原子番号で良く発生する。また、電子対生成で発生した陽電子は停止して、自由電子と結合して消滅する。消滅時に0.51 MeVの消滅線を180°方向に2本放出する消滅線は0.51 MeV の単色光である。

A 誤 一部は軌道電子を束縛状態から解放されるために使われる。

B 正

C 正

D 誤 光電効果に起因する。

問16

1 MeV のγ線がアルミニウムに当たってコンプトン効果を起こし、0.5 MeV の電子が放出された。この場合、散乱γ線の散乱角はいくらか。次のうちから最も近いものを選べ。

1 15°

2 30°

3 45°

4 60°

5 135°

解答 4

エネルギー保存則より、散乱γ線のエネルギーは 1.0 – 0.5 = 0.5 MeV である。θ を散乱角とすれば、電子の静止質量は 0.511 MeV であるから、散乱前後のエネルギーの式より、  0.5 = 1/[1 + (1/(0.511)) × (1 – cosθ)]。cosθ について解くと cosθ = 0.489 ≒ 0.5 となり θ = 60° となる。

問17

電子対生成に関する次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか。

A 生成された電子と陽電子の運動エネルギーの和は 1.022 MeV である。

B 断面積は原子番号に比例する。

C 電子対生成が起こった位置で消滅放射線が発生する。

D 4 MeV γ線と鉄の主たる相互作用は電子対生成である。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 5

電子対生成の記述を下に示す。

電子対生成

エネルギー1.02 MeV をもつ光子が通過中の物質の原子核付近で強いクーロン場の影響を受けて、一対の陰陽電子が生まれて光子が消滅する。これを電子対生成という。電子対生成の全断面積はZ(Z+1) ≒ Z^2 に比例する。三対子生成:電子対生成=1:2の割合で発生する。三対子生成は低原子番号で良く発生する。また、電子対生成で発生した陽電子は停止して、自由電子と結合して消滅する。消滅時に0.51 MeVの消滅線を180°方向に2本放出する消滅線は0.51 MeV の単色光である。

光電効果、コンプトン効果、電子対生成が起こる物質のエネルギー範囲との関係性を示す。

アルミニウム(Z=13)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 50KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 50KeV ~ 20MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 20MeV]

水と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 30KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 30KeV ~ 30MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 30MeV]

鉄と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 100KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 100KeV ~ 10MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 10MeV]

鉛(Z=82)と光子との関係
光電効果の支配的エネルギー範囲・・・・[ < 600KeV]
コンプトン効果の支配的エネルギー範囲・・・[ 600KeV ~ 5MeV]
電子対生成の支配的エネルギー範囲・・・[ > 5MeV]

A 誤 和はγ線のエネルギーから 1.022 MeV 引いた値である。

B 誤 断面積は原子番号のほぼ 2 乗に比例する。

C 誤 生成した陽電子の多くが電子と対消滅するのは、ある程度移動してエネルギーが低下してからである。

D 誤 4 MeV γ線と鉄の主たる相互作用はコンプトン効果である。

問18

光子と物質との相互作用に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A コンプトン効果によって放出される二次電子の最大エネルギーは、入射光子のエネルギーに等しい。

B コンプトン効果は光子の波動性を示す現象である。

C 光電効果は光子の粒子性を示す現象である。

D 2 MeV の制動放射線は電子対生成が可能である。

1 AとB 2 AとC 3 BとC 4 BとD 5 CとD

解答 5

A 誤 二次電子の最大エネルギーになるのは光子が 180°方向に散乱されるときであるが、その時も散乱光子のエネルギー分小さくなるため等しくはならない。

B 誤 コンプトン効果は光子の粒子性を示す現象である。

C 正 光電効果は光子の粒子性を示す現象である。

D 正 2 MeV の制動放射線は電子対生成が可能である。

問19

次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A 中性子の静止質量は陽子と電子の静止質量の和より大きい。

B 原子核内の陽子は電子捕獲して中性子になることがある。

C 核外にある中性子は β- 壊変して陽子に変わる。

D 重陽子の静止質量は、陽子と中性子のそれぞれの静止質量よりも大きい。

1 ABCのみ 2 ABDのみ 3 ACDのみ 4 BCDのみ 5 ABCDすべて

解答 1

A 正 中性子の静止質量は 935 MeV、陽子の静止質量 931 MeV、電子の静止質量 0.511 MeV より、中性子の静止質量の方が大きいことが分かる。

B 正 軌道電子捕獲では核内で p + e- → n + ν という反応を示す。

C 正 β- 壊変は n → p + e- + ν'(反ニュートリノ) という反応を示す。

D 誤 和よりも結合エネルギー分だけ小さい。

問20

次の金属のうち、熱中性子に対する吸収断面積の最大のものはどれか。

1 Co

2 Mn

3 In

4 Cd

5 Au

解答 4

吸収断面積は Co:37b、Mn:13b、In:194b、Cd:2520d、Au:99b である。Cd は吸収断面積が大きく、熱中性子吸収材としてよく使われるため覚えておいた方が良い。

問21

次の記述のうち、誤っているものの組み合わせはどれか。

A 吸収線量は間接電離放射線にのみ用いることができる。

B 中性子は直接電離放射線に分類される。

C 照射線量は物質を選ばず用いることができる。

D カーマは空気に対してのみ用いることができる。

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5 下にカーマ、吸収線量、照射線量の定義を示す。

カーマ

カーマ(K)は、ある物質の体積要素内で間接電離によって自由になった全荷電粒子の最初の運動エネルギーの和dEをその体積の物質の質量dmで除した商である。E = dE/dm。単位は1Gy = 1J/kg。 また、カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。

吸収線量(D)

質量dmの物質に電離放射線によって付与された平均エネルギーdεとすると、D = dε/dmを吸収線量という。単位はGy = J/kg。吸収線量はすべての放射線に対して用いることができる。

照射線量(X)

dmという質量の空気の容積要素内で光子(X線、γ線)によって発生する全ての電子が空気中で完全に静止するとき、空気中に発生した一方符号のイオンの全電荷の絶対値をdQとするとX = dQ/dmと表せる。また、照射線量は光子が空気と相互作用するときにだけ用いることができる。

A 誤 放射線の種類によらず用いることができる。

B 誤 中性子は電荷を持たないので間接電離放射線である。

C 誤 照射線量は光子が空気と相互作用するときにだけ用いることができる。

D 誤 カーマは光子、中性子など電荷を持たない放射線に対して用いることができる。

問22

次の量と名称と単位に関する組み合わせのうち正しいものはどれか。

A 照射線量 ー C/kg

B 粒子フルエンス ー m2/s

C 質量阻止能 ー J・m/kg

D 吸収線量率 ー J/(kg・s)

E 線減弱係数 ー m

1 AとC 2 AとD 3 BとC 4 BとE 5 DとE

解答 2

放射線量と単位を下の表に示す。

記号 SI単位 その他
量子数 N I  ー
粒子フルエンス Φ m^(-2)  ー
エネルギーフルエンス φ J × m^(-2)  ー
断面積 δ m^2  ー
線減弱係数 μ m^(-1) = 線エネルギー吸収係数
質量エネルギー転移係数 μtr/ρ m^2 × kg^(-1) 光子との相互作用
質量エネルギー吸収係数 μen/ρ m^2 × kg^(-1)  ー
質量阻止能 S/ρ J × m^2 × kg^(-1) 荷電粒子との相互作用
線エネルギー付与 J × m^(-1)  ー
質量減弱係数 μ/ρ m^2 × kg^(-1) 物質には依存しない
カーマ K J × kg^(-1)  ー
照射線量 X C × kg^(-1)  ー
エネルギー付与 εi J 荷電粒子に対して用いる
吸収線量 D J × kg^(-1)  ー
放射能 A Bq  ー

問23

次の検出器のうち、熱中性子の計測に適さないものはどれか。

1 CH4 比例計数管

2 3He 比例計数管

3 BF3 比例計数管

4 6Li(Eu)シンチレーション検出器

5 235U 核分裂電離箱

解答 1

熱中性子の測定についての記述を下に示す。

熱中性子の測定

熱中性子の(n,α)反応に対応した検出器にはBF3計数管と6Li(Eu)シンチレーション検出器がある。また(n,p)反応に対して計数ガスとして 3He を充填した 3He比例計数管がある。これらの検出器はポリエチレンなどの水素密度の高い減速材と組み合わせることにより速中性子 に対しても感度のある検出器を作ることができる。熱中性子による核分裂反応を用いた検出器には 235U 核分裂電離箱などがあり、約 160 MeV の極めて大きなエネルギーが付与された核分裂片を測定している。(n,γ)反応による熱中性子の測定には Au の放射化を利用する方法がある。この反応で生成される核種198Au はβ壊変するため、その放射能を測定することにより熱中性子の絶対値を決定する ことができる。中性子の検出に BF3比例計数管がしばしば用いられる。これはフッ化ホウ素ガスを比例計数管の計数ガスとして封入したもので 10B(n,α)反応を利用している。この反応の Q 値は正であるので、検出する中性子のエネルギーのしきい値はない。その断面積は非常に大きく中性子のエネルギーを E とすると、断面積は E^(-1/2) に比例するので特に 熱中性子の検出に適している。この 10B(n,α)反応に際して、E と 2.78 MeV を加えたエネルギーが放出されるが、7Li 原子核の中間励起状態を経由して 7Li の基底状態に到達する確率が 93% 程度であり、この際 0.487 MeV のγ線も放出される。熱中性子の検出に際して励起状態を経由する場合、粒子の持つ運動エネルギーは 2.3 MeV となり、これが運動量保存則に従ってα粒子と 7Li核とに分配される。 E が極めて小さい場合α粒子の受け取るエネルギーは 1.46 MeV であり、7Li核の受け取るエネルギーは 0.84 MeV となる。10B(n,α)7Li反応の断面積は非常に大きく、特に熱中性子に対して感度の高い測定ができる。断面積は中性子の速度を v とすると 1/v に比例する。

CH4比例計数管(反跳陽子比例計数管)

中性子が軽い原子核と作用する際の弾性散乱を利用した高速中性子測定用のガス入り検出器である。この原理による計数管は、入射中性子のエネルギーに対応した出力信号をつくるので、中性子エネルギースペクトルの測定に使える特徴がある。構造は金属の円筒の中心に細い芯線の間に電圧をかけるようになっている。計数管ガスには最も軽い水素がよく使われ、用途によってメタンなども使われる。入射中性子が水素原子核に衝突すると、そのエネルギーにより水素原子核(陽子)が反跳される。電荷を持つ反跳電子はガス中を走り水素原子を電離する。 この電離作用により電極から電気信号が取り出せる。

1 誤 CH4 比例計数管・・・高速中性子の測定に用いられる。

2 正 3He 比例計数管

3 正 BF3 比例計数管

4 正 6Li(Eu)シンチレーション検出器

5 正 235U 核分裂電離箱

問24

次の括弧内の大小関係が正しいものの組み合わせはどれか。

A W値(ヘリウム > 空気)

B ε値(シリコン > ゲルマニウム)

C 気体中の移動度(電子 > 陽イオン)

D 蛍光の減衰時間(NaI(Tl)シンチレータ > プラスチックシンチレータ)

1 ACDのみ 2 ABのみ 3 BCのみ 4 Dのみ 5 ABCDすべて

解答 5

A 正 W値(ヘリウム:41 eV > 空気:34 eV)

B 正 ε値(シリコン:3.6 eV > ゲルマニウム 3.0 eV)

C 正 気体中の移動度・・・イオンは他のガス分子との衝突密度が大きいため動きにくい。移動度を v、電場を E、気体の圧力を p とすれば、移動度 μ は、v = μ・(E/p) で定義される。μ は電子の方がイオンに比べて 約10^9 倍も大きい。

D 正 蛍光の減衰時間(NaI(Tl)シンチレータ:230 nm > プラスチックシンチレータ:2.4 ns)

問25

次のシンチレータのうち、137Cs 662 keV γ線の測定に際して、最も良好なエネルギー分解能が期待できるものはどれか。

1 NaI(Tl)

2 CsI(Tl)

3 Bi4(Ge3)O12

4 La(Br3)Ce

5 Lu2(SiO5)Ce

解答 4

エネルギー分解能は、シンチレータと組み合わせた光電子増倍管からのパルス波高値が高い方が良好である。NaI(Tl)の波高値を 100 とすれば、CsI(Tl) は 49、Bi4(Ge3)O12 は 13 であり、これらの中では NaI(Tl) が最も良好である。一方 La(Br3)Ce は、662 keV γ線に対して約 3% の分解能を有し、これは NaI(Tl) に比較して約 2 倍の高分解能である。Lu2(SiO5)Ce は主に PET 用に開発された短い減衰時間(42 ns) を有するシンチレータである。この蛍光出力は Bi4(Ge3)O12 に 比べ 4 から 7 倍大きいが、それでも NaI(Tl)より小さく、分解能は劣る。したがって選択肢の中では La(Br3)Ce が最も良好なエネルギー分解能を有する。

問26

内容積 1 L のボールチェンバーによって放射線を測定したところ、電流 1 nA が得られた。この場合空間の空気吸収線量率[μGy/s]はいくらか。次のうちから選べ。ただし、このチェンバーの内部は密度 1.3 kg/m3 の空気が充填され、壁材はプラスチック内面にカーボン電極を塗布したもので、空気等価と見做すことができるものとする。

1 1.6

2 3.6

3 26

4 34

5 76

解答 3

ボールチェンバーとは球形状の電離箱を意味すると思われる。空気の W 値を 34 eV、e を素電荷の値として、線量率は次式で計算される。[(1×10^(-9))/e] × 34 × e × [1/(1.3×10^(-3))] = 2.62 × 10^(-5) (Gy/s) = 26.2 (μGy/s)

問27

0.9 MeV のγ線と 2.8 MeV のγ線をカスケード状に同時に放出するβ-壊変核種があるとして、この核種の線源を Ge 検出器に近接して置いて波高分布スペクトルをとった場合、何本のピークが観測されると考えられるか。次のうちから選べ。

1 5本

2 6本

3 7本

4 8本

5 9本

解答 5

0.9 MeV γ線からは全吸収ピークだけが得られる。2.8 MeV γ線では、全吸収、シングルエスケープ、ダブルエスケープ、電子対生成に伴う消滅放射線の合計 4 本のピークが得られる。さらに 2 つのγ線は同時に放出されるため、これらのサムピークが生じる。したがって 1 + 4 × 2 = 9 本のピークが観測される。

問28

グリッド付き電離箱における次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

A α線のエネルギースペクトルの測定に用いられる。

B 電子の流動に基づく信号のみを用いる。

C 検出器ガスとして空気も使用できる。

D グリッドで電子を増幅して使用する。

1 AとB 2 AとC 3 AとD 4 BとC 5 BとD

解答 1

グリッド付き電離箱の記述を下記に示す。

グリッド付き電離箱

グリッド付き電離箱は、等距離の間を運動する電子によるパルスを利用する電離箱であるので、単一エネルギーのα粒子に対して、そろったパルスの波高値が得られ、高い分解能が得やすく、比較的高速の計数も可能な検出器である。

図1に示すように、高電圧電極Aと電子捕獲電極Cの間に、Cに接近してたくさんの細い平行に張られた格子Gを挿入し、これを適当な中間電位に保つと A – G 間を運動するα粒子により生まれた電子およびイオンによるCへの静電誘導はほとんど完全に遮蔽され、しかも A -G 間に生まれた電子は、気体中では大体電気力線にそって正電極の方に向かって引かれるので、G -C 間の電界を A -G 間のそれよりも十分に強くなるようにしておけば、電子はGに捕らえられずそれをくぐり抜け、残らず電子捕獲電極Cに集めることができる。したがって電子の 線量にのみ比例した大きさのパルスをCから取り出すことができる。この電離箱に使用されるガスは主にアルゴン+メタン(5 ~ 10%)の高純度ガスを混合して用いられる。

A 正 α線のエネルギースペクトルの測定に用いられる。

B 正 電子の流動に基づく信号のみを用いる。

C 誤 この電離箱に使用されるガスは主にアルゴン+メタン(5 ~ 10%)の高純度ガスを混合して用いられる。また空気中の酸素は電子を吸着しやすいため用いられない。

D 誤

問29

次の放射線測定器のうちα線のエネルギー測定に最適なものはどれか。

1 表面障壁型Si半導体検出器

2 ZnS(Ag)シンチレーション検出器

3 Ge 検出器

4 NaI(Tl)シンチレーション検出器

5 熱ルミネセンス線量計(TLD)

解答 2

1 正 表面障壁型Si半導体検出器・・・高い分解能を有し、もっとも適する。

2 誤 ZnS(Ag)シンチレーション検出器・・・α線検出に用いられるが、エネルギー分解能は 1 に比べて悪い。

3 誤 Ge 検出器・・・真空容器に封入されているため、α線の測定はできない。

4 誤 NaI(Tl)シンチレーション検出器・・・潮解性があるため容器に封入されており、α線の測定はできない。

5 誤 熱ルミネセンス線量計(TLD)・・・線量測定の検出器であり、個々のα線の測定はできない。

問30

分解時間 0.20 ms のGM 計数管を用いて計数するとき、数え落としによる誤差が 5.0% を超えない最大の真の計数率[cps]にもっとも近い値は次のうちどれか。

1 250

2 400

3 550

4 700

5 850

解答 1

真の計数率を n(0)、数え落としのある計数率を n、分解時間を τ とする。題意より (n(0) – n)/n(0) = 0.05 である。数え落とし補正の式、n(0) = n/(1-nτ) を n について解くと、n = n(0)/(1+n(0)τ) である。真の計数率 n(0) について解くと、n(0) = 0.05/[τ(1-0.05)] = 0.05/(0.2×10^(-3)×0.95) = 263 cps となる。

荷電粒子の磁場中の運動についての記述

荷電粒子が磁場の中を運動するとき、軌道が曲がることはよく知られている。質量 M 、電荷 ze の荷電粒子が速度 v で磁束密度 B の磁場中で磁場に直角に運動するとき、粒子にはローレンツ力と呼ばれる力 F が働き、F = ze・v・B である。このとき、この力 F と粒子に働く遠心力が釣り合って円運動をすることから、その円運動の軌道半径を r とすると、F = M・v^2/r が成り立つ。粒子が円軌道を一周するのに要する時間 Tr は、Tr = 2・π・r/v = (2・π・M)/(ze・B) となる。非相対論的速度の範囲では、Tr は粒子のエネルギーによらずほぼ一定であると見なすことができる。このように、集会の周波数 1/Tr が粒子のエネルギーによらないという性質を利用している加速器がサイクロトロンである。この加速器では、磁場に直角にディーと呼ばれる2個の半円形電極を向かい合わせに起き、これに高周波電圧を印加する。粒子は2つの電極間ギャップを通過するときに印加された電圧に対応するエネルギーを得る。加速により粒子の軌道半径は大きくなるが、周期は変わらない。粒子が半回転して、もう一方の電極に達したときに電圧が逆転するようにすると、粒子はまた加速され、加速と共にその軌道半径は大きくなる。粒子の円軌道の最大半径を R とすれば、最終的に得られる粒子エネルギー E は、E = (B・ze・R)^2/(2・M) となる。最大軌道半径 0.5[m]、磁束密度を 2[T] とし (4He)2+ を加速すると、この粒子に与えられるエネルギーは 48 [MeV] となる。ただし、1[T] = 1[V・s・m^(-2)]、1[u] = 1.66 × 10^(-27) [kg] とする。

解説

素電荷は e = 1.60 × 10^(-19) [C] であり、(4He)2+ の質量は 4u と近似できるので、E = (2×2×1.6×10^(-19)×0.5)^2/(2×4×1.66×10^(-27)) = 7.71 × 10^(-12) [J] = (7.71×10^(-12))/(1.6×10^(-19)) [eV] = 4.81 × 10^7 [eV] = 48.1 [MeV]

質量数 a、運動エネルギー E の入射粒子と質量数 A の静止した標的核が衝突を起こし、一体となって複合核を形成した後、何らかの粒子を放出してある原子核に壊変する場合を考える。衝突の前後の粒子や原子核の質量差をエネルギーに換算したものは、反応エネルギーあるいは Q値と呼ばれる。Q値が正の場合を発熱反応といい、負の場合を吸熱反応という。吸熱反応の場合には、入射粒子のエネルギーが Q値の絶対値を超えないと反応は起こらない。核反応が起こるための入射粒子の最小エネルギー E(max)をしきいエネルギーという。ここで、複合核の概念を用いて最小エネルギー E(min)を求めてみる。複合核の運動エネルギー Ec は、運動量 保存則を用いて、Ec = a/(a+A)・E となる。E(min)は、反応の Q値の絶対値と複合核の運動エネルギーの和に等しくなる入射粒子のエネルギーに相当するから、E(min) = (a+A)/A・|Q| となる。ここで、27Al(n,α)24NA の核反応を考える。標的核は静止しているとすると、反応の Q 値は -3.13 MeV となり吸熱反応である。このとき、反応を起こすために必要な入射粒子である中性子の最小エネルギーは、 3.25 MeV である。ただし、27Al、4He、24Na、の結合エネルギーを、それぞれ 224.9520 MeV、28.2957 MeV、193.5235 MeV とし、陽子及び中性子の静止エネルギーをそれぞれ 938.2796 MeV 及び 939.5731 MeV とする。 放出粒子が荷電粒子の場合には、標的核が大きくなると、複合核からの粒子放出がその間のクーロン障壁によって妨げられることがある。

解説

質量をそれぞれ、27Al:M(Al)、中性子:M(n)、α粒子:M(α)、24Na:M(Na)、陽子:M(p)、結合エネルギーをそれぞれ、27Al:B(Al)、α粒子:B(α)、24Na:B(Na)、また光の速度を c とする。
Q = [M(Al) + M(n) – [M(α) + M(Na)]]・c^2
= [13M(p)c^2 + 14M(n)c^2 + – B(Al)] + [M(n)c^2] – [[2M(p)c^2 + 2M(n)c^2 – B(α)] + 11M(p)c^2 + 13M(n)c^2 – B(Na)] = -B(Al) + B(α) + B(Na) = -224.9520 + 28.2957 + 193.5235 = -3.1328 [MeV]

反応を起こすために必要な最小エネルギー「しきいエネルギー」は (1+27)/27 × 3.1328 = 3.249[MeV]

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

https://www.radiologist-study.org

非密封放射線を使用する実験施設での安全取り扱い

非密封の 3H , 32P , 125I , 237Np を使用する実験施設での安全取り扱いに関する記述

3H は最大エネルギー 18.6 keV のβ線を放出する。スミア法による汚染検査では、検査ろ紙を液体シンチレーション計数装置で測定することがしばしば行われる。高感度であり、エネルギースペクトルの測定による核種同定も可能なためである。液体の 3H 標識化合物は、その蒸気圧に依存して一部が気体となるため、吸入による内部被ばくにも注意する必要がある。また、化学反応によって 3H を含む放射性気体が発生する場合がある。3H で標識されたエタノール(CH3-CH2-OH)は、それ自体も揮発性であるが、 金属ナトリウムと反応すると水素ガスが発生する。もとのエタノール中で 3H が OH の部分に存在している場合、発生気体は放射性となる。

 

補足

3H の半減期は 12.33 年で β- 放出体(最大エネルギー 0.0186 MeV)。実用の β- 放出体のうちβ線のエネルギーは最も低く、ガスフローカウンタでは概略の測定になるが、液体シンチレーションカウンタを使うと正確に定量できる。したがって、間接的な汚染検出法であるスミア法で拭き取り、液体シンチレーションで測定する。また 3H は蒸発したり、空気中の水分と同位体交換したりして作業中に飛散し、吸入摂取する恐れがある。
○ アルコールと金属ナトリウムの反応
アルコールのヒドロキシル基(OH)は強い塩基のもとでは酸として働く。例えば、Na とアルコールと反応して水素を発生する。
2CH3-CH2O[3H] + Na → 2CH3-CH2-O-Na + [3H]2 ↑

 

32P は最大エネルギー 1.71 MeV のβ線を放出する。取り扱いの際に 10 mm 厚のアクリル板製のついたてを用いることで、β線を遮蔽し、制動放射線の発生を抑えることができる。しかし、手指などの局所被ばくが全身被ばくに対して著しく高くなることがあるのでリングバッチによる局所被ばく線量のモニタリングは重要とされる。スミア法による汚染検査におけるろ紙の放射能測定では、チェレンコフ光の検出も利用できる。しかし、この検出法は 3H では利用できない。 32P で標識されたリン酸はカルシウムなどの金属イオンと反応して沈殿を生成する。このようなリンの化学的性質は実験操作時の 32P の挙動の予測に有用である。

 

補足

32P:半減期は 14.26 日で β- 壊変して 32S(安定) となる。β線 の最大エネルギーは 1.711 MeV と高いので、遮蔽のときは、原子番号の低いガラス、プラスチック(10 mm 程度)、アルミニウムなどで遮蔽し、さらに外側を鉄、鉛などで覆って、制動放射線を遮蔽する必要がある。このとき、手指の被ばく線量を測定するためにプラスチックの指輪に TLD をはめ込んだリングバッチを使用することもできる。
32P の表面汚染の時、直接測定では GM 計数管を使用する。間接測定(スミア法)では GM 計数管または液体シンチレーションカウンタを使用する。ここで、32P のようなエネルギーの高い β- 核種はチェレンコフ光を放出するので、シンチレータなしでも測定できる。

 

125I はラジオイムノアッセイに利用される。この測定には井戸型シンチレーション検出器が利用される。125I を含む水溶液は酸性で飛散率が著しく増大するので、取り扱いには注意を要する。131I もラジオイムノアッセイに利用できるが、125I に比べて半減期が短いため、使用例も少ない。ヨウ素の放射性同位体で標識された有機化合物の中には揮発性のものが多く知られているので、吸入に対する防護も必要となる。放射性ヨウ化メチルの取り扱いの際には、グローブボックス 等を使用し、さらに、有機アミン添着活性炭を吸着剤として含むマスクの着用が有効である。

 

補足

125Iについて:半減期 59.4 日、電子軌道(EC)、ついでγ線放射する。γ線のエネルギーは、 0.0355 MeV で非常に低い。揮散して吸入の恐れがあるので注意する。特に揮発性の高い酸性にしないように注意する。診断、ラジオイムノアッセイなどに用いる。
131I について:半減期 8.021 日、β- 壊変し、そのエネルギーは、0.606、0.334、0.248 MeV でγ線放射(主に0.364 MeV)を伴う。131I 及びその化合物は、甲状腺の診断及び治療に用いられる。131I は 125I と比較して半減期が短いので、ラジオイムノアッセイにはあまり使用されない。
続いて、空気中に揮散したヨウ素化合物は、活性炭フィルターを通して捕集する。活性炭に有機アミン類を添加すると有機ヨウ素を捕集できる。すなわち、有機アミン添着炭でヨウ化メチルなど有機ヨウ素が吸着される。

 

237Np の半減期は 2.1 × 10^6(6.6 × 10^13 秒)なので、1.0 × 10^(-3) mol/l の水溶液の放射能濃度は 10 MBq/l 以下である。α線を放出するので試料水溶液に乳化シンチレータを加えて液体シンチレーション測定で放射能濃度を求めることもできる。また、このような長半減期核種については紫外・可視光の吸収を測定して濃度を求めることも可能である。Np や Am などのアクチノイドは加水分解しやすいので、これを防ぐために、水溶系ではできる限り pH を低く保つ などの実験操作上の工夫も求められる。また、これらのα放射体の高濃度溶液では、α粒子は溶液中で停止するので、自己放射線分解を十分に考慮して実験設計が求められる。

 

解説

237Np は天然ウランを原子炉で中性子照射して簡単に生じ、これを分離精製することで、トレーサーとしても使用できる。半減期は 2.1 × 10^6 年のα放射体であり、化学研究によく用いられる。また、Np の溶液は紫外・可視吸光光度法により定量することも可能である。
水溶液 1 l に 1.0 × 10^(-3) × 6.02 × 10^23 = 6.0 × 10^20
また、半減期 6.6 × 10^13 秒より、
λ = 0.693/T = 0.693/(6.6 × 10^13) ≒ 1.0 × 10^(-14)
よって -dN/dt = λN = 1.0 × 10^(-14) × 6.0 × 10^20 = 6.0 × 10^6 [Bq] = 6.0 [MBq] となり、水溶液 1 l 中なので、6.0 [MBq/l] となる。

 

また下記のサイトに私がまとめた資料を示しております。

第1種放射線取扱主任者まとめ集